読切(脚本)
〇教室
3年1組の教室
文化祭の準備のため
教室は賑わっていた
井上真里菜「おはよー」
「おはよー」
大橋壱弥「~♪」
大橋壱弥「よぉし、イイ感じに 描けたぞ」
井上真里菜「おぉ、うまいじゃん」
大橋壱弥「どうよ、このソースの照りっぷり こだわりだぜ」
井上真里菜「そこはどうでもいい こっちの舟皿の質感上手だね」
大橋壱弥「そっちかよ」
井上真里菜「うそうそ 全部上手」
大橋壱弥「だろ? 井上も焼きそばの看板頑張れよ」
井上真里菜「わかってるって」
井上真里菜「よっし、やるぞ」
川上紗耶香「真里菜~顔がにやけてるよ?」
井上真里菜「うるさい」
〇教室
井上真里菜「・・・・・・」
井上真里菜「まだまだ・・・」
「今日は帰ろうぜー」
「また明日、 おつかれー」
井上真里菜(ソースの色が薄いなぁ・・・)
井上真里菜「うーん」
〇教室
井上真里菜「・・・・・・」
井上真里菜「あっ・・・」
井上真里菜「あれ?紗耶香?皆?」
井上真里菜「ん、メモ?」
集中してるから先に帰るね
遅くなりすぎないように!
紗耶香
井上真里菜「マジか・・・」
井上真里菜「え、もう7時? やば」
井上真里菜「えっ」
井上真里菜「こんな時間にチャイム?」
井上真里菜「・・・帰らなきゃ」
井上真里菜「用意しよ」
〇教室
井上真里菜「また鳴った」
〇女性の部屋
川上紗耶香「・・・それでね、最初のチャイムから二回目のチャイムが聞こえても」
川上紗耶香「まだ教室に残っていたら 何があっても教室のドアを開けちゃいけないんだってさ」
井上真里菜「何があってもって・・・何があるの?」
川上紗耶香「さあ? でも、とにかく開けちゃダメなの」
〇教室
井上真里菜「・・・まさか、ね」
井上真里菜「!!」
大橋壱弥「真里菜、そこにいるのか?」
井上真里菜「大橋君?」
ドアの向こう、
影がユラユラ揺れている
大橋壱弥?「なんだよまだいたのか なぁ、一緒に帰ろうぜ」
井上真里菜「うん!」
井上真里菜「・・・・・・」
井上真里菜「・・・・・・」
大橋壱弥?「どうした? 真里菜、早く開けて出て来いよ」
井上真里菜「ねえ、あんたいつから 私を名前で呼ぶようになったの」
大橋壱弥?「・・・・・・」
大橋壱弥?「いいだろ 真里菜って呼びたいんだ」
井上真里菜「・・・・・・違う 大橋君じゃない」
大橋壱弥?「・・・・・・」
大橋壱弥?「・・・チッ」
影が消えた
井上真里菜「・・・今の、なに・・・?」
〇幻想
川上紗耶香「何があっても 教室のドアを開けちゃいけないんだってさ」
〇教室
井上真里菜「まさか・・・今のってそういうこと?」
井上真里菜「えっ」
ドアをカリカリと引っかく音がする
井上真里菜(猫ちゃん・・・)
井上真里菜(はっ!)
井上真里菜「ダメダメ、なんか変 なんでこんなとこに猫がいるの・・・」
井上真里菜「無視、無視!」
着信画面には
真里菜の弟・井上陽太の名前
井上真里菜(!!)
井上真里菜「陽太?どうしたの?」
井上陽太?「お姉ちゃん・・・開けて」
井上真里菜「えっ」
井上陽太?「開けて・・・助けて、お姉ちゃん」
ドアがガタガタと揺れている
井上真里菜「陽太なの? 陽太がそこにいるの?」
井上陽太?「お姉ちゃん・・・助けて、助けて」
泣き声が聞こえる・・・
井上真里菜「陽太・・・!」
真里菜はドアに手をかけた
井上真里菜「・・・・・・」
井上陽太?「早く開けて、お姉ちゃん」
井上真里菜「待って、どうして陽太が学校にいるの?」
井上陽太?「お姉ちゃんが帰ってこないからお迎えに来たの」
井上陽太?「ここ暗いよ、怖いよお姉ちゃん 早く開けてよ 一緒に帰ろうよ」
陽太が泣いている
井上真里菜「陽太」
井上陽太?「お姉ちゃん お姉ちゃん」
井上真里菜「・・・・・・」
川上紗耶香「何があっても ドアを開けちゃダメなんだって」
真里菜はドアから離れた
井上陽太?「お姉ちゃん!開けて!助けて!」
井上真里菜「陽太、どうしたの?」
井上陽太?「来る!何か来るよ! 開けて!怖いよお姉ちゃん!」
ドアが激しくガタガタと揺れる
井上陽太?「お姉ちゃん!開けて!開けて!助けて!」
井上真里菜「・・・・・・」
〇綺麗な一戸建て
井上陽太「お姉ちゃん!」
〇教室
井上真里菜「!!」
井上真里菜「陽太、待ってて!」
〇まっすぐの廊下
女の子「・・・・・・」
井上真里菜「!!」
井上真里菜「陽太?」
女の子「・・・・・・」
井上真里菜「ねえ君、陽太知らない?」
女の子「・・・・・・」
井上真里菜「・・・・・・?」
女の子「開けちゃったね?」
真里菜は急いでドアを閉めようとした
〇教室
井上真里菜「! 手が・・・」
女の子「フフフ」
井上真里菜(すごい力・・・!)
〇黒
女の子「ふふふ」
女の子「ふふふ・・・」
〇教室
井上真里菜「ひっ」
井上真里菜「来ないで!」
女の子が真里菜に手を伸ばす
井上真里菜「・・・・・・!!」
〇白
〇黒
〇大きな木のある校舎
「おはよー」
「よぉ、おはよー」
〇まっすぐの廊下
大橋壱弥「~♪」
〇教室
大橋壱弥「おはよっす」
川上紗耶香「おはよう ねえ、この焼きそば描いてたのって大橋君だっけ?」
大橋壱弥「え?」
大橋壱弥「いや・・・知らねぇぞ 誰だ?」
川上紗耶香「焼きそばの看板て誰が担当してたかしら」
〇黒
弟がドアを叩くトントンという音が効果的でゾッとしました。一番怖いのは、真里菜がいなくなった後に沙耶香や壱弥の記憶からもその存在が消えていたことです。肉体だけでなく人々の記憶からも消えたら完全な「無」ですもんね。それ以上に恐ろしい出来事は寝る前に甘いお菓子を食べちゃうことぐらいですよね。
学校には怖い話の1つや2つはあるものだけど、読み進めるのを躊躇するような怖さがあった。ダメと言われていても開けてしまった彼女はどこに行ってしまったのか?
二回目のチャイムが鳴り終わってからの記述、こちらもタップするにつれて緊張感抜群でした。身近な人から開けて!といわれたら、開けないという行為に出る方が難しいですよね。消されてしまった彼女、どこにいったのでしょう!?