その最強怪人、リアクション芸を極める

でんでん太鼓持ち

読切(脚本)

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〇個別オフィス
ロンガー「クビ!? 連戦連勝圧勝の俺様をか!?」
総裁「そうよ! これを見なさい!」
総裁「それは貴方の戦闘記録よ」
ロンガー「ふっ、試合の99%が1分以内にKO勝ち。やっぱ俺様は最強だな!」
総裁「そうね。 でも見てほしいとこはそこじゃない。ここよ!」
ロンガー「なになに、対戦観戦者数?」
ロンガー「右肩下がりで、最近はほとんど観戦者がいない・・・だと!?」
総裁「私達の収入源はヒーローや 魔法少女とのバトルを公開して頂く観戦料よ 相手を倒せばもらえるわけじゃないわ」
総裁「そう、貴方は強すぎるのが問題なの」
総裁「勝つのが当たり前になっていて 応援しがいがないし どんな相手も秒殺するから 興行的に見ごたえもないわ」
総裁「最初こそ、その強さに 憧れを持ったファンも多かったけどね 戦いが単調すぎて飽きられたのよ」
ロンガー「俺は・・・稼げなくなった。 だからクビか?」
総裁「そうよ」
総裁「と言いたいとこだけど その強さに免じてチャンスをあげる」
総裁「2か月後に開催される ファン感謝祭の人気投票で 10位以内に入れてたらクビを撤回するわ」
総裁「話は以上よ クビが嫌ならあがらってみることね」

〇ビルの地下通路
ロンガー「今まで戦えればよかったから 気にしてなかったけど 俺ってここまで人気なかったんだなぁ」
ミノマキタウロス「んも? その紙は何っすかアニキ?」
ロンガー「その声はミノか これは去年の人気投票結果だ」
ロンガー(そういえば、 コイツ怪人としての実力はいまいちなのに 妙に人気があるんだよなぁ)
ロンガー「8位だと!?」
ミノマキタウロス「アイドル怪人にはかなわなかったっすが、大健闘っす!」
ロンガー「一つ聞きたいんだが お前のその人気の秘訣とやらを 教えてくれないか?」
ミノマキタウロス「んもー、とにかくイベントにでて アピールして覚えてもらうことっすかねぇ」
ミノマキタウロス「なんなら今月末にファン交流会があるからよかったらどうっすか?」
ロンガー(まずは少しでも覚えてもらう事があるか)
ロンガー「わかった。参加させてもらおう」
ミノマキタウロス「ぶも! じゃあ当日までに演目を考えておくっすよ!」
ロンガー「え? 演目?」

〇大きな公園のステージ
  ファン交流会会場 控室
ロンガー「なるほど、ファンとの交流の合間に 持ち回りで野外ステージをやってるのか」
ロンガー「まぁ、そうじゃないと・・・」
ファンB「うぉぉー! かっけぇー!!」
ファンA「サインしてください!」
ロンガー「人気がない怪人は 知ってもらえる機会すら 与えられないというわけか」
ロンガー「っと、そろそろ俺の番だな。 この日のために俺も歌とダンスを 練習してきたんだ! いくぜぇー!」
  ─10分後─
ミノマキタウロス「お客さんみんな逃げちゃったっすね ・・・」
ロンガー「俺の何がいけなかったんだ!?」
ミノマキタウロス「いや、その・・・ ダンスはともかく歌がひどかったすよ」
ロンガー「そんなにか!?」
ミノマキタウロス「こっちは静かになったっすけど、アイドルブースは相変わらず騒がしいっすねぇ」
ロンガー「いや! これは違う!」
ミノマキタウロス「あっ! アニキ! 逃げる気っすか!?」

〇華やかな広場
  ──ファン交流会 アイドルブース──
アイドル怪人「ぐ・・・ううっ」
ロンガー「おい、大丈夫か!?」
「ケケケ!」
ライバル怪人A「また新顔がわざわざぶちのめされに 来やがったぜ」
ロンガー「ほぉ・・・ やれるもんならやってみなぁ!」
ミノマキタウロス「アニキ! 戦うのはダメっす!」
ロンガー「止めんな! 大体あいつらなんなんだ!?」
ミノマキタウロス「あいつらは新興の怪人組織の連中っすよ!」
ミノマキタウロス「今日は戦う許可とってないから こっちも殴り掛かったら事件になるっす!」
ロンガー「くそっ そういう事か!」
ライバル怪人B「どうした? よそ見はいかんよなぁ!?」
ロンガー「しまっ──」

〇空
ロンガー「くそっ やってくれたな・・・」
ロンガー「だが、相手に飛ばされたこの状況なら 反撃できる! やつの頭に狙いを定めて──」

〇華やかな広場
ライバル怪人A「ああっ! てめぇやりやがったな!」
ミノマキタウロス「完璧に伸びてる・・・これは事故っすよ!」
ライバル怪人A「そんなたまたま人の頭の上に 落ちて来るかよ!?」
ミノマキタウロス「それより、この人アワ吹いてるっす! 速く病院に連れていった方がいいっす!」
ライバル怪人C「うぉっ! マジだ! はやくつれていくぞ!」
ミノマキタウロス「大丈夫っすか! アニ──」
ロンガー「おう? 問題ないぞ」
ミノマキタウロス「うわ! 頑丈っすね」
ロンガー「俺はどんなに体が傷ついても 再生できるんだ」
ロンガー「それより、うまく追っ払えたようだな」
「ぷっ・・・ふふふ、あははは!」
ロンガー「ん?」
一般人A「いえ、すみません」
一般人A「すごいキレイに飛ばされたのに、 飛ばしたヤツの頭に落ちてきたのが ギャグマンガみたいだなぁって 思ったら・・・」
一般人B「ぶつかられた方はアワ吹いてたのに、 あなたはケロリとしてるし・・・ふふっ!」
怪人マニア「これが配信されてたら もう一回見たいところでしたよ はっはっはっ!」
ロンガー(笑っている・・・ やられ方しだいでは おもしろく感じるものなのか?)
ロンガー「つまり攻撃に対するリアクションを 極めれば、見てくれる?」
ロンガー(間違ってるかもしれないが 歌は全然ダメだったし 感謝祭まで迷ってる時間もない)
ロンガー(ならば・・・ もはやこれに全力を賭けるのみ!)
ロンガー「そうと決まれば早速特訓だ!」
ミノマキタウロス「まつっす!」
ロンガー「なんだ? 俺はこれから忙しいんだ!」
ミノマキタウロス「何をするのか知らないっすけど、 ファンが欲しいならお客を ほったらかすのはダメだと思うっすよ」
ロンガー「あ・・・」

〇華やかな広場
「この日を境に 俺は徹底的にギャグマンガを読み込み」
「カートゥーンアニメを何度も繰り返し見て 芸人のコントを研究しつくした」
「そしてあらゆる攻撃に対する リアクションを完成させた頃」
「ついにその日はやってきた!」

〇近未来の闘技場
  ファン感謝祭 メインイベント闘技場
「ファン感謝祭の目玉は 普段配信でしか見れない 怪人とヒーローの迫力ある戦いを 間近で見れる事にある」
「この戦いは全ての怪人に平等に与えられ イベント終了後に人々は その熱気に包まれたまま投票をする」
「つまり、この戦いでいい印象を残せれば ランクインも夢ではない」
「はずだったのだが・・・」

〇コンサートの控室
ロンガー「俺の相手がバックレたぁ!?」
総裁「どうも前に貴方に手も足もでず 負けた事がトラウマになってたみたいね」
総裁「対戦表を見せたら いつのまにかいなくなってたわ」
ロンガー「そんな!? じゃあ代役を──」
総裁「無理ね。 今からすぐ他のヒーローに都合をつけてもらうのは難しいでしょうし」
総裁「今日ここにきてるヒーローに連戦をお願いできるほど優しい仕事ではないわ」
ロンガー「くそっ! この日のために特訓したってのに、 俺には見せる機会すら与えられないのか」
イベントスタッフ「失礼します! 総裁、会場入口にウチの所属ではない 怪人達がいるようです!」

〇会場の入り口
ロンガー「あいつらは! 交流会の時の・・・」

〇コンサートの控室
総裁「まずいわね、 ここで暴れられて観客達に ケガでも負わせられたら 主催である私達の責任問題よ!」
総裁「それに力づくで追い出そうにも 戦闘許可を取ったのは試合会場だけ」
総裁「あそこで戦ったら先方との契約違反 下手をすると賠償問題にまで発展してしまうわね」
ロンガー(俺の相手はもういない ならここにいなくてもいい)
ロンガー(それに俺が練習してきたことなら・・・)
ロンガー「総裁! 俺が時間を稼ぐ その間に観客の避難を頼む!」
総裁「あっ! ちょっと!」

〇会場の入り口
ロンガー「連中は・・・いたっ!」
ライバル怪人A「俺たちがここの怪人のふりをして 暴れてやればここの評判はガタおち」
ライバル怪人B「へへ、そのまま倒産でもしてくれりゃあ 仕事を奪いあうライバルが減るってわけか」
ロンガー「おっと、そうはさせねぇぞ!」
ライバル怪人B「あっ! てめぇは交流会の──」
ロンガー「先日は何もできなくてすまなかったな」
ロンガー「今日はわざわざ感謝祭に来てくれたお前らに 俺のリアクション芸でたっぷり おもてなししてやるよ!」
ロンガー(そう! これから見せるのは芸! だから俺が手を出さなきゃ戦いじゃない!)
ライバル怪人B「こっちこそ頭突きのお礼を たっぷりしてやるよ!」
ライバル怪人B「くらいな!」
ロンガー「リアクション! 柔和如猫! (にゅうわなることねこのごとし)」
  ぐにゃ
ライバル怪人B「あ?」
  ぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃ──
ライバル怪人B「全身ひん曲げて変なよけ方しやがって! ちくしょう! 全然当たんねぇ!」
ロンガー「ふっ、こいつは猫のような柔軟性で おもしろおかしく攻撃をよける芸だ!」
ライバル怪人A「雑魚はどいてろ! 食らえ!」
ロンガー「リアクション! 対火旋風脚!」
ライバル怪人A「なっ! 蹴りでおれの炎をかき消しただと!?」
ロンガー「ふっ」
ロンガー「あっちゃぁ! 尻に火がぁぁ!」
ロンガー「ふぅ~、死ぬかと思ったぜ」
ロンガー「この芸は炎をかき消す際に 残り火で尻を着火させるとこが ポイントだぞ☆」
ライバル怪人A「んなこたぁ聞いてねえよ! お前ら! さっさとぶっ倒すぞ!」
  ─数十分後─
ライバル怪人A「ぜぇー! ぜぇー! なんだこいつ・・・化物か」
ロンガー「どうした? もう終わりか? まだまだ芸は残っているんだぞ?」
ライバル怪人A「おいもうコイツなんか無視しようぜ・・・」
ロンガー(まずいな、俺を倒すのにムキになってた 連中が冷静になっちまった)
ロンガー(大分時間は稼いだはずだが まだ避難は終わらないか?)
総裁「待たせたわね! 入口周辺の戦闘許可と 配信許可が取れたわ!」
ロンガー「えっ! 観客の避難は!?」
総裁「そんなのあいつら 全員倒せばいらないでしょ。 できるわよね?」
ロンガー「ふっ! 任せな!」
ロンガー「ここからは・・・ お前らがリアクションをする時間だぜ!」
ライバル怪人B「ああ!? てめぇ何言って──」
ロンガー「フォースリアクション! ゴールドクラッシュ!」
ライバル怪人B「ぐぉ!  ・・・ぉぁぁぁ・・・」
ロンガー「ふっ。 この技を食らったものは悶絶の表情を 浮かべて地べたにはいつくばる!」
ライバル怪人C「何言ってやがる! ただの金的じゃねーか!」
ロンガー「リアクションさせれれば なんだっていいんだよ!」
ロンガー「それより てめぇらも食らってみるか? どんなリアクションをするんだろうなぁ?」
ライバル怪人B「(声にならないうめき声)」
ライバル怪人A「いやあの、僕たちそろそろお家に帰らないと・・・」
ロンガー「そうかい、 それじゃあ家まで飛ばしてやるよ!」
ライバル怪人C「え? 飛ばす?」
ロンガー「いいリアクションを期待するぜ!」
ロンガー「天翔流星拳! (てんしょうりゅうせいけん)」
ライバル怪人A「僕のおうちは反対側だよぉぉぉ──」
ロンガー「ふっ、お前らもなかなかいいリアクションだったぜ! あばよ!」
総裁「片付いたようね」
ロンガー「ああ、そして俺のクビも これでほぼ決まったか」
ロンガー「結局投票する中の観客には 何一つアピールできなかったわけだし」
総裁「あら? あきらめるにはまだ早いわよ」
ロンガー「え?」
総裁「言ったでしょ。配信許可を取ったって」
総裁「オンライン配信はもちろん 観客にはエキシビジョンマッチとして 一部始終を流させてもらったわ」
ロンガー「ええ!?」
総裁「みなさい ついてるコメントも上々よ」
ロンガー「「うねうね動いて避けるのは反則だわw」 「金的下衆ぃw でもスカッとした!」」
ロンガー(本当だ。思えばこうしてコメントを見るのもいつぶりだろうか)
ロンガー「・・・」

〇会場の入り口
総裁「夢中になってるところ悪いけど どうやら集計が終わったようよ」
総裁「覚悟はいい?」
ロンガー「ああ」
総裁「おめでとう ギリギリ10位に滑り込んだみたいね」
ロンガー「おお! おっしゃぁ!」
総裁「ふふ、首の皮一枚つながった今の気分はどうかしら?」
ロンガー「最高だ、と言いたいところだが」
ロンガー「俺のリアクション芸は こんなもんじゃない 来年は1位を取ってみせるさ!」
総裁「それでこそウチの怪人よ」
総裁「でも今は一つだけいいかしら?」
ロンガー「何だ?」
総裁「私は総統よ! 少しは敬いなさい!」
  ──Fin──

コメント

  • 余裕がなければふざけることもできないわけだから、もともと無敵の強さを誇るロンガーならではの生き残り作戦だなあ。戦力に加えてリアクション芸も極めた、ハイブリッド最強怪人の誕生ですね。

  • 怪人でありながら人気商売にも加担させられるという複雑な状況が逆におもしろさでもありますね。総裁にあえて逆らうことなく、新しい扉を開いたところがよかったです。

  • 怪人なら金的OK…斬新な発想に吹きました(笑)
    確かに怪人で変な技持つ奴もいるよな〜、とリアクション芸には納得です(壁抜けできたり、溶けたり、そもそも実体がなかったり…etc)

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