FLOWER TALE 〜愛と憎しみの物語〜

真中 真(まなか まこと)

エピソード3 妖精王の妃(脚本)

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真中 真(まなか まこと)

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〇結婚式場の廊下
アザミ「ねぇ、セージ〜」
アザミ「まだなの〜?」
アザミ「早くしてよぉ〜!」
セージ「待ってくれ!もうちょっとだから・・・!」
セージ「よし、これだ!」
アザミ「何で私のドレス選びに、セージがそんなに悩むのよ!」
セージ「ごめん・・・」
アザミ「うわっ・・・しかも高いわね!」
アザミ「ねぇ・・・こっちの安いドレスでもいいんじゃない?」
セージ「いや、せっかくの結婚式なんだ」
セージ「妥協はしたくない!」
セージ「俺は、アザミが一番美しくなれるドレスを選びたいんだ!」
アザミ「セージ・・・」
アザミ「ありがとう!」
アザミ「セージが私のために選んでくれたドレス」
アザミ「一生大切にするわ!」

〇貴族の部屋
アザミ「セージが選んでくれたドレス・・・」
アザミ「一生大切にするって言ったのに・・・」
アザミ「随分汚れちゃったな」
アザミ「ごめんね・・・セージ・・・」
アザミ「誰?」
ビオラ「失礼いたします」
アザミ「なんだ、ビオラか」
アザミ「昨日は、ありがとう」
アザミ「私を慰めてくれて」
ビオラ「いえ、お側にいただけです」
アザミ「それだけで十分よ」
アザミ「私一人じゃ、心細かったから・・・」
ビオラ「お役に立てて何よりです」
アザミ「それで、何か用?」
ビオラ「はい」
ビオラ「ダリア様から、伝言を預かって参りました」
アザミ「あの男から、伝言?」
ビオラ「『三日後にパーティを開くので、参加するように』──と」
アザミ「パーティ?」
アザミ「・・・私の歓迎会でも開くつもりかしら?」
ビオラ「はい」
ビオラ「概ね、そのとおりでございます」
ビオラ「アザミ様を紹介したいそうです」
ビオラ「お妃様たちに」
アザミ「お妃様・・・」
アザミ「たち?」

〇貴族の部屋
アザミ「ちょっと!どういうこと?」
アザミ「妃たち、ですって?」
ビオラ「はい」
アザミ「あの男には、何人も妃がいるってこと!?」
ビオラ「アザミ様以外に、4人のお妃様がいらっしゃいます」
アザミ「4人も!!」
アザミ「そんなに妃がいるのに、私を攫ったの!?」
アザミ「冗談じゃないわ!!」
アザミ「私をダリアのところに連れて行って!!」
ビオラ「申し訳ありませんが、それはできません」
アザミ「どうして?」
アザミ「昨日は連れて行ってくれたじゃない」
アザミ「私が妖精王を殺そうとしたから?」
ビオラ「いいえ。そのことは、ダリア様が不問とされております」
アザミ「だったら、何で?」
ビオラ「お妃様たちが、このお城に戻られたからです」
アザミ「・・・どういうこと?」
ビオラ「ダリア様が人間の国にお出かけになられている間、お妃様たちは、城の外で好きなように過ごされておりました」
ビオラ「そのお妃様たちが、三日後のパーティに招待され、この城に戻られたのです」
アザミ「その事と、ダリアのところに連れて行けないことに、何の関係があるの?」
ビオラ「お妃様たちには、序列がございます」
アザミ「序列?」
ビオラ「はい」
ビオラ「ダリア様からの寵愛によって、お妃様に優先順位がつけられているのです」
ビオラ「そして、序列が高いお妃様がいらっしゃる場合は、序列が低いお妃様を、ダリア様の側にお連れする事ができません」
アザミ「・・・!!」
アザミ「妃たちは、4人いるって言ったわよね?」
ビオラ「はい」
アザミ「それじゃあ、私が妃になったとしたら、その序列は・・・」
ビオラ「第5位となります」
アザミ(嘘・・・!!)
アザミ(それじゃあ、4人の妃たちがいる限り)
アザミ(私は、ダリアに近付けないってこと!?)
ビオラ「例外として、ダリア様から直接お声掛けがあった場合は、序列によらずお側にお連れすることができます」
アザミ(何もかもダリアの気分次第・・・か)
アザミ「私をダリアのところに連れて行けないってことは」
アザミ「妃の誰かが、もう来ているってことね?」
ビオラ「はい。そのとおりでございます」
ビオラ「先ほど到着されました」
ビオラ「序列第3位のお妃様である、 マリーゴールド様が──」

〇華やかな広場
ダリア「やぁ、よく来たね、マリーゴールド」
マリーゴールド「ダリア様!!お会いしたかったですわ!!」
ダリア「相変わらず、君は元気がいいな」
マリーゴールド「ダリア様にお会いできれば、マリーはいつだって元気いっぱいですわ!!」
ダリア「そうかい。ありがとう」
マリーゴールド「ところで、今回パーティを開くとお伺いしましたが」
ダリア「そうだ。余は、新しい妃を招くことにしたんだ」
マリーゴールド「新しい妃・・・ですか?」
マリーゴールド「その話・・・」
マリーゴールド「詳しくお聞かせください」

〇貴族の部屋
アザミ(4人の妃に、序列・・・か)
アザミ(いえ、弱気になっては駄目よ!!)
アザミ(悩んでいたって、何も変わらない!!)
アザミ(あの男を殺すには、行動するしかない!!)
アザミ「ねぇ、ビオラ」
ビオラ「何でしょうか?」
アザミ「妖精王のところが無理なら、その妃のところに連れて行ってくれる?」
ビオラ「マリーゴールド様のところに、ですか?」
アザミ「ええ。そうよ!」
ビオラ「分かりました」
ビオラ「マリーゴールド様に、確認してまいります」
アザミ「それと、もう一つお願いがあるの」
ビオラ「何でしょうか?」
アザミ「このドレス・・・綺麗にしてくれないかしら?」
アザミ「私の、大切な物なの」
ビオラ「かしこまりました」
ビオラ「お預かりいたします」
アザミ「よろしくね」

〇華やかな広場
ビオラ「・・・という訳でございます」
マリーゴールド「新しい妃は、アザミちゃんって言うのね〜」
マリーゴールド「いいわ、その人間に会ってあげる」
マリーゴールド「今夜、パーティ会場の下見に行くつもりなの」
マリーゴールド「そこで会うというのはどうかしら?」
ビオラ「かしこまりました」
ビオラ「アザミ様に、そうお伝えします」
マリーゴールド「よろしくね!」
マリーゴールド「楽しみだわ〜!」
マリーゴールド「新しい妃!」
マリーゴールド「どんな風に、この城から追い出してあげようかしら!!」

〇貴族の部屋
アザミ「今夜、パーティ会場・・・ね」
ビオラ「はい」
アザミ「分かったわ。調整してくれてありがとう、ビオラ」
ビオラ「それと、ドレスを綺麗にしておきました」
アザミ「わぁ、凄い!!」
アザミ「新品みたいじゃない!!」
アザミ「ありがとう、ビオラ!!」
ビオラ「・・・大切な物だとお聞きしましたので」
アザミ「・・・そうなの」
アザミ「私の夫になるはずだったセージが、私のために一生懸命選んでくれたドレスなの」
ビオラ「・・・大切な方だったのですね」
アザミ「ええ。私にとって一番大切な人だった」
アザミ「あの人が側にいるだけで、私は力をもらっていたわ」
アザミ「あなたにも、そんな人はいる?」
ビオラ「・・・はい」
アザミ「そう。生きているうちに、大切にしてね」
ビオラ「・・・はい」
アザミ「さっそく、このドレスに着替えたいわ」
アザミ「手伝ってくれる?」
ビオラ「はい。お任せください」

〇モヤモヤ
アザミ(4人の妃に・・・)
アザミ(序列だなんて・・・)
アザミ(絶望的じゃない・・・)
アザミ(ただでさえ、妖精王を殺せなかったのに・・・)
アザミ(・・・でも)
アザミ(私は、諦めない!!)
アザミ(復讐する以外に、私が生きる目的なんてないんだから!!)
アザミ(セージ・・・)
アザミ(私を守って・・・)
アザミ(私に、力を貸して!!)

〇大広間
  パーティ会場
ビオラ「マリーゴールド様。アザミ様をお連れしました」
マリーゴールド「あなたがアザミちゃんね!」
マリーゴールド「私は、マリーゴールド」
マリーゴールド「仲良くしてね!」
アザミ(どんな妖精かと心配していたけれど)
アザミ(意外と、人間に友好的なのかしら?)
アザミ「はい。よろしく──」
マリーゴールド「な〜んて・・・」
マリーゴールド「言うと思った?」
アザミ「えっ・・・!?」
マリーゴールド「何で私が、人間なんかと仲良くしなきゃならないのよ?」
マリーゴールド「人間なんて、妖精からいろいろな物を奪っていく、醜くて、卑しい存在でしょ?」
マリーゴールド「そんな人間と、仲良くできる訳ないじゃない」
アザミ「ちょっと!!私は、何も奪ってはいないわ!! 何もかも奪われたのは、こっちの方よ!!」
マリーゴールド「あ〜あ、うるさいわね〜!!」
マリーゴールド「ダリア様も、何でこんな人間の女を連れてきたのかしら?」
マリーゴールド「まぁ、どうせあなたから色仕掛けでもしたんでしょ?」
アザミ「私が、色仕掛けしたですって?」
アザミ「ふざけないで!!」
アザミ「妖精王が勝手に、私の大切なものを奪って!!」
アザミ「勝手に私を攫ってきたのよ!!」
マリーゴールド「アハハハッ!!」
マリーゴールド「そんなことあり得ないわ!!」
マリーゴールド「あなたみたいな地味で貧乏臭い人間が、ダリア様の目に留まるわけないじゃない!!」
マリーゴールド「そんなセンスの欠片もないドレスを着て、恥ずかしくないの?」
マリーゴールド「私なら恥ずかしくて、外を歩けないわ!!」
アザミ「・・・して」
マリーゴールド「あら、何か言ったかしら?」
アザミ「訂正してと言ったのよ!!」
アザミ「このドレスは、セージが私のために一生懸命選んでくれたドレスなのよ!!」
アザミ「私が一番美しくなれるように、選んでくれたドレスなの!!」
アザミ「侮辱しないでくれる!?」
マリーゴールド「へ・・・へぇ〜」
マリーゴールド「そのドレス、とても大切なものなのね・・・」
マリーゴールド「分かった」
マリーゴールド「じゃあ、こうしてあげるわ!」
アザミ「キャー!!」
マリーゴールド「アハハハッ!!」
マリーゴールド「何て惨めな姿なのかしら!!」
アザミ「私の・・・ドレスが・・・」
アザミ「あんた!!なんてことしてくれたのよ!!」
マリーゴールド「いい様だわ!!」
マリーゴールド「これで、あなたにとって大切なものは、全部なくなっちゃったわね!!」
マリーゴールド「あなたは夫も殺されたし、家族もいない、友達いない、何もないのよ!!」
マリーゴールド「なんて哀れな存在なのかしら!!」
  私は、涙がこぼれるのを感じた──
  彼女の言葉は残酷だったが、事実だった
  私は何も持っていなかった。セージや家族を失ったあの日から、生きる目的も見失っていた
アザミ(・・・いえ)
アザミ(生きる目的なら──あるわ!!)
アザミ(妖精王に復讐すると、誓ったじゃない!!)
アザミ(こんな嫌がらせ、みんなを失ったことに比べたら何ともない!!)
マリーゴールド「・・・何よ、その目は?」
アザミ「私は、あんたの嫌がらせになんか、屈しないわ!!」
アザミ「例え、大切なドレスを失ったとしても」
アザミ「セージが私のために、ドレスを選んでくれた思い出は消えない!!」
アザミ「私は、何度でも立ち上がるわ!!」
アザミ「妖精王に復讐するまで!!」
マリーゴールド「ダリア様に・・・復讐?」
マリーゴールド「あなたは、本当にバカね!!」
マリーゴールド「ダリア様は最強で最高の存在よ。あなたみたいな弱い人間が、あの方に敵うわけがないじゃない!!」
アザミ「だから何?」
アザミ「そんなこと、私が諦める理由にはならないわ!!」
マリーゴールド「もうっ・・・何なのよっ、あなたは!!」
「そこまでよ!!」
カンパニュラ「もうやめな、マリーゴールド」
マリーゴールド「カンパニュラちゃん!!」
カンパニュラ「さっきから見ていたぞ」
カンパニュラ「マリーゴールド、お前は、『人間は醜くて、卑しい存在』だと言っていたな」
マリーゴールド「ええ・・・そうよ!!」
カンパニュラ「だが、先ほどからのやり取りは、お前の方がずいぶんと醜く、卑しかったぞ?」
マリーゴールド「うっ・・・」
カンパニュラ「見た目ばかり着飾っていないで、少しは心を美しくしたらどうだ」
マリーゴールド「余計なお世話よ!!」
マリーゴールド「あーあ、せっかく楽しいところだったのに、興が冷めたわ!!」
マリーゴールド「私、部屋に戻るから!!」
カンパニュラ「・・・やれやれ」
カンパニュラ「アザミと言ったな。マリーゴールドが失礼なことをして、すまない」
アザミ「あなたが謝ることではありません」
アザミ「頭を上げてください」
カンパニュラ「妖精には、人間を嫌っている者も多い」
カンパニュラ「だがそれは、人間が醜く卑しいからではなく、我々妖精が、人間のことを知らないからだと思っている」
アザミ「あなたは・・・?」
カンパニュラ「自己紹介が遅れたな」
カンパニュラ「私は、カンパニュラ」
カンパニュラ「マリーゴールドと同じ、ダリア様の妃だよ」
カンパニュラ「もっとも、私の序列は2位で、マリーゴールドより上だがな」
アザミ「あなたも・・・妃なんですね・・・」
カンパニュラ「聞きたいことは、いろいろあるだろうが」
カンパニュラ「その姿では、話し辛いだろう」
カンパニュラ「私の部屋に、来い」
カンパニュラ「新しいドレスを見繕ってやるよ」

コメント

  • 妃に序列が…。これから4人の妃とどんなバトルが勃発するのか、怖いもの見たさがありますね…。カンパニュラさんは良い人、だと思いたいです…!

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