エピソード12(脚本)
〇大きな木のある校舎
現役教師が過去に起こした不祥事に多くのメディアがうちの学校に押し寄せた。
泉先生はもちろん、学校の上層部も警察の事情聴取を受けている。
10年前に行方不明になった岡本瑞穂が現在何処にいるのか・・・学校関係者は未だに黙秘しているらしい。
そして、七不思議の噂は学校に留まらず電波を通して全国に報じられた。
〇学校の部室
そして、高月先生の辞任強要も写真部の廃部もなくなり、平穏な部活動をこの先も送れるようになった。
井上「すごいじゃん!俺たちが撮った写真まで新聞に載ってるよ!」
佐崎「これ、・・・全部加工なのにね」
井上「・・・今、佐崎ちゃんなんて?」
佐崎「あったり前じゃない。 そんな簡単に幽霊なんて撮れるはずないでしょっ!」
佐崎「先生には現像と加工の両方を頼んで作ってもらってたのよ」
井上「まさか、俺たちまで騙してたの?」
佐崎「ほらっ、敵を欺くにはまず味方からって言うじゃない!」
井上「じゃあ、俺と小田の周りで起こってた現象は!?」
佐崎「全部私よ。七不思議をつくるために夜の学校に忍び込んだのも口実。私はただ泉先生を糾弾する材料を集めたかっただけ」
佐崎「私が黙って裏で動いていたのは、他の部員に瑞穂ちゃんの幽霊がいる信憑性を高めたかったからよ」
佐崎「動き回って、仕込みして、けっこう大変だったんだから」
井上「俺たちの動きを全部読んだ上で裏で行動してたの?」
佐崎「導いてたって言ってもらいたいわ。 瑞穂ちゃんのカメラが高月先生の机にある事は事前に教えられてたから、」
佐崎「泉先生を撮影した後に職員室に出向いて私と瑞穂ちゃんのカメラを交換したの」
佐崎「あなたたちが職員室ですり替えるまでの間に持っていたカメラは瑞穂ちゃんのものだったのよ?」
井上「泉先生がいじめてた証拠のデータを俺たちがずっと持ち歩いてたってこと・・・?」
佐崎「万が一のために手元にあった方がいいでしょ?それに、カメラを渡すよう条件を提示される危険性も予想してたから」
佐崎「カメラを交換してる時に小田くんが急に職員室に入ってきた時は予想外でヒヤッとしたけどね」
佐崎「でも二人を信じてよかったわ。 カメラのデータを必ず守ってくれるって信用して計画を実行したんだから!」
佐崎「題材決める時、井上君から七不思議をしようって言われた時は内心驚いてたのよ。小田君も行方不明について知ってそうだったし、」
佐崎「なんだか運命を感じたのよ。高月先生と私の計画実行の決意が二人にも繋がってるように思えたから、二人を信じてみようって」
佐崎「おかげで泉先生の元には私のカメラが渡った。あなたたちのおかげで大成功よ!もっと喜びなさい!」
井上「うーん・・・喜べって言われてもなぁ。 俺は佐崎ちゃんの事ずっと本気で心配してたんだよ?」
〇まっすぐの廊下
佐崎「心配かけた事は謝らなくちゃね。ごめんなさい。叫び声を上げた時に出くわしたのは高月先生だったの」
〇学校の下駄箱
佐崎「そこから昇降口を閉めて、事前に開けておいた理科室の窓から入ってあなたたちを追跡してたのよ?」
〇学校の部室
佐崎「二人が職員室に行ってる間に染料で手形残して、理科室の時は二人が廊下に出ていった隙に窓から出て、また昇降口開けて・・・」
佐崎「井上くんと別れた後も、急いで学校に戻って片付け作業に大忙しだったんだから」
井上「も、もうわかったから・・・全部佐崎ちゃんの仕業だったんだね」
佐崎「私だって罪悪感はあったのよ? 井上君が私を見つけた時の顔は今でも忘れてないわ」
佐崎「あんなに安堵して泣いてくれたのって親以外初めてかも。申し訳ない気持ちもあったけど・・・素直に嬉かった」
井上「さ、佐崎ちゃん・・・」
佐崎「・・・?」
井上「本気で心配してた理由はね、佐崎ちゃんの事が・・・好きだからだよ」
佐崎「・・・ありがとう。 私も井上君の事は好きよ?」
井上「えっ、じゃあ俺と付き合っ・・・」
佐崎「もちろん、小田君もねっ! 卒業してもみんなと何処か遠出して写真撮り続けてたいなって思ってるし」
井上「そっか、そっちの方ね・・・ 写真が繋いでくれた縁だと思ってるし、気持ちは俺も一緒だよ」
井上「・・・でも、僕も騙してたから人の事言えないんだよね」
佐崎「何かしたの?」
井上「いやぁ、女子トイレで小田をふざけ半分で閉じ込めたんだよ」
井上「自作自演があまりにもうまくいっちゃって、未だに僕の仕業だって話してないんだ」
佐崎「あの時の叫び声なら聞いてたわよ。 本当の幽霊が出たと思って私の出る幕はなさそうだから昇降口に向かったんだけど」
佐崎「井上くんだったのね」
井上「あいつ、自分が体験した全部が幽霊の仕業だと思い込んでて周りに言いふらしてるし、ますます話づらくなっちゃってさぁ」
佐崎「あら、その方が面白いじゃない。 七不思議は語り継がれなきゃ成立しないものだから」
佐崎「小田君には、このまま生き証人になってもらいましょ!」
井上「そっか・・・それもそうだね。知らない方が良いこともあるし」
井上「・・・結局、小田以外全員が誰かを騙してたんだね」
井上「よう、小田。 ちょうどお前の話をしてたんだ」
小田「えっ、俺の? 何の話?」
井上「それは内緒。ねっ、佐崎ちゃん」
佐崎「そうねっ、井上君!」
小田「なんだよ二人して・・・俺だけのけ者扱いかぁ?」
井上「あ、どうだった? 新聞部が記事作ってるんでしょ?」
小田「ああ、写真は全部渡しておいたさ。 見出しタイトルは「幽霊からの告発」に決まったよ」
小田「プレゼンの場では俺の撮った最後の写真は紹介されてなかったけど、それも載せてもらえる事になった!」
井上「おぉっ!よかったじゃん! これでもっと噂が広がるね」
佐崎「そういえばプレゼン前のあの時、小田君が気絶しちゃってスマホから現像できなかったのよね。パスワードもかかってたから・・・」
井上「そうだ、俺らもあの写真見てないね」
小田「二人とも勘が鋭いな。それで今しがた現像してきたんだが・・・」
小田「見て驚くなよ?」
井上「あぁっ!?」
佐崎「うっそでしょ!!」
部室で撮った最後の写真には明らかに4人が並んでおり、はっきりと写し出されていた。
佐崎「まさか最後の最後で本物が撮れてたなんて・・・」
井上「儀式は成功してたんだ・・・小田すげぇ・・・」
小田「・・・お前ら、ぼそぼそと何言ってんだ?」
高月「今日もみんな元気だね。部室の外にも声が響いてるよ?」
再び扉が開くと、部室に高月先生が入ってきた。
〇学校の部室
佐崎「高月先生これ見てください!」
井上「ホントに撮れてましたよ、小田が撮った写真に!」
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