俺だけの(脚本)
〇教室
内田 奈緒「ナーオちゃん♪」
尚孝「嫌だ」
内田 奈緒「え、まだ何も言ってないけど・・・」
尚孝「どうせ宿題見せろとかだろ?」
内田 奈緒「な、なぜそれを!?」
尚孝「内緒」
こいつが俺を”尚ちゃん”と呼ぶのは大抵頼み事がある時だ
加えて登校直後、おおかた宿題をやり忘れたのだろう
内田 奈緒「可愛い幼馴染みが頼んでるんだよ?」
尚孝「自分でやれ」
内田 奈緒「尚孝のケチンボ!!」
内田 奈緒「いいもん!! たま吉に見せてもらうから!!」
珠希「奈緒・・・ごめん!!」
珠希は奈緒の熱い視線を振り払うように顔を背ける
内田 奈緒「な!? たま吉・・・なんで!?」
内田 奈緒「私たち親友でしょ?」
珠希「だってアンタを甘やかすとそこの幼馴染みが怖いんだもの!!」
尚孝「当たり前だ。コイツを甘やかしてはいけない」
内田 奈緒「くっ、他には──!?」
教室中に視線を向けるが、結果は珠希と同じだった
内田 奈緒「ぐぬぬぬ・・・」
尚孝「分かったら諦めろ。休み時間フル活用すれば終わらない量じゃない」
内田 奈緒「ハイ・・・」
尚孝「分かんねーとこはすぐ言えよ? 教えっから」
内田 奈緒「ホント!? ヤッター♪」
(お前が1番甘いのでは・・・?)
〇教室
尚孝「奈緒ー」
珠希「奈緒なら疲れ果てて寝てるよ?」
尚孝「ほう・・・」
授業と宿題で頭は使いっぱなし。
そこに昼休みとくれば満腹感も相まって良い眠気が襲ってくるだろう
だが俺は知っている
これが寝たふりだという事を
尚孝「寝てるんじゃしゃーない」
尚孝「せっかく新しいスイーツの店ができてたんだけどな・・・」
尚孝「宿題頑張ったし、クーポン貰ったから奢ってやろうと思ったんだけどな・・・」
内田 奈緒「はぁあああああい!! ハイハイハイハーイ!! 起きたよーーー」
尚孝「そうだな。起きて”た”な」
内田 奈緒「あ・・・」
尚孝「お前先生に呼ばれてたろーが」
内田 奈緒「嫌だ! 面倒くさいし行きたくないいい!!」
尚孝「スイーツ」
瞬間、奈緒はもうドアの前にいた
内田 奈緒「尚孝、早く早く!! スイーツが待ってるよ♪」
尚孝「待ってんのは先生な」
内田 奈緒「てかなんで寝たふりってバレたの?」
コイツがガチ寝の時はほっぺが赤くなる
でも寝たふりの時は・・・
尚孝「内緒だ」
ペチン
内田 奈緒「あた!?」
そう言って俺は、真っ赤になったコイツの額にデコピンをかますのであった
珠希「てか呼ばれてんの奈緒だけなんじゃ・・・」
〇階段の踊り場
内田 奈緒「資料運びとか、なんでアタシばっかこき使われるんだろう?」
尚孝「授業中に間食だの居眠りだのするからだろうが」
内田 奈緒「陸上部、期待の新人は育ち盛りな──」
内田 奈緒「わわっ!?!?!?」
尚孝「っ!!!!」
内田 奈緒「ビックリしたぁあああ!」
内田 奈緒「ごめんごめん、足滑っちったw」
尚孝「怪我ないか?」
内田 奈緒「うん、平気平気♪」
尚孝「そうか」
内田 奈緒「あの・・・手、もう大丈夫だよ?」
尚孝「お、おう。すまん・・・」
咄嗟に奈緒の手を掴んでいた
思いのほかその手は小さく、温かかった
内田 奈緒「あちゃ〜やっちったね」
階段下には俺達が運んでいた資料が散らばっている
尚孝「2人ならすぐだろ」
内田 奈緒「だね!」
珠希「なら3人ならもっと早いわね」
内田 奈緒「たま吉〜」
珠希「これ次の授業で使うんでしょ? 早く持っていこ♪」
内田 奈緒「うん!! あんがと!」
尚孝「助かる」
〇黒
こうして無事、授業に間に合ったのだった
珠希(まぁ良いんだけど・・・ほぼほぼ尚孝が持っているのはなんで?)
〇グラウンドのトラック
教師「内田〜、またタイム上がったぞ!!」
内田 奈緒「ヤターー!! さっすが期待の新人♪」
教師「ははははは! お前なら県大会優勝も夢じゃないな!!」
内田 奈緒「はい!!」
尚孝「先生。コイツすぐ調子乗るから甘やかさないでください」
教師「ははははは! そうだったなw」
内田 奈緒「尚孝うるさい! 調子じゃなくって波に乗ってるんですぅ〜」
尚孝「はいはい」
教師「よし、じゃあラスト一本!」
顧問の指示を受け、女子達が先に並ぶ
ホイッスルの音に反応して奈緒達が一斉に駆け出した。次々とハードルを飛び越えて行く
俺は奈緒のいつになく真剣な表情に見入ってしまった
その時──
尚孝「奈緒!!!!」
ハードルに引っかかり奈緒が転倒した
身体が自然と奈緒に向かって走る
尚孝「大丈夫か!?」
奈緒はゆっくりと立ち上がった
内田 奈緒「イテテテ。だい、じょぶ、そう・・・」
奈緒は爪先をトントンと軽く突いて見せる
尚孝「本当に大丈夫か?」
内田 奈緒「うん!! 全然平気!!」
尚孝「・・・」
尚孝「先生。 コイツ病院に連れてくんで片付け抜けても良いですか?」
内田 奈緒「ちょ!? だから全然平気だって──」
内田 奈緒「ば!?!?!?!?」
俺は奈緒を抱きかかえた
どうせ言っても聞かないのだから強制連行だ
教師「大会も控えてるしなあ。念には念をだ。行ってこい!」
尚孝「ありがとうございます」
そしてギャーギャーわめく奈緒を病院へ連れて行った──
〇土手
尚孝「良かったな、大した事なくて」
内田 奈緒「うん!! 大会も間に合いそうだし♪ すぐ治してまた頑張るぞーー!!」
尚孝「暴れんなって」
内田 奈緒「えへへ〜、楽ちん楽ちん♪」
背中には温もりと、重さと・・・
程良い弾力を感じる
内田 奈緒「尚孝、耳赤くない?」
尚孝「・・・夕日だろ?」
内田 奈緒「ふーん、そっか」
内田 奈緒「てかさぁ、なんでアタシが我慢してるって分かったの?」
尚孝「・・・」
コイツが”全然”という言葉を使うのは何かを我慢している時だ
でもコイツには当然──
尚孝「内緒だ」
内田 奈緒「え〜〜!? いっつも内緒じゃん!! 教えなさぃいい!!」
尚孝「ぐ、ぐるしいいい・・・」
内田 奈緒「い い な さ い!!!!」
尚孝「ギヴギヴギヴギヴ・・・!!」
苦しいだけじゃない。奈緒が力を入れる程に背中の弾力が強調されていく──
もう言うしかない
俺はずっと前からコイツの事が──
尚孝「す・・・」
内田 奈緒「す?」
尚孝「スイーツ」
内田 奈緒「食べる!!!!」
尚孝「ハイハイ」
きっとこれからも俺は”俺だけが知っているコイツ”の事を秘密にしていくだろう
だってその方が楽しいじゃないか。
好きな人のことは、ずっと見てるからわかるんですよね。
そんな恋心は伝わる時が来るんでしょうか。
甘酸っぱくて、キュンキュンする二人でした。
なんなんだこの幼馴染、、、素敵すぎる、、、。終始この、2人にはキュンキュンさせられ青春だなーってすごく晴れやかな気持ちになりました。
すごくキュンとしました。王道の恋愛小説ですね。読者は彼かの気持ちがわかっているのに、登場人物たちはお互いすれ違いという、もどかしい展開がほんとに好きです。途中はらはらする場面もありましたが、事なきを得てよかったです。この先、もっと素敵な展開が待っているのでしょうか。続編が出たら、ぜひ読みたいと思います。本当にすてきな物語でした。