クズの存在価値(脚本)
〇魔物の巣窟
矢柄 鉄「なんや・・・幽霊でも見た顔して・・・」
神野アヤト「お前は崖から川に落ちたはず・・・」
矢柄 鉄「だからなんや! 泳いだらええだけのことやないかい!」
神野ツカサ「ザザッ!!」
とーちーは素早く鉄との距離を置き
俺を庇うように前に立った
矢柄 鉄「心配せんでもええ・・・」
矢柄 鉄「あの高さから落ちたんや 色んなとこが逝ってもおてるわ・・・」
よく見ると鉄の体は傷だらけで
お腹から血がジワジワと流れ出ていた
神野ツカサ「大丈夫か!?」
矢柄 鉄「じゃかましいわ!!俺に触るな!!!!」
神野アヤト「・・・」
神野ツカサ「・・・」
矢柄 鉄「おい・・・血の付いた手で卵に触れるな!!」
矢柄 鉄「ここの巣にあるのは全部 あの化け物の卵やぞ・・・」
神野ツカサ「矢柄・・・お前はどうやってココに・・・」
矢柄 鉄「ふん・・・ 崖から落ちた俺は水に流され続け」
矢柄 鉄「この先の場所で運良く岸に上がれたんや」
矢柄 鉄「空が見える対岸まで泳ぎたかったが」
矢柄 鉄「川の流れが早いからやめて 回り道を探してたらここにきたんや」
矢柄 鉄「気持ち悪い場所やと 避けるように歩いとったが」
矢柄 鉄「偶々、ワシの血が卵に落ちたら──」
矢柄 鉄「卵が動き出して中から あの化け物がでてこようとしよった!」
矢柄 鉄「ワシは慌てて卵ごと引きちぎり 水に流したったわ!!」
矢柄 鉄「お前らも卵に血をかけんようにしろよ! 共倒れはごめんやからな!!」
神野アヤト「とーちー、・・・信じる? ロープで括っておいたら?」
神野ツカサ「確かに・・・」
矢柄 鉄「ウッ!!ブハッ!!」
矢柄 鉄「ハァハァ・・・ワシに近づくな・・・ 血がついても知らんぞ・・・」
鉄の足首をよく見ると反対を向いていた
神野ツカサ「こいつ・・・ こんな足でよく歩けたな・・・」
神野ツカサ「矢柄・・・お前はここにいろ 俺達が助けを呼んでくるからな」
神野アヤト「・・・」
矢柄 鉄「知るか・・・早よ行けや・・・」
矢柄 鉄「チッ!」
矢柄 鉄「・・・クソが」
〇滝つぼ
神野ツカサ「アヤト・・・鉄をなんで助けるんだ!!って 言わないんだな・・・」
神野アヤト「何いってんの・・・」
神野アヤト「とーちーは、お人好しだから きっと助けるって言うと思ってたからね」
神野アヤト「俺達はそういう性格だから!」
神野ツカサ「ああ・・・」
神野アヤト「ん・・・!?とーちー、やばいよ・・・」
神野ツカサ「コレは!?」
神野アヤト「川ができている・・・」
神野ツカサ「さっき矢柄が言ってた川か・・・ 深さは・・・結構あるな・・・」
神野ツカサ「対岸まで10m程だが川の流れが速い! 流されたら帰ってこれないかも・・・」
神野ツカサ(・・・どうする?)
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「とーちー、コレ・・・」
神野アヤト「この浮袋にロープを付けて・・・ 俺が向こうまで渡るよ!!」
神野ツカサ「何言ってるんだアヤト! それなら俺なら行く!」
神野アヤト「とーちーこそ、何言ってんだよ!」
神野アヤト「その足じゃ無理だ! しかも泳ぎ得意じゃないだろ!!」
神野アヤト「俺は水泳も習ってたし浮き輪がなくても」
神野アヤト「多少流されてもコレぐらいの流れなら 対岸にいけるよ!!」
神野アヤト「足も本調子じゃないんだし!」
神野ツカサ「しかし・・・」
神野アヤト「しかしもカカシもない!とーちー・・・」
神野アヤト「俺を信じて!!」
神野ツカサ「あ・・・、ああ・・・」
神野ツカサ「そうだ・・・アヤトならできる・・・」
神野ツカサ「わかった!浮き輪にロープを結びアヤトに向こうまで行ってもらう!!」
神野ツカサ「対岸にたどりついたら 俺がロープを引き寄せ、浮き輪を取り」
神野ツカサ「反対のロープの先に石を付けて アヤトの方に投げる!!」
神野ツカサ「そのロープを流されないように 岩に引っかけてくれ!」
神野アヤト「うん、わかった!!じゃあ、とーちー・・・」
神野アヤト「浮き輪膨らませて──」
神野ツカサ「まったく・・・ その間、準備体操でもしとくんだぞ・・・」
神野アヤト「ヘへっ!!」
〇滝つぼ
神野ツカサ「ふー・・・できた! ロープも付けたしバッチリだぞ!!」
神野アヤト「ありがとう!!」
神野ツカサ「危険を感じたら直ぐに ロープ引っ張るからな!!」
神野アヤト「うん、頼んだよ」
神野アヤト「プルプル・・・」
神野ツカサ「アヤトの奴・・・から元気だしやがって・・・震えてるじゃないか・・・」
神野ツカサ(何かアヤトの緊張をほぐせないかな・・・)
神野ツカサ「・・・アヤト」
神野アヤト「な、何とーちー!?」
神野ツカサ「『おぴうす〜♪』」
神野アヤト「なんでまた今・・・!?」
神野ツカサ「アヤトを頑張れって応援したんだよ!」
神野アヤト「ふー、とーちー・・・」
神野アヤト「『おぴうす〜♪』って マツリのギャグだけど・・・」
神野アヤト「アレ、何か失敗した時に 揶揄う言葉として使用するものだから・・」
神野ツカサ「ええ!!そうなの!?」
神野ツカサ「ご、ごめん・・・」
神野アヤト「まったく・・・とーちーらしいや・・・」
神野アヤト「でも、なんか力抜けた・・・ありがとね!」
神野アヤト「じゃあ、いくよ!!」
神野ツカサ「気をつけてな!!」
神野ツカサ「頑張れ!アヤト!」
神野ツカサ「ああっ!やはり少し流されている!!」
神野ツカサ「行け!アヤト!もう少しだぞ!!」
〇水の中
神野アヤト(浮き輪があるから安心だけど 急がなきゃ流される!!)
神野アヤト「向こうまで・・・もう少しだ・・・」
神野アヤト「いっけー!!」
神野アヤト「ガシッ!」
神野アヤト「たどりついた・・・」
神野アヤト「うんしょ・・・!!」
神野ツカサ『やったぞ!!アヤト!!よくやった──!』
神野アヤト「・・・ハァハァ・・・やった・・・」
神野アヤト「とーちー、やったよー! 浮き輪引き寄せていいよー!!」
〇滝つぼ
神野ツカサ「浮き輪引き寄せ完了!!」
神野ツカサ「よし!あとはこのロープを引き寄せて石をくくって・・・」
神野ツカサ「アヤトそっちに投げるぞー!!」
神野アヤト『オッケー!!』
神野アヤト『来たよ──!!』
神野ツカサ「じゃあ岩にでもくくってくれたら 浮き輪に乗ってそっちに向かうから!!」
神野ツカサ「ん・・・!?」
神野ツカサ「アヤト!ヘリコプターだ!!」
神野ツカサ「見てみろ!!」
神野ツカサ「人が降りてきてるぞ!助けがきたんだ!!」
〇空
神野アヤト「ほんとだ!!」
神野アヤト「やったよ!とーちー! 早くこっちに・・・き・・・て!?」
神野アヤト「とーちーぃぃぃ!!後ろぉ──!!!!!!」
〇モヤモヤ
矢柄 鉄「──死ね」
矢柄 鉄「クソ!!ミスった!!」
神野ツカサ「──うっ!腹に!!」
矢柄 鉄「おおー、おー、痛いのー!!」
矢柄 鉄「血がでとるのぉー!!」
神野ツカサ「くっ!何でこんなことを!?」
矢柄 鉄「何でやと・・・」
神野ツカサ「ハァハァ・・・」
矢柄 鉄「決まっとるやろが!!」
矢柄 鉄「お前らみたい平和な普通の仲良し家族が 1番ムカつくからやないかい!!」
神野アヤト『やめろ!!鉄──!!
とーちーに近寄るな!!』
矢柄 鉄「じゃかましいわ!!」
矢柄 鉄「お前の大好きな、とーちーさんを殺して」
矢柄 鉄「次は・・・アヤト!! お前を細かくミンチにしてやるからな!!」
矢柄 鉄「小さいからすぐにできるやろ!! ククク・・・」
神野ツカサ「・・・な!!なんだと!?」
神野ツカサ「そんなこと・・・」
神野ツカサ「そんなこと・・・させるか──!!」
神野ツカサ「鉄────!!!!!!」
矢柄 鉄「ぷっげらぁ──────!!!!!!」
ズササササ──!!
神野ツカサ「ハァハァ・・・ハァハァ・・・」
神野ツカサ「くっ・・・」
〇荒野
「とーちー!大丈夫!?」
神野ツカサ『ああ・・・』
神野アヤト「どうしたの?」
神野ツカサ『実は・・・
初めて人を・・・殴ったんだ・・・』
神野アヤト「見たよ!凄かった! 鉄が吹っ飛んでいったよ!」
神野ツカサ『正当防衛だとしても・・・
どんな人間であれ人を殴るのは・・・』
神野ツカサ
『とても嫌な気分になるな・・・』
神野アヤト「・・・」
神野ツカサ『矢柄は、
誰にでも直ぐに手をあげていたけど』
神野ツカサ『アイツの中では、
それが普通の日常だったんだろう・・・』
神野ツカサ『そう思うと・・・それを普通にした神様ってのは残酷だな・・・』
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「とーちー!鉄が!! モドキの巣の方に歩いて行くよ!」
神野ツカサ『放っておこう・・・
もう奴には何もできないだろうさ・・・』
神野アヤト「そうだね・・・」
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「とーちー、こっちロープくくったよ!」
神野ツカサ『悪いアヤト・・・少し怪我してしまった・・・先に行っててくれ・・』
神野アヤト(まさか傷が深いのか!?)
神野アヤト「とーちー!!俺さっきのヘリから降りた人 呼んでくるから待ってて!!」
神野ツカサ『頼むアヤト・・・』
〇洞窟の深部
矢柄 鉄「う・・・クソが・・・」
矢柄 鉄「あの川を渡れるようにしよったらと殺そうと思ってたのに・・・クソ!クソ!クソ!!」
矢柄 鉄「ワシは負けんぞ・・・」
矢柄 鉄「いつだってそうや、 やられたらやり返すんや・・・」
矢柄 鉄「ハァハァ・・・クソが・・・ 脚が動かん・・・」
〇魔物の巣窟
矢柄 鉄「クソが!クソが!クソが!クソが!!」
矢柄 鉄「何もかもあの2人が邪魔しやがる・・・」
矢柄 鉄「殺したる・・・俺の命をかけても・・・」
矢柄 鉄「ハァハァハァ・・死ぬのは怖くない・・・」
矢柄 鉄「怖いのは負けることや・・・」
矢柄 鉄「ハァハァ・・・落ち着けワシ・・・」
矢柄 鉄「ゴソゴソ・・・」
矢柄 鉄「おっと・・・大事な『金』が・・・」
矢柄 鉄「『金』は良い・・・心が落ち着く・・・」
矢柄 鉄「人はすぐ裏切りよる・・・」
矢柄 鉄「見た目は善人でも裏では 悪人ちゅうやつをアホほど見た・・・」
矢柄 鉄「この世で表裏のないもんは『金』や!!」
矢柄 鉄「『金』は表も裏も関係ない! 『金』として存在価値があるんや!!」
矢柄 鉄「ワシもそうなるんや・・・」
矢柄 鉄「・・・」
矢柄 鉄「クズの存在価値──」
矢柄 鉄「あのクソ親子に! クズの生き方を思い知らしたる!!」
矢柄 鉄「ワシの血を吸って生まれてこい!」
矢柄 鉄「化け物どもぉ──!!!!」
矢柄 鉄「全てを食い殺せぇ────!!!!」
矢柄 鉄「ぐぅあああ────────!!!!!!」
〇ゴシック
〇魔物の巣窟
〇滝つぼ
神野ツカサ「ハァハァ・・・」
神野ツカサ(ううっ・・・この傷・・・ 動かすと出血が酷くなりそうだ・・・)
神野ツカサ「あれは!!」
神野ツカサ「モドキ!!・・・こんな時に・・・」
神野ツカサ「な、な、な、なにぃ──────!!!!」
神野ツカサ「な・・・、なんであんなに沢山いるんだ!?」
神野ツカサ「まさか・・・鉄・・・あの男!?」
神野ツカサ(パッと見ても30匹はいるぞ!?)
神野ツカサ(先手必勝・・・やるしかない!!)
神野ツカサ「うおぉ──────!!!!」
未知の生物「ズズ・・・ドロ・・ズ・・ドロドロ・・・」
未知の生物「ズズズズ・・・ズズ・・ドロドロ・・・」
神野ツカサ「くっ!きりが無い・・・!!」
神野ツカサ「モドキはこの川の流れに逆らえず 追って来れないはずだ!」
神野ツカサ「早く浮き輪に乗って向こうにいかないと!!」
神野ツカサ「次から次へと・・・」
未知の生物「ズギュ・・・ズズズズ・・・ズギュ・・・」
神野ツカサ「嘘だろ?コイツ避けやがった!!」
未知の生物「ブクブクブクブク・・・ブシュ!!」
神野ツカサ「うわっ!!口から液体を飛ばしてくる!!」
神野ツカサ「コイツは他の奴とは違う!!」
神野ツカサ「くらえ!!」
未知の生物「ズズズ・・・ズギュ・・・ズズズ・・・」
神野ツカサ(後ろに下がっただと!?)
神野ツカサ(あの色違いのモドキは危険すぎる!!)
未知の生物「ズズ・・・ズズ・・ドロ・・・ドロ・・・」
〇荒野
神野アヤト「ハァハァ・・・ハァハァ・・・」
神野アヤト「ゴホッ・・・ゴホッゴホッ!!」
神野アヤト「あっ!ヘリコプター・・・!!」
神野アヤト「おーい!!おーい!!」
神野アヤト「あれは!?」
〇空
槙野「んんっ!あれは!?」
槙野「ガガ・・・こちら213飛行隊! 陥没地帯にて生存者発見! くり返す!陥没地帯にて生存者発見!」
槙野「ガガ・・・第一救難員は 至急、陥没地帯にいる 生存者確保に向かえ!!以上!」
ガガ・・・杉坂、田仲向かいます!!
〇荒野
神野アヤト「こっち!こっち!!早くきて!!」
杉坂「自衛隊です!救助に来ました!」
神野アヤト「両親が刺されて・・・血が出て・・・!!!!」
田仲「ご両親はどちらに?」
神野アヤト「川があるんだ! ケガしてるからボートがいるかも!!」
神野アヤト「こっちだよ!!」
杉坂「あっ!君!」
杉坂「田仲は簡易ボートの要請を! 私は後を追う!!」
田仲「はい!!」
とーちー、初めてなのに素晴らしい鉄の吹っ飛び具合😆きっと隠れた才能だったのでしょうね
スチルも含めて素晴らしい緊張感ですね。引き続き読みます
鉄、なんてアツいプライドを持っているんだ(褒めてない)
とーちーも近い事を言っていますが、本当にベクトルが違っただけで大物になれそうなメンタルとフィジカルなのが残念。
自衛隊到着で一気に解決…とはいかないか(残り話数的にも)
鉄の狂気…😱
希望の光が見えたが、果たして!?