BLUT-ブルート-

せんぶり

装甲生命体ブルート(脚本)

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せんぶり

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〇黒

〇港の倉庫
  AM 1:48  横浜港

〇古い倉庫の中
???「噂通り、アンタらとんでもねぇな」
???「まさかここまで揃えるとはねぇ!」
???「約束のもんだ」
???「確かに」
???「コレ車に運べー!」
「へいっ!」
???「お前ら、ちょっと見て来い」
「へいっ!」

〇古い倉庫の中
「・・・」
「ひっ!」
???「て、てめぇかよ、驚かすな!」
???「バカ、コッチのセリフだ!」
???「何もいやしねぇじゃねぇか」
???「気のせいだっての! おい、戻ろうぜ」
???「おいって!」
???「あれ?」
???「おい、冗談はよせって! なぁ──」

〇古い倉庫の中
???「兄貴~!」
???「いつまでかかってんだ!」
???「もう一人は!?」
???「やられました」
???「はぁ?」
???「なんだテメェ?」
???「舐めんじゃねぇぞ!」
???「なっ!?」
???「こ、このっ!」
???「ウ、ウソだろ!?」
???「クソがぁーーーーっ!!」
???「はぁ、はぁ」
???「と、どうなってやがる」

〇古い倉庫の中
???「バ、バケモンがぁ!」
???「ぐっ!」
???「殺す! 殺してやるっ!」
???「に、逃げろーーー!」
???「くたばれやーーーっ!!」

〇港の倉庫

〇車内
桐生サナエ「・・・」

〇港の倉庫
???「はぁ、はぁ」
桐生サナエ「動かないで」
桐生サナエ「聞きたい事が山程ある」
桐生サナエ「一緒に来てもらうわよ」
???「畜生! なんなんだ一体!? 全部パァじゃねーか! クソッ!!」
???「ぐっ!」
桐生サナエ「銃から手を放してっ!」
桐生サナエ「・・・」
桐生サナエ「くっ!」

〇コンテナヤード

〇車内
  コンコンッ
桐生サナエ「おかえりなさい」
桐生サナエ「撃たれっぱなしで納得いかない・・・って顔かしら?」
桐生サナエ「でも残念、時間切れ」
  カサカサカサ・・・
桐生サナエ「・・・」
桐生サナエ「もう少しだったのに・・・」

〇コンテナヤード

〇高速道路

〇車内
  私の名前は桐生サナエ
  数年前は加藤ミキと名乗ってたっけ?
  まぁ、どちらにせよ偽名だ

〇高速道路
  私は正体を隠して生きてきた
  ある組織に命を狙われているから・・・
  秘密結社『カロン』──
  人身売買、薬物・武器の密輸、テロ行為・・・
  あらゆる悪事に手を染める
  もちろん、人も殺す
  私の家族はヤツらに殺された・・・

〇綺麗な一戸建て

〇車内
  母は科学者だった

〇洞窟の入口(看板無し)
  私がまだ幼かった頃──
  採掘場である物体が発見された

〇古生物の研究室
  母はその物体の調査・研究チームの一員だった

〇化学研究室
  しかし、研究はすぐさま暗礁に乗り上げた

〇研究開発室
  その物体の外皮──とされる装甲は、外部からのあらゆる干渉を阻んだ
  体液や組織の採取はおろか、傷ひとつ付ける事さえかなわなかった

〇洞窟の入口(看板無し)
  生きているのか、死んでいるのか?
  どこから来たのか?
  誰が作ったのか──

〇化学研究室
  ある時、事態は動いた──
  チームは物体が血液を栄養源として利用する可能性を考えた
  あらゆる動物の血が実験に用いられた
  人間の血も──

〇研究開発室
  その仮説は的中した
  物体は人間の血液に反応
  自ら体内へと吸収した
  それは、母の血だった

〇車内
  物体が生命体である事が判明し、研究は更なる期待をもって続行された
  母はチームの中心に立ち、この生命体に『ブルート』と名付け、究明に努めた
桐生サナエ「・・・」

〇オフィスビル
  AM2:59  民間警備会社『シルマー』本社

〇研究所の中
  同刻  桐生サナエのオフィス
桐生サナエ「ただいま」
  カサカサカサ・・・
  母が残したレポートから、当時ブルートについて解かっていた事はこうだ
  この生命体が纏っている装甲は、地球上に存在するあらゆる物質よりも硬いという事
  活動エネルギーの源は人間の血液で、一滴で一日程度活動が可能という事
  そして、その血液は、最初に与えた者の血液に限る──という事
  ブルートは、他の人間の血液には感心を示さない
  つまり、ブルートのエネルギー源は母の血液のみ
  チームは、この血液及び、血液の保持者を《ソース》と呼んだ

〇研究所の中
  ブルートは水や食料も必要としない
桐生サナエ(世話は楽で助かるけどね)

〇化学研究室
  《ソース》を得て、その生命活動は認められたものの
  結局、硬い装甲のせいで固体の謎は不明
  外部刺激に対しても、目ぼしい反応や習性は認められなかった
  唯一の手がかりは、血──

〇研究開発室
  チームは試行の一環として、ブルートに一度に与える血液の量を増やした
  その結果は驚くべきものだった

〇黒
  ブルートは、その姿をみるみる変容させた

〇研究開発室

〇黒

〇研究所の中
  ちなみに

〇古い倉庫の中
  ブルートのあの状態を私は成体と呼んでいる

〇研究所の中
  よって、コチラは幼体
  成体化には多量の血を必要とする上、長くは活動できないため、燃費は非常によろしくない

〇化学研究室
  成体状態のブルートは、これまでの緩慢な動きが嘘のように素早く動き
  その力は人間の何十倍にも相当した
  纏う装甲は、あらゆる兵器の攻撃を跳ね除けた
  そして、ブルートのそれらの行動の全ては、母の命令によって遂行された

〇化学研究室
  ブルートは《ソース》の思念に従う
  《ソース》の言葉、思いに呼応する
  チームと母の願いは、このブルートの力をもって世界を豊にする事──

〇黒
  しかし、その願いは踏みにじられた
  あの悪魔たち・・・
  秘密結社『カロン』に──

〇化学研究室
  ブルートの圧倒的な力に目を付けた結社は、チームを支配しようとした
  反抗する者は見せしめに殺された
  母は研究所からブルートを持ち去った

〇警察署の入口
  父は刑事だった
  だが、すでに警察内部にまで結社の魔の手は伸びていた

〇車内
  両親は私と弟を連れて逃げた
  しかし、峠道に差し掛かった所で・・・

〇研究所の中
???「おっ、無事か?」
???「また随分派手にやったなぁ」
桐生サナエ「むこうが勝手にやったのよ」
  このオジサンは、工藤イサオ
  民間警備会社『シルマー』の代表で元刑事
  父の同僚だった人

〇車内
  あの日、両親はオジサンを頼って車を走らせた

〇研究所の中
  私たちの車は追手のトラックに衝突された
  車はガードレールを破って滑落
  両親は即死だった

〇山中の川
  私は弟を探したが、姿はどこにもなかった
  母は最後に願ったのだろう
  子供たちを守って──と

〇研究所の中
  その願いも、弟を救う事は出来なかった
  両親の死は事故として扱われ
  弟の行方は川に流され不明とされた
  私はその後、オジサンに保護され
  名前を変え、身元を隠した

〇研究所の中
工藤イサオ「また、ふり出しに戻っちまったなぁ」
桐生サナエ「迂闊だった、目の前で死なせるなんて」
工藤イサオ「ま、捕えた所で口を割ったかどうか どこまで行ってもイタチごっこだ」
  オジサンは私と共に結社の行方を追っている
  表向きは民間警備会社の代表だが、裏では随分と違法な事もやっている、らしい
  警察は結社の息がかかっているので頼れない
  私たちはレジスタンスとして、これまでも結社の悪事を阻んで来た
  しかし、未だ結社の中枢に迫れずにいる・・・
工藤イサオ「ゲッ!」
桐生サナエ「いい加減慣れてよ」
工藤イサオ「コイツとも、もう長い仲になるが無理だ! 血をゴクゴク啜る所なんてもう・・・っ!」
桐生サナエ「あはは」
  ブルートは変わらず血液をエネルギーの源としている
  母の血を受け継いだ、私の血液を──
  《ソース》の血族もまた、《ソース》たる存在なのかもしれない

〇研究所の中
桐生サナエ「じゃ、情報収集お願いね」
工藤イサオ「こんな危険な事、一刻も早く辞めてほしいんだがなぁ」
桐生サナエ「またその話?」
工藤イサオ「あの二人の娘だ 言ってもきかないのは分かってるさ」
桐生サナエ「血は争えないわよね」

〇綺麗な一戸建て

〇黒
  ・・・コロス
  コロスコロス・・・

〇実験ルーム
  コロスコロスコロスコロスコロス
  ひとり残らず・・・コロス!!

〇オフィスビル

〇研究所の中
工藤イサオ「おい、テレビ!」
桐生サナエ「もう知ってる」
工藤イサオ「と、とにかく!」

〇荒廃したセンター街
  本日午後一時頃、渋谷センター街において大規模な爆発が発生しました!
  死傷者は複数・・・
  原因については捜査中との事で──

〇研究所の中
桐生サナエ「原因はコレ」

〇SNSの画面
桐生サナエ「現場の映像がある」

〇荒廃したセンター街
市民「うわ~」
市民「助けてー」
市民「ば、化け物ー!」

〇研究所の中
工藤イサオ「ブルートの他にもいるのか!?」
桐生サナエ「そう考えるのが自然ね」
桐生サナエ(だとしたら、必ず近くに《ソース》がいる)
桐生サナエ「ひとつ頼まれてくれる?」

〇荒廃したセンター街
隊員「住民の避難および安全確認、完了しましたっ!」
神谷ケンジ「了解した」
神谷ケンジ(今回目撃された怪人 あの女と関係があるのか?)

〇諜報機関
工藤イサオ「──これが現場周辺の防犯カメラの映像だ」
桐生サナエ「仕事が早い」
工藤イサオ「軽く言ってくれるが、ハッキングってのは大変な作業で──」
桐生サナエ「いた!」
工藤イサオ「ん?」

〇屋上の端
工藤イサオ「コイツ!」
工藤イサオ「連続殺人犯の浅宮!? 今頃ムショのハズじゃ!?」
桐生サナエ「それについては分からないけど」
桐生サナエ「爆発の瞬間に微動だにしてない」
桐生サナエ「少なくとも、騒ぎの関係者である事は間違いない 高みの見物ってわけね」

〇諜報機関
工藤イサオ「どうする?」
桐生サナエ「オジサンはカメラから浅宮の足取りを追って」
桐生サナエ「私がくい止める」
工藤イサオ「しかし!」
桐生サナエ「ボサボサしてたら被害が増える」
桐生サナエ「居場所が分かったら連絡して!」
工藤イサオ「ちょまっ!」

〇車内
桐生サナエ(結社の人間だとしたら行動が大胆過ぎる)
桐生サナエ「──ん? あれは!?」

〇ファストフード店
市民「またかよ~!」
市民「勘弁して~!」
市民「ば、化け物~!!」
桐生サナエ「ブルート、行くわよ」

〇ファミリーレストランの店内
浅宮カオル「久しぶりのジャンク!」
浅宮カオル「しかも貸し切り状態!」
浅宮カオル「あん?」
浅宮カオル「なんだぁ、女」
浅宮カオル「マジか!」
浅宮カオル「本当にセイバーに仲間がいたぜ!」
桐生サナエ「アナタ、結社とはどういう関係?」
浅宮カオル「結社?」
浅宮カオル「あ~、あのフザケた連中な!」
浅宮カオル「オレを便利に使おうとしやがってよー!」
浅宮カオル「血を供給する《ベンダー》とかいう機械に改造しようとしやがったんだよ!」
浅宮カオル「犯罪者にだったら非人道的な行いも許されるってかぁ!?」
浅宮カオル「よく分かんねぇけどムカつくだろ?」
浅宮カオル「だから思ったわけよ! 全員殺してやるってさぁ!」

〇実験ルーム
  コロスコロスコロス・・・殺してヤル

〇実験ルーム

〇ファミリーレストランの店内
浅宮カオル「オレの救世主! だからアイツはセイバーさ」
桐生サナエ「で? その救世主さんはドコ?」
浅宮カオル「あー」
浅宮カオル(マズい、先にアジトに帰しちまった)
神谷ケンジ「動くな、警察だ!」
浅宮カオル「やなこった!」
桐生サナエ「ブルート、追って!」
神谷ケンジ「コイツは! 待て! 止まれ!!」
ブルート「・・・」
桐生サナエ「どうしたの、ブルート!?」
神谷ケンジ(女と怪人!? 見つけた!)
神谷ケンジ「お前たちを連行する!」
桐生サナエ「ブルートッ!」
神谷ケンジ「ま、待て!」
神谷ケンジ「くそ!」
神谷ケンジ「・・・ん?」
神谷ケンジ「これは・・・」

〇山奥のトンネル
桐生サナエ「──わかったわ、ありがとうオジサン」

〇オフィスビル

〇諜報機関
工藤イサオ(無茶するなよ・・・)
神谷ケンジ「警察です、お邪魔しますよ」
工藤イサオ「家捜しですか? 札は?」
神谷ケンジ「お宅のID」
神谷ケンジ「事件の重要参考人の遺留品です これで十分でしょう? 調べさせてもらいますよ」
工藤イサオ「むぅ」
神谷ケンジ(組織犯罪絡みの現場で度々目撃される女と怪人 ここに答えがある?)

〇研究所の中
神谷ケンジ「ここは・・・」
神谷ケンジ「・・・」
神谷ケンジ「こ、これは──」

〇古い倉庫

〇ボロい倉庫の中
浅宮カオル「来たか」
桐生サナエ「一般市民を巻き込まないで」
浅宮カオル「なら、オレのセイバーに勝つんだな!」
桐生サナエ「ブルート」
浅宮カオル「へぇ、それに血が入ってんのか!」
浅宮カオル「こっちは毎回」
浅宮カオル「生絞りだぜぇー!」
浅宮カオル「おかげで生傷が絶えねぇよ! なぁ、相棒!」

〇古い倉庫

〇ボロい倉庫の中
桐生サナエ(ブルートが押されてる!?)
桐生サナエ「き、効いてないの!?」
浅宮カオル「ここで情報をひとつ開示♪」
浅宮カオル「あんた二代目だろ? 資料で読んだぜ」
浅宮カオル「つまり、薄まった《ソース》ってわけだ」
浅宮カオル「原初の《ソース》こそが真の力を与える──」
浅宮カオル「それがアイツらの立てた仮説」
桐生サナエ「ブルート!」
浅宮カオル「あながち間違いじゃないかもな」
浅宮カオル「じゃ、そのうっすい《ソース》を」
浅宮カオル「綺麗に拭き取ろうかぁ!」
桐生サナエ「くっ!」

〇ボロい倉庫の中
浅宮カオル「殺せーっ!」

〇ボロい倉庫の中
神谷ケンジ「く、くそ・・・」
桐生サナエ「喋らないで!」
桐生サナエ(血が止まらない)
神谷ケンジ「全部・・・聞いたよ」
桐生サナエ「え?」
桐生サナエ「これは・・・」
神谷ケンジ「ずっと、探してた、あの日から・・・」
桐生サナエ「あぁ、そんな・・・」

〇ファミリーレストランの店内
  あの時ブルートは、紛れもなく《ソース》の思念を受け取っていた
  血を分けた、弟の思念を──

〇ボロい倉庫の中
桐生サナエ「い、生きてた・・・」
神谷ケンジ「けど、ダメそうだ・・・」
神谷ケンジ「ブルートッ! ここに血がある! 《ソース》だ!!」
神谷ケンジ「全部くれてやる! だから・・・!!」
  だから、姉さんを助けて
桐生サナエ「やめて、ブルートッ!!」

〇ボロい倉庫の中
浅宮カオル「どんだけあっても所詮は薄味!」
浅宮カオル「やれ、セイバー!」

〇ボロい倉庫の中

〇ボロい倉庫の中
浅宮カオル「ウソだろ!」
桐生サナエ「勝って、ブルートッ!!」

〇古い倉庫

〇ボロい倉庫の中
  ──その後
  浅宮は警察に取り押さえられ
  私は再び姿を隠した

〇車内
  私は結社を追い続ける
  この血が尽きようとも──

〇暗いトンネル
浅宮カオル「おい、ムショに行くんじゃねぇのか?」

〇黒

〇地下実験室
刑事「現場から回収しました」
???「ご苦労」
???「我々から逃げ切れるとでも?」
???「《ベンダー》くん」

〇黒

コメント

  • 世界観がすごいです!思わず「Blut」をグーグル検索してました☺️ドイツ語で「血液」って意味なんですね...なるほどぉ🧐

  • 面白かったです。怪人の設定が凝っていて、それ故の葛藤やドラマがあり、世界の広がりを感じました。

  • ケンジの正体にグッと来ました。
    血が原動力という設定が面白く、それ故の悲哀も感じます。
    ドラマチックでシリアスな作品に感動。

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