第一話 アンチと信者(脚本)
〇電車の中
女生徒「あれ、北岡さん?」
進学校の女生徒「もしかして南野さん? 小学校以来だね」
女生徒「電車の中でも参考書? 優等生は違うねえ」
進学校の女生徒「違うよ、ラノベ読んでるだけだってば」
進学校の女生徒「『近所の名門男子校が共学化したので受験してみたら女子の合格者は私だけだった』だよ」
女生徒「今、人気だよねー」
誰にもホンネとタテマエは存在する
〇電車の中
女生徒(うわー、モテないからって 逆ハーレムのラノベ読んでるのか)
女生徒(美少女に生まれなかった人って カワイソー)
〇電車の中
進学校の女生徒「南野さんが持ってる本は?」
女生徒「コレもラノベだけど知ってるかなぁ?」
女生徒「『勇者パーティを追放されたのでスキル「何でも劣化コピー」を活かして隠遁生活を送りたいと思います』だよ」
進学校の女生徒「今度アニメ化されるんでしょ 流行ってるよねー」
しかし社会ではホンネは隠されている
〇電車の中
進学校の女生徒(このケバい制服って)
進学校の女生徒(頭と股のユルさで有名な 美津智(びっち)女学園のだよね?)
進学校の女生徒(現実じゃド底辺だから)
進学校の女生徒(せめて小説を読むときくらいは 有能な人の気分を味わいたいのね)
進学校の女生徒(憐れだわー)
〇黒
第一話 アンチと信者
〇女性の部屋
隠されたホンネが開放される場所がある
それはインターネットの世界
黒木ナズナ「ビールOK」
黒木ナズナ「スイッチONっと」
〇コンサート会場
『ギャラクシー』のみなさん
ありがとうございました!
お聴きいただいたのは新曲
『CRAZY LOVERS』でした
〇女性の部屋
黒木ナズナ「くっは〜!」
黒木ナズナ「っぱ『ギャラクシー』 サイコーにかっけーわぁ」
黒木ナズナ「みんなも観てたかな〜?」
〇SNSの画面
『ミュージックマニア』見た?
『ギャラクシー』の新曲、超よかった😆
通りすがりの774さん「1年振りだから待ちくたびれたよー でもいい曲だったね」
通りすがりの774さん「GAKUは気分がのらねーと 新曲書いてくんねーからね😓」
それでも待つしかないのが
信者のツラいとこだよ
通りすがりの774さん「『ギャラクシー』がトレンド上位だから 何かと思ったら新曲の話?ショボっ!!」
通りすがりの774さん「あの下品なバンド目障りだから 解散でもしてくれるのかと思ったのに」
ここはアンチの来るところじゃないんだけど
通りすがりの774さん「はあ?」
通りすがりの774さん「ここは『ミューマニ』のスレでしょ アンタに文句言われる筋合いないけど」
〇テレビスタジオ
『ミュージックマニア』
通称『ミューマニ』は老舗の音楽番組だ
〇SNSの画面
通りすがりの774さん「あいつらが直前に喋ってると 『ウイナイ』が穢れるのよね」
通りすがりの774さん「ウ、『ウイナイ』が穢れるだぁ?」
通りすがりの774さん「アイドルはウンコしないって信じてるタイプ?」
通りすがりの774さん「さすが『ギャラクシー』信者は イメージ通りお上品ね」
通りすがりの774さん「私なら『ギャラクシー』のファンだなんて 恥ずかしくて公言できないわ」
〇コンサートの控室
『ウイナイ』こと『ウィザーズ&ナイツ』は
品行方正で爽やかなアイドルグループ
〇音楽スタジオ
対する我らが『ギャラクシー』は
ヤンキー上がりのロックバンド
正直に言えばファン層もヤバめで
ファンだと名乗るのはちょっと勇気がいる
〇SNSの画面
通りすがりの774さん「掲示板で芸能人の悪口書いてる奴から」
通りすがりの774さん「「上品」とかいう 単語が出てくるとは思わなかったわ」
通りすがりの774さん「モテなくてアイドルに逃げてるBBAは 面の皮の厚さが違うわねー」
通りすがりの774さん「『ギャラクシー』なんて CDの売上も『ウイナイ』に負けてるし」
通りすがりの774さん「アンタが馬鹿にしてるアイドル以下の バンドじゃないの?」
通りすがりの774さん「そりゃあ『ギャラクシー』はさあ」
通りすがりの774さん「中身が同じCDをジャケットだけ変えて 何枚も売りつけたりしないから」
通りすがりの774さん「売上”だけ”なら 『ウイナイ』のが上なんでしょうけど」
通りすがりの774さん「『ウイナイ』ファンは大人だからね」
通りすがりの774さん「背伸びしてワルぶってる 『ギャラクシー』のファンとは」
通りすがりの774さん「財力が違うのよ」
通りすがりの774さん「やだ、私としたことが 中学生相手にムキになっちゃったわ」
通りすがりの774さん「アンタと違って結婚してるし 子供もいるんだけど?」
通りすがりの774さん「結婚してても頭の中身は中学生レベルでしょ」
通りすがりの774さん「平均的『ギャラクシー』ファンって感じね」
通りすがりの774さん「フードコートの食事ばかりで 脳まで栄養が届いてないんじゃない?」
〇テレビスタジオ
『ギャラクシー』と『ウイナイ』は
『ミューマニ』で共演することが多く
『ギャラクシー』のトークが長い日は
『ウイナイ』のトークが短くなるので
『ウイナイ』のファンは放送後に
突っかかってくるのだ
〇女性の部屋
黒木ナズナ「あーもう!! 何なのアイツ?」
黒木ナズナ「ファン同士で楽しくやってたのに!」
黒木ナズナ「ム・カ・つ・く〜!」
黒木ナズナ「明日は大事なプレゼンがあるのに 全然寝付けないじゃん!」
黒木ナズナ「ああいう書き込みするアンチって 現実では惨めな生活送ってるんだろうな」
〇オフィスのフロア
黒木ナズナ「オハヨーゴザイマース」
白井カエデ「どうした? いつもの元気がないじゃない」
黒木ナズナ「いやー・・・ 昨晩ちょっと眠れなくて」
白井カエデ「今日はTN出版でプレゼンするんだから」
白井カエデ「ビシっとしなよ!」
黒木ナズナ「ふあーい」
この女性は新人の頃からお世話になってる
チームリーダーの白井カエデさん
美人だし何でもできる完璧超人で
私も密かにこんな風になりたいと思ってる
白井カエデ「ほら、準備できたら出かけるよ!」
〇大きい交差点
〇改札口
〇電車の座席
白井カエデ「緊張してんの?」
黒木ナズナ「そりゃ・・・まあ」
白井カエデ「何度も練習してきたでしょ?」
白井カエデ「緊張感ないのも困るけど 緊張しすぎても上手くいかないよ」
そう言うとカエデさんは
スマホで何か見始めた
黒木ナズナ(すごいなー プレゼン前なのに平常心だ)
黒木ナズナ(って・・・ あれ?)
黒木ナズナ「あのー それって昨日の『ミューマニ』ですよね?」
白井カエデ「えっ あ、うん」
黒木ナズナ「どうしたんですか? そんなに慌てて」
白井カエデ「いやー、私みたいな歳で 若い子向けの音楽番組観てるのって」
白井カエデ「ちょっと恥ずかしいじゃない?」
黒木ナズナ「えー、そんなことないですよ」
黒木ナズナ「好きなものに年齢とか関係ないですもん」
白井カエデ「そ、そうよね」
黒木ナズナ「そうです!」
白井カエデ「黒木も昨日の『ミューマニ』見てたんだ」
白井カエデ「誰か気になる人でも出てたの?」
黒木ナズナ「私は・・・・・・」
〇SNSの画面
私なら『ギャラクシー』のファンだなんて
恥ずかしくて公言できないわ
〇電車の座席
黒木ナズナ「ウ、『ウイナイ』とか・・・・・・」
白井カエデ「え、・・・そうなんだ」
黒木ナズナ「カエデさんは?」
白井カエデ「アタシはね」
白井カエデ「・・・・・・『ギャラクシー』」
黒木ナズナ「へー、意外です!」
白井カエデ「そ、そう?」
黒木ナズナ「『ギャラクシー』ファンは民度が低いとか ガラが悪いって言われてるじゃないですか」
白井カエデ「確かにそういう人もいるわよね」
白井カエデ「でもファン全員が そういう人達ではないでしょう?」
黒木ナズナ「そ、そうですよね」
白井カエデ「そろそろ着くね」
黒木ナズナ「よーし、気合い入れて行きましょう!」
白井カエデ「お、いつもの元気が戻ったね」
〇大会議室
TN出版会議室
アンドウ社長「本日はご参加いただき有難うございました」
アンドウ社長「選考結果は今月末までにお伝えいたします」
黒木ナズナ「あーーっ 疲れたあー」
白井カエデ「よかったよー、黒木!! 会心の出来だったよ」
黒木ナズナ「ウチが選んでもらえるといいんですけどね」
白井カエデ「やれることはやったからさ あとは「果報は寝て待て」だね」
〇オフィスのフロア
黒木ナズナ「お先に失礼しまーす」
白井カエデ「今日は頑張ったね」
白井カエデ「ゆっくり休みなよ」
黒木ナズナ「はい!」
〇電車の中
黒木ナズナ(──ふぅ)
黒木ナズナ(カエデさん、『ギャラクシー』聴くんだな)
黒木ナズナ(今朝はとっさに 『ウイナイ』好きだって言っちゃったけど)
黒木ナズナ(『ギャラクシー』が好きだって言ってたら カエデさんとも音楽の話ができたのかな?)
〇タワーマンション
〇マンションのオートロック
白井カエデ「宅配ボックスに〜」
白井カエデ「来てた〜」
〇本棚のある部屋
白井カエデ「うーん・・・・・・ 今週もよく働いたわ〜」
白井カエデ「はーっ 沁みるーッ」
白井カエデ「黒木は恥ずかしくないって言うけど」
白井カエデ「アイドル目当てに雑誌買うのも」
白井カエデ「この歳じゃ恥ずかしいよね、実際」
白井カエデ「後で切り抜いとかなきゃ」
〇ナイトクラブ
〇本棚のある部屋
白井カエデ「スマホもいいけど 大画面だと格別だわー」
白井カエデ「さて、と」
今週の『ミューマニ』
『ウイナイ』ばっか何度もリピートしてる
〇SNSの画面
通りすがりの774さん「アタシも何回も見すぎて トークの内容まで全部覚えてるよ」
今日は大事なプレゼンがあって
すごい緊張してたんだけど
見逃し配信でコウタのトークを見て
勇気がもらえたんだよね
通りすがりの774さん「映画に初挑戦した話だよね あれ見たら頑張ろうってなるよねー」
そしたらプレゼン
すごく上手く出来たんだー❤️
通りすがりの774さん「よかったじゃん」
しかも一緒に出かけた後輩も『ウイナイ』
好きだって分かって
通りすがりの774さん「え、すごい偶然」
だけど同担だと気まずいから
『ウイナイ』のことは話せなくて
つい『ギャラクシー』が好きだって
言っちゃってさ
通りすがりの774さん「何で『ギャラクシー』w」
でもその子はまだ
あんまりハマってる感じじゃないんだよ
通りすがりの774さん「その子ももっと『ウイナイ』のこと 好きになればいいのに」
少しずつ沼に引っ張り込んじゃおうかな
通りすがりの774さん「いいね、やっちゃいなよ」
〇本棚のある部屋
『ウイナイ』はいつも紳士だから
誰にでも安心して推せるよ
どっかの糞バンドとは違ってね
つづく
信者とアンチも怖いし、信者同士の争いも怖いですね。愛は推しに対して、憎しみはファン同士でぶつけ合う、という構図になるのかな…。
ジャニーズファンとかも職場には数人おりますが、みな大人なので『ふーん』ですませている様子です。
さて、お話はどこで人同士の争いが始まるのか。少しずつ読ませていただきます。
うわ〜!
私の推しグループも比較されがちなので、リアルすぎて、ドキドキします。
そして、すぐに自担グループに沼らせようという展開も、あるあるすぎてニヤニヤしてしまいます。
信者とアンチの掛け合いがリアル過ぎて目が離せなかったです😆流石の再現度にビックリしました🙌