タタラ

春瀬川モモチ

読切(脚本)

タタラ

春瀬川モモチ

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タタラ
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〇砂漠の滑走路
「君・・・ヒヨリくんだったかな。なんでエイリアン側についたんだ?」
鹿島 ヒヨリ「え・・・わ、私ですか?」
  装甲車の車窓から外を見ていた日和は、目の前に座っている男に突然話しかけられ、動揺した。
水島 タタラ「おう・・・ 俺たち、AIに支配されてから、その生活に慣れちゃっただろ?」
水島 タタラ「わざわざエイリアン側について生活を変えるのも大変だと思うし、どうしてかな〜と思って」
鹿島 ヒヨリ「・・・う、う〜ん。 AIに復讐したいとか、そんなに大した理由はないですよ」
鹿島 ヒヨリ「ただ、こっち側の方が都合が良かったっていうか・・・ 状況的に選べる余裕なんてなかったです し・・・」
水島 タタラ「ん〜・・・まあ、そうだよな。 選べる自由なんてほとんどないからなあ〜」
水島 タタラ「やな時代に生まれてきたぜ〜 なあ、メイジ!」
工藤 メイジ「・・・」
  メイジ、と呼ばれたその男は、日和と違ってタタラに話しかけられても車窓から見える景色から目を離さなかった。
鹿島 ヒヨリ「・・・」
工藤 メイジ「・・・新人」
工藤 メイジ「見ろ、この景色」
工藤 メイジ「ここは昔、森が青々と茂っていた自然豊かな場所だったという」
工藤 メイジ「しかし今は・・・見る影もない。 AI共に荒らされた俺の故郷のようにな」
工藤 メイジ「俺はAI共から美しい故郷を取り戻す! エイリアン共の傘下になってでもな!」
工藤 メイジ「どんな理由で戦うことになったとしても、 俺の隊に就いたからには、俺のやり方に従ってもらう」
鹿島 ヒヨリ「は、はい・・・」
水島 タタラ「怖いな〜 せっかく入ってきてくれた新人なんだし、もっとフレンドリ〜によ」
工藤 メイジ「俺たちは人間性を保つためにエイリアン共に完全に屈しない強さがいる。そんな甘い考えでは・・・」
水島 タタラ「へっ!何が完全に屈しないための強さだよ。おとなしい犬か反抗的な犬かの違いじゃねーの?」
工藤 メイジ「何を! 大体お前は! ギスギス・・・」
水島 タタラ「ギスギス・・・!」
鹿島 ヒヨリ(うわ〜 ギスギスしてる)
鹿島 ヒヨリ「あっ、あの タ、タタラさんはどうしてエイリアン側に?」
水島 タタラ「!」
水島 タタラ「おおっ! それ、俺に聞いちゃう感じ?」
鹿島 ヒヨリ「え!? い、いや、あの、聞かれてまずいことだったら別にっ!」
工藤 メイジ「・・・」
水島 タタラ「いや、この際だし言っておくわ。 俺がエイリアン共の傘下に入ったのは──」

〇砂漠の基地
  ──AI基地前
  多くのAI兵機とエイリアン兵が高密度の戦線を作り上げている。
エイリアン・ソルジャー「突撃ーッ! 一体でも多く破壊しろーッ!」
AI兵機「死守!死守!」
  その熱気はただ機械の負荷による放熱ばかりではない。力と力のぶつかり合いが、その場にいる者たちの高揚感を最高潮まで高める
  しかしその激しい戦線を掻い潜り、基地に潜入を開始した者たちがいた・・・
  彼らは「怪人隊」
  エイリアンに改造手術を受けた"人間兵器"たちである。

〇薄暗い廊下
水島 タタラ「潜入完了〜 意外とザルじゃないの」
工藤 メイジ「人間が入るのを想定して作られた基地じゃないからな。 入り辛いが、抜け道は多い」
水島 タタラ「どんだけ閉め切った家でもゴキブリが湧くのと同じか?」
鹿島 ヒヨリ「私たち、ゴキブリ扱いか・・・」
水島 タタラ「ありがたいじゃないの〜 そのお陰で俺たちは・・・」
水島 タタラ「オイッ なんか来るぞ!」
AI兵機「・・・」
AI兵機「!?」
水島 タタラ「・・・とはいえ、 流石に対策ぐらいはあるか」
工藤 メイジ「クズめ・・・」
水島 タタラ「いくぜッ 変身!」

〇薄暗い廊下
AI兵機「!!」
メイジ「変腕刀!!」
AI兵機「!?」
  怪人"メイジ"は身体の構造や硬度を自由自在に変化させ、さまざまな武器や道具を作り出せる
ヒヨリ「おりゃー!!」
AI兵機「・・・」
ヒヨリ「くらえっ!衝撃波!」
AI兵機「──! !!」
  怪人"ヒヨリ"はその剣先から衝撃波を放てる。どんなに硬い装甲を持つ相手でも、衝撃波で内部から破壊できる
AI兵機「・・・」
タタラ「一匹、色が緑のがいんなあ・・・」
AI兵機「!!」
タタラ「"グリーンベレー"って言うくらいだし、こいつが一番偉いやつだろうなぁ!?」
AI兵機「死守!死・・・」
タタラ「うるあ!!」
  怪人"タタラ"は超怪力
  どんな相手も力でねじ伏せる
タタラ「うははは!」
工藤 メイジ「グリーンベレーは特殊部隊だ。別に偉いってわけじゃない」
水島 タタラ「るせぇ〜!軍事オタクが!」
工藤 メイジ「軍事オタクも何も、俺たちは軍人だろう。 ─エイリアン軍のな」
鹿島 ヒヨリ「・・・私たちって軍人なんですか? 全然実感ないんですけど」
水島 タタラ「いや、"軍人"なんてそんな甘いもんじゃない」
水島 タタラ「俺たちは"兵器"だ」
鹿島 ヒヨリ「兵・・・器」
工藤 メイジ「軍人だろうが兵器だろうが変わらん。 俺は俺の理念を貫くだけだ」

〇舞台下の奈落
水島 タタラ「・・・おっ、なんだ!? もう変身してやがったのか?」
メイジ「気をつけろ。 何か来るぞ」
水島 タタラ「なんだ?」
メイジ「"殺意"だ」
水島 タタラ「殺意? AIがか?」
メイジ「違う。これは──」
メイジ「グアッ・・・!! こいつッ!!・・・」
械人A「許せよ・・・!」
水島 タタラ「!? メイジッ!!」
鹿島 ヒヨリ「メイジさんッ!!」
械人A「やはり赤い血には・・・ まだ慣れそうにないな・・・」
水島 タタラ「てめえッ! まさか「械人」か!?」
械人A「そうだ。 君たちと同じ"元人間"のな・・・」
鹿島 ヒヨリ「元・・・人間!?」
水島 タタラ「ヒヨリッ!! メイジを連れて逃げろ!!」
鹿島 ヒヨリ「えっ!? 逃げろって・・・」
水島 タタラ「怪人は再生能力が高い! どこか静かな場所に置いておけば自然に治る!」
鹿島 ヒヨリ「えっ!! で、でも・・・!!」
タタラ「ここは俺がやるから! さっさと行け!」
鹿島 ヒヨリ「はっ、はいッ!」
械人A「・・・俺は心臓を狙った。 怪人だろうと、もう生きられない」
タタラ「うるせえよ・・・ 俺は無性に腹が立っているんだ 一人で暴れたいんだけだ」
械人A「・・・」
タタラ「グルルル・・・!」
怪人B「大丈夫!? カズヤ!?」
械人A「・・・ユリか?」
タタラ(ユリ?ユリだと? くそったれ!)
怪人B「こいつが例の・・・「怪人」ね」
械人A「油断するな 二人で一気にやっつけよう」
タタラ「上等だ・・・ 肉と装甲の境界がわからなくなるほどスクラップにしてやるぜ!」

〇巨大研究所
エイリアン・ソルジャー「しかし、すげえ戦場だな・・・ 落ちてる肉と装甲の境界が分からん」
エイリアン・ソルジャー「AIども、当たったらすぐ死ぬ武器ばっか使いやがって・・・ 俺たち衛生兵の立場がないぜ」
鹿島 ヒヨリ「あ、あの、衛生兵さん」
エイリアン・ソルジャー「人間の女? もしかして「怪人隊」とかいうやつのメンバーか? 任務はどうした?」
鹿島 ヒヨリ「あ、あの 仲間が負傷したので、ちょっと休ませてほしいんです」
工藤 メイジ「グッ・・・」
エイリアン・ソルジャー(ええ〜 人間の世話かよ〜 こっちも大変なのに)
エイリアン・ソルジャー(でもこいつら貴重な実験体なんだっけ ここで死なせて上に怒られたら面倒だな・・・)

〇巨大研究所
鹿島 ヒヨリ「はあ、よかった・・・ それじゃあ、また行かないと」
鹿島 ヒヨリ(タタラさん・・・すごい怒ってたな)
鹿島 ヒヨリ(それも、あの「械人」に対してだけじゃない 自分に対して怒ってたような・・・)
鹿島 ヒヨリ(それもそうか。あの人はもう・・・)
鹿島 ヒヨリ「・・・?」
鹿島 ヒヨリ「え? 何、あれ・・・」

〇黒背景
水島 タタラ「俺がエイリアン共の傘下に入ったのは── シンプルなことだ」
水島 タタラ「殺されてんのよAIに・・・ 俺の恋人が・・・!!」

〇舞台下の奈落
械人A「・・・ やれ、覚悟はできている」
タタラ「ウラアッ!!」
械人A「・・・!!」
怪人B「そんな!! カズヤ!!」
タタラ「かかってこいよ カズヤくんと地獄で再開させてやるからな〜」
怪人B「許さない・・・ よくも!!」
怪人B「うわッ!? なんて強さッ!?」
タタラ「その傷ならもう終わりだな・・・」
怪人B(まだ・・・ 装甲を外せば動ける!)
怪人B「パージッ!」
タタラ「お?・・・」
ユリ「・・・」
タタラ「!!!?」
タタラ「ユリ!? お前、ユリかよ!?」
ユリ「何よ 急に私の名前を呼んで・・・」
水島 タタラ「・・・」
ユリ「えっ・・・嘘! あなた、タタラ!?」
水島 タタラ「嘘だろ 死んだんじゃなかったのか・・・!?」
ユリ「それは・・・ こっちのセリフよ・・・!」
水島 タタラ「あ? なんだよ?」
鹿島 ヒヨリ「あ、あのあの!タタラさん!大変です!」
水島 タタラ「何がだよ!こっちも大変だよ!」
鹿島 ヒヨリ「くっ、空爆が・・・ 空爆が来てます!!」
水島 タタラ「は? 空爆・・・?」
ユリ「? 何、この音?」
水島 タタラ「!! やべえ! 伏せろ!!」

〇黒
水島 タタラ「くそっ ダメだ、動けねえ」
水島 タタラ「空爆なんて聞いてねぇぞ 最初から俺たちのことなんて考えてなかったのか!」
ユリ「・・・」
水島 タタラ「・・・」
ユリ「・・・怒ってないの?」
ユリ「薄々気づいたと思うけど・・・ さっきあなたが殺したカズヤって人・・・」
ユリ「あなたが、いなくなってからできた ──恋人だった」
水島 タタラ「・・・やっぱ、そうか」
水島 タタラ「・・・」
水島 タタラ「怒ってねぇよ! 元々死んだと勘違いして離れちまったのは俺だしな」
ユリ「タタラ?」
水島 タタラ「んなことより脱出する方法を探そう。 な?」
ユリ「・・・」
水島 タタラ「またヒヨリか? 今度はなんだ?」
水島 タタラ「何!? 十分後にまた爆撃!?」
ユリ「!?」
水島 タタラ「くそっ こっちは瓦礫に埋もれてんだ! 座標を送るから助けに来てくれないか? 給料全部やるからさ!」
水島 タタラ「まずいことになった・・・」
ユリ「怪人の力で動かせないの?」
タタラ「うおお・・・!」
タタラ「くう、無理だ 重すぎる・・・」
ユリ「・・・ここで死ぬのかな 私たち」
タタラ「バカ言え お前と一緒に死ねるのはいいが・・・」
タタラ「・・・こんな心持ちで死ねるかよ」
ユリ「・・・やっぱり、気にしてるんだ」
タタラ「まあな さっきは見栄張ったけど・・・ 実は絶賛困惑中なんだぜ」
ユリ「・・・ごめん」
タタラ「そうだ! お前がさっき切り離した装甲、あれの爆装はまだ残ってるか?」
ユリ「えっ? うん、まだ残ってるはず」
タタラ「そいつを起爆させて、爆風の勢いと共に瓦礫を押し上げればいけるかもしれん!」
ユリ「で、でも、無理だよ 遠隔操作は出来ないし、装甲もバラバラに飛んじゃって、それを一気に起爆させるなら尚更・・・」
タタラ「いや、策はある!」

〇基地の広場(瓦礫あり)
鹿島 ヒヨリ「やばいですタタラさん! もう時間が・・・!!」
鹿島 ヒヨリ「ええ? でも私の衝撃波はただ波動を流すだけで、瓦礫を吹き飛ばしたりは出来ませんよ!」
鹿島 ヒヨリ「わ、わかりましたぁ へ、変身!」
ヒヨリ「ここですね! 行きます!」
ヒヨリ「やーッ!」
ヒヨリ「えっ!? わあっ!!」

〇黒
ユリ「衝撃波!?」
タタラ「ああ、俺の仲間にそういう力を持ってる奴がいる」
タタラ「そいつなら散らばった装甲に入ってる爆装を全て爆発させることが可能だ。多分。 装甲の位置は分かるか?」
ユリ「わかった。それなら── 今表示する!」
タタラ「よし! 今、ヒヨリに座標を送る!」
タタラ「さて、うまくいくか・・・」
ユリ「・・・ごめん」
タタラ「ん?」
ユリ「私も・・・あなたが死んだと思ってた・・・」
ユリ「私、すごく悲しかったけど・・・カズヤくんがいてくれたから、なんとか立ち直れたんだ」
ユリ「私を恨んでもいいけど、カズヤくんは恨まないでね・・・ あの人、本当にいい人だったから」
タタラ「恨むも何も・・・殺しちまったよ 俺が・・・」
ユリ「・・・私、どうしたらいいんだろう」
ユリ「あなたをまた愛すればいいのか、恨まないといけないのか・・・ どっちにしても・・・」
ユリ「私、最低だ・・・」

〇巨大研究所
エイリアン・ソルジャー「撤退命令、か」
「し、死ぬかと思いました・・・」
「悪かったな、無理言って」
エイリアン・ソルジャー「おっ おい、来たぞ」
「!」
水島 タタラ「! お前、生きてたのか!」
工藤 メイジ「ああ 身体の構造を変える力で、心臓の位置を変えた。 お陰で致命傷じゃない」
工藤 メイジ「お前こそよく生きてたな あの爆撃の中で」
水島 タタラ「・・・まあな」

〇黒
タタラ「じゃあ、逃げちまおうぜ 一緒に」
ユリ「逃げる?」
タタラ「中途半端なのはいけねえ」
タタラ「俺への愛が強かったら一緒に逃げよう 恨みが強ければ戦えばいい」
ユリ「でも・・・ 今決めるのは無理だよ」
タタラ「今じゃなくていい 次会う時・・・」
タタラ「俺たちを繋ぐものが愛にせよ恨みにせよ、必ず俺たちは再開する運命にある その時、どっちか選んでくれ」
ユリ「そんな・・・ いいの?私に委ねて?」
タタラ「愛でも恨みでも、俺は受け止めてやる」
ユリ「タタラ・・・」
タタラ「お! 衝撃波がくるぞ! 構えとけ!」
タタラ「うるあ!!」

〇砂漠の滑走路
水島 タタラ(・・・)
水島 タタラ(必ず会うぜ ユリ!)
  終

コメント

  • AIとエイリアンと元人間たち、三者の入り組んだ対立構造の中で繰り広げられる恋愛模様が新鮮でした。スチルの画もセンスがあって見入ってしまいました。ほかのイラスト画ももっと見てみたいです。

  • 彼氏を殺した元彼を愛せるのか…。女子は上書き保存だから出来そうですが敵陣営同士になってしまうのですね。連れて行くかと思いました。誤って刺したりしないといいですね。
    戦場の埃っぽさや閉塞感が伝わってきて楽しく読めました。

  • 最高に面白かったです!!
    読み切りとしての完結さを求めるには、個人的にはもう2000字くらいあればなぁと感じるストーリー構成でしたが、今回のコンテストにおいてトップレベルのキャラクター性を感じました😆
    世界観も然ることながら、エイリアンVSロボットの改造人間同士の戦いも非常に構図が分かりやすく、イラストの印象を踏まえた能力設定やそれを活かした話の展開にも様々な広がりを想像させます!!( ≧∀≦)

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