綺麗な青い瞳の女の子(脚本)
ボクは生まれつき幽霊が見える・・・
学校で遊んでいる幽霊の子ども達を見てクスクス笑っていたら周りから気味悪がられた。
〇教室
友達A「真(マコト)って変じゃね?」
友達B「急に笑い出すもんね」
友達C「キモい・・・」
友達A「話しかけんな!」
昨日まで仲良く話していた友達も今日から他人へと変わった・・・
いつだってボクに居場所なんて存在しない。
施設にいても浮遊霊に目がいって小さい子を怖がらせるし、公園に行けばクラスメイトがこっちを指差して笑ってくるから。
少し前に偶然見つけた大きな木のある秘密の場所がボクのお気に入りだ。
〇木の上
その日もボクはそのお気に入りの場所に立ち寄った・・・
しかしボクより先にそこに立っていたのは、ボクと同い年ぐらいの女の子だった。
茶色の髪に青い目がとても綺麗な女の子。
子どもなのに綺麗なんて言葉が当てはまるのかはわからなかったけど、彼女を見て最初に見て想ったことは『綺麗』の文字だった。
まるで絵本に出てきた魔法使い?妖精?みたいな・・・
女の子から目を離せなくなったボクは視線を逸らすため辺りをキョロキョロした。
浮遊霊が見えたので目で追ってみた・・・
『変』だと思われても構わない・・・だってもうそんなの慣れたから・・・
女の子「あなたも見えるの?」
声のした方を見るとその女の子が優しい眼差しでボクを見ていた・・・
真「うん・・・見えるよ・・・」
ボクはその女の子の綺麗な目を見ることが恥ずかしくて、目を逸らしながら答えた・・・
〇木の上
そして、ボクはその女の子に促されて気まずい気持ちのまま肩を並べて木の下に座り語り合った。
語り合うと言っても彼女はほとんど自分のことを語らない・・・
ボクの言った言葉を最後まで聞いて優しく返してくれるだけだった・・・
真「みんなボクのこと『変』って言うんだ。みんなには見えてないから・・・」
女の子「そうだよね?だからわたしもお父さんとお母さんに嫌われちゃって離れて行っちゃったんだ・・・」
真「君もお父さんお母さんいないの?」
真「・・・ボクと同じだね?」
女の子「そうなの?・・・・・・なんか嫌な偶然繋がっちゃったね?わたし達・・・」
初めてだった・・・
ボクと同じ価値観の人に会ったこともボクの話を真剣に聞いてくれる人に出会ったのも
真「友達になって・・・欲しいな・・・?」
気づかぬ内にその言葉が口から漏れ出ていた
女の子「うん、いいよ!」
真「・・・ボク、真(マコト)・・・君は?」
女の子「わたしの名前はウララ・・・」
多分その瞬間からボクはウララという女の子に『ある感情』を抱いていた・・・
〇木の上
その後ボクとウララは毎日その場所で会うことを約束した・・・
ボクだけのお気に入りの場所はいつの間にか『約束の場所』となった・・・
ウララは本当に不思議な子で・・・どんなに早い時間そこに行ってもいつも先に木の下で待っていた・・・
その日のウララは赤い表紙の分厚い本を読んでいた・・・
真「ウララ」
ウララ「あ、マコト!」
ボクに気がつくとウララは本を閉じた・・・
真「それ何?」
ウララ「魔導書だよ?」
真「ウララって・・・魔法使いなの?」
ウララ「うん・・・練習してるの・・・」
出会ってそんなに経ってないけど・・・ウララは嘘はつかないって知ってたからボクはなんの疑いもなく信じた・・・
ウララ「マコトも魔法使ってみる?」
真「え・・・?できるの?」
ウララ「うん、魔法ってちょっと意識したらすぐ使えるよ?マコトが魔法のことを信じてるなら」
正直興味はあった・・・魔法を使ってみたいってきっと誰もが思ったことがある・・・
〇教室
だけど、ボクの頭に浮かんできたのはボクをバカにして嗤うクラスメイトの顔だ・・・
〇木の上
真「・・・・・・いいよ・・・使えなくて・・・」
ウララ「・・・・・・なんで・・・?」
真「だって・・・ただでさえ幽霊が見える奴だって嫌われてるのに魔法まで使えたら・・・今度は何言われるか・・・・・・」
嫌われるのは慣れっこだからむしろ笑ってしまった・・・
ウララを不快な気持ちにはさせたくなくて笑ったのに・・・ウララはなぜか悲しそうな顔をしていた・・・
ウララ「マコト・・・本当は辛かったんだね?」
真「え・・・そんなことないよ・・・・・・」
ウララ「ううん・・・わかるよ・・・わたし・・・人が想ってることわかるんだ・・・」
ウララ「マコトが本当は寂しい想いしてたってことも・・・」
ウララ「それでもマコトはわたしのこと『変』って考えてないでしょ・・・?」
ウララ「だからわたしもマコトと友達になりたいって思ったんだ♪」
ウララは、ボクをそっと抱きしめてくれた。
ウララ「大丈夫だよ?わたしがマコトに魔法かけてあげるから♪」
真「魔法・・・?」
ウララ「うん!マコトが幸せになれる魔法だよ♪」
ウララは一度ボクから離れて両手でボクの手を包み込んでにっこりと微笑んだ・・・
『ボクは、ウララと一緒にいられるだけでもう幸せだよ』
そんな言葉を伝えるのがなんだかとても恥ずかしく感じてボクがその言葉を口に出すことは、なかった・・・
〇木の上
ウララはいつもキラキラと光に反射するクローバーのペンダントを身につけている。
真「それ・・・綺麗だね・・・?」
ウララ「これ?わたしの宝物なんだ・・・お兄様がくれたの」
真「お兄さんいるんだね・・・?ボク一人っ子だから羨ましいなぁ・・・」
ウララ「うん・・・すっごく優しかったんだ・・・自慢のお兄様だったの」
どうして過去形なのかな・・・?聞こうとも思ったけど・・・
ウララの悲しそうな横顔に胸が締め付けられるようになって・・・
それから、ウララにお兄さんのことをボクから尋ねることは一度もなくなった・・・
それからいろんなことを知った。ウララは魔法使いの見習いで占いもできるらしい・・・当たりと外れの落差がすごかったけどね?
ボクはウララさえがいてくれれば学校で意地悪されたって耐えられると思っていた・・・
だけどそれはほんの数ヶ月のことで・・・
ある日、ウララがボクの夢に出てきた・・・
ウララ・・・?
ウララ「・・・・・・マコト・・・」
何?
ウララ「ごめんね・・・・もう、会えないの・・・」
え・・・?
ウララ「・・・・・・ばいばい・・・」
ウララはそうボクにそう告げると暗闇の中に消えていってしまった・・・
ウララっ!
真「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
ただの夢だと思いたかった・・・
だけどなんだかモヤモヤしていて・・・
ボクは走って約束の場所に向かった・・・
〇木の上
真「ウララっ!ウララっ!」
いくら名前をを呼んでも・・・待っていても・・・彼女は・・・現れなかった・・・
真「やだ・・・やだ・・・!」
初めてボクを認めてくれた人・・・
初めてボクに笑ってくれた人・・・
初めてボクが・・・
好きになった人・・・
真「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」
生まれて初めて声を上げて泣いた・・・
親に捨てられた時も、意地悪された時も・・・辛くなかったのに・・・
凄く辛い・・・
あの子も・・・ボクのこと・・・
チリンッ
風が吹くと鈴のような音がした・・・
涙でぐしゃぐしゃになった視界を凝らすと木の枝に何かが括り付けてあるのが目に入った
それはクローバーのペンダントだった。
わたしの宝物なんだ・・・お兄様がくれたの
そうだ、これウララのペンダントだ・・・
ボクは木の枝からペンダントをそっと外した
・・・あんなに大切にしてた宝物をボクにくれたんだね
ごめんね?
ペンダントを見つめていると彼女が悲しそうな顔でボクを見たような気がした
ウララはボクのことを嫌ったりしないって、それだけはわかってた・・・
またいつかまた会えるその日まで・・・
ボクは待ってるよ・・・
〇木の上
あれから十年以上の月日が経った・・・
何かあっても、何もなくても気がついたらここへと足を運んでいた・・・
今日も彼女の姿はない・・・
あの子は、もしかしたら本当に妖精だったのかもしれない。
だったらいつだってボクを側で見守ってくれてるよね?
ボクはそう・・・
一人じゃないんだってウララが教えてくれたんだよ・・・
そんなことを考えていると視線の先に浮遊霊の姿が見えた。
辺りをキョロキョロ見回してこの世を彷徨っている・・・
未練はなんなんだろう?
ボクは、もう見るだけじゃなくて成仏の手伝いを出来るようになった。
あのボクが今じゃ人・・・じゃなくて幽霊助けをしてるんだ。
でもどれだけ変わっても、何かが足りない
だからボクはまだあの子が首にかけていたペンダントを握りながら、今日もボクは彼女を想い・・・待ち続ける・・・
???「あなたも見えるの?」
背後から聞こえた優しい声・・・
目頭が熱くなったような気がした。
振り返ると茶髪の女性と目が合う・・・
彼女は優しい眼差しでボクに微笑んでいた
真「・・・うん・・・・・・見えるよ・・・」
the end
よく「目は心の鏡である」と言いますが、タイトルの「綺麗な青い瞳」は彼女の神秘性や心の美しさを象徴しているんでしょうね。ウララが真に託したペンダントは、再会の日が必ず訪れることを約束するお守りだったんだなあ。
再び再開できたところは目頭が熱くなりました。
凄く心に染み渡る物語で…。
何故会えなくなったのだろう、そこが気になってしまいます。
悲しく切なくて、それでも人の気持ちの温もりもかんじられる素敵なストーリーですね。ウララの容姿がどうであっても、きっと彼はこれほど心が通じ合える相手に恋をしたと思います。思い続けることの大切さも伝わりました。