後宮教室

雛夢

第5話 two top(脚本)

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〇おしゃれな教室
  梢誘拐事件を経た後、期末テストで満点を取った蒼と梢は、見事に後宮教室の最終審査へと駒を進めた。
辻村蒼「す、水泳ですか・・・?」
先生「不満ですか?」
辻村蒼「不満というか・・・無理というか・・・」
先生「理事会での決定ですので、変更することはありません」
先生「与えられた状況下で、最大限の力を発揮できるよう努力することです」
辻村蒼「そんな・・・」
先生「最終審査の日程は卒業式前日、市の公式競技用のプールを貸し切って行われます」
先生「例年通り、たくさんの来客がある予定です」
先生「後宮教室所属の生徒は見学可能ですので、梢さんや蒼さん以外で見学を希望される方は申し出てください」
先生「連絡は以上です。ホームルームを終了します」
  先生が教室を出ていくと、教室が一気に騒がしくなる。
辻村蒼「あああ・・・どうしよう・・・」

〇屋上の入口
内田梢「水着か・・・蒼、私に似合いそうなオシャレなの選んでよ」
辻村蒼「ど、どうしましょう・・・」
内田梢「いや、そんな悩まなくていいよ。シンプルなのが好きだから、適当に無地のやつでもいいし」
辻村蒼「違いますっ! 僕の水着をどうしようって話です!」
内田梢「え? ・・・ああ、確かにね」
辻村蒼「バレないように・・・って無理ですよね?」
内田梢「無理でしょ」
内田梢「ほら・・・隠せないでしょ? 多分」
辻村蒼「はい・・・」
内田梢「ん〜、私、辞退しようか?」
辻村蒼「え・・・?」
内田梢「私が欲しいのは進学のための成績であって、後宮教室のトップに君臨したいわけじゃない」
内田梢「蒼が不戦勝になれば、当然水泳なんてしなくて済むわけで」
辻村蒼「ありがたい提案です・・・が、ダメでしょうね」
内田梢「プライドが許さないってやつ?」
辻村蒼「いえ、後宮教室の最終戦は、大人達の見せ物でもあるんです。 それも、お金が動くタイプの見せ物です」
辻村蒼「辞退なんて絶対認められないでしょうね」
内田梢「はは、なるほど」
内田梢「こう言っちゃなんだけど、蒼のお父さん、いい趣味してるね」
辻村蒼「ふふ、本当に・・・僕を道具にしか思ってないんじゃないかって、たまに思います」
内田梢「・・・なるほどね」
内田梢「道具かぁ・・・」
内田梢「よし、決めた」
辻村蒼「どうするんですか?」
内田梢「バラそう」
辻村蒼「なるほど・・・って、ええっ!?」
内田梢「もうみんなに自分が御曹司だってことをバラして、後宮教室自体をめちゃくちゃにしてやればいい」
内田梢「決戦当日って、理事長・・・お父さんくるよね?」
辻村蒼「え? はい、多分来ると思いますけど・・・」
内田梢「なら、いいじゃん」
辻村蒼「ちょちょちょっと待ってください」
辻村蒼「それは絶対絶対ぜーったいダメです。 怒られるどころじゃ済みませんよ・・・!」
内田梢「誰に?」
辻村蒼「それはもう、みんなにですよ・・・女子校に侵入する男なんて、ただの不審者じゃないですか」
内田梢「その辺りはお父さんがもみ消してくれるでしょ、多分」
辻村蒼「そうでしょうか・・・」
内田梢「大丈夫だって、バラして一番困るのはお父さんじゃない?」
辻村蒼「それは、確かにそうかもですけど・・・」
内田梢「よしっ! 決まりっ! 当日バラして会場をめちゃくちゃに荒らして、後宮教室を破壊しよう」
辻村蒼「ちょ・・・本気ですか!?」

〇水泳競技場
  後宮教室、最終審査日。
  仕立ての良いスーツの男、制服の高校生、偉そうに座る老人、多種多様な人々が会場を賑わせていた。
内田梢「さて、覚悟はできてる?」
辻村蒼「もう・・・なるようになれって感じです」
内田梢「オーケー、なるようにやっちゃえ」

〇水泳競技場
  ざわつく会場。
  ハウリングから始まった競技場内の放送が、静かな空間を作り上げた。
  後宮教室の産みの親、蒼の父である理事長が挨拶を始めた。
理事長「えー、みなさま。 お集まりいただきありがとうございます。 今年もこの日がやってまいりました」
理事長「今年はなんと、私の息子である辻蒼太の将来の相手を決定すべく、開催させていただいております」
理事長「そして今日、その最終候補に残った優秀な二名がここで、熱い戦いを繰り広げるのです」
理事長「息子の将来も、これで安泰です。素晴らしい結婚相手を見つけ出すのもまた、親の役目でしょう」
理事長「皆様にはその光景を通し、後宮教室の有益さをご理解いただければ幸いです」

〇ライブハウスの控室
  梢と蒼は、理事長の演説を裏の控え室で聞いていた。
内田梢「私たちのことをなんだと思ってるんだ?」
辻村蒼「歪んでます」
辻村蒼「結婚のために成績を争うなんて、有益であるはずがない」
辻村蒼「僕にだって・・・」
内田梢「ん?」
辻村蒼「いえ・・・じゃあ、行きましょうか」
内田梢「・・・ふふ」
内田梢「了解、この茶番を終わらせよう」
辻村蒼「はい」

〇水泳競技場
理事長「それでは、最終に残った二人に登場してもらいます! どうぞ、入場してください」
  選手登場口から、梢と蒼が歩き出てくると、会場が一気に騒がしくなる。
  悲鳴のような歓声は、だんだんと時間が経つにつれて小さくなっていった。
理事長「な・・・!」
  すっかり静かになった会場で、観客の一人ポツリと呟いた。
観客「男・・・?」
観客「え・・・? 女子校でしたよね・・・?」
  明らかに男性用の水着を装着している蒼に注目が集まっている。
理事長「蒼太・・・か?」
  理事長の口からこぼれ出た呟きがマイクに乗り、プールサイドに反響した。
理事長「どうして、そこにいる・・・?」

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