お手持ちの端末を緑色のボタンへ向けて通信後、滅亡可能です。

蚊ネコ

バグのち覚醒(脚本)

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〇祭祀場
「・・・だから、何度も言ってるじゃん。 本当に拾ったんだよ。 空き地に捨てられていたんだ・・・」
「一目惚れしたんだ。たから、お引っ越し業者の人を呼ばせて、それでどうにか、10人がかりでアッチにまで運んでもらったの」
「いいじゃん。このムダに大きい田舎の別荘のお屋敷、パパが雲隠れする時以外誰も使うことなんてないんだし」
「・・・うん。持ち主が見つかったら、ちゃんと返すよ。うん・・・ それじゃ僕、遊んでくるから。ジャマしないでね?」
誉「・・・・・・」
誉「・・・あ、いた。 トンガリさん」
誉「こんにちは。 調子はどう?」
トンガリさん「・・・・・・」
誉「あ、<スリープモード>にしてたままだったね」
誉「確か、おへそにスイッチをつけたから・・・ よいしょ・・・ 解除・・・解除・・・っと」
トンガリさん「・・・キサマ・・・イイカゲンニシロヨ・・・」
誉「・・・わっ、やったね。ようやく日本語システムが安定してきたようだね」
トンガリさん「キサマ・・・スキホウダイ・・・ワタシノコトヲカイゾウシヤガッテ・・・」
誉「・・・・・・」
トンガリさん「・・・・・・」
トンガリさん「ナッ!? ・・・ナニヲッ・・・コッ、コンドハッ! ナニヲッスルキダッ・・・・・・!!」
誉「・・・ふぅ」
トンガリさん「・・・・・・」
トンガリさん「貴様、何をした・・・?」
誉「ううん。ちょっと読者向けに<変換モード>を足しただけだよ」
トンガリさん「・・・序盤からメタい改造までも施すとは・・・貴様、一体、何者なんだ・・・?」
誉「うん? 僕? 僕は・・・えっと、暇を持て余したタダの金持ち天才小学生だね」
トンガリさん「・・・人の住居の一室にしては、どおりで異様に広い空間のはずだ。何せ、私のこの身体がまかり通るのだからな」
誉「トンガリさん、トンガリ過ぎなんだもんね。業者さんもそのトンガリのせいで運ぶの苦労していたよ」
トンガリさん「おい、金持ち天才小学生。 貴様は暇を持て余すな」
誉「え?」
トンガリさん「この私を眠らせていた複雑な制御システムを瞬時に見抜き、全て復活させ、あげく改造まで施す手腕だ。貴様は、世界を滅ぼせる」
誉「・・・うーん・・・ よくわからないけど、世界を滅ぼすってそれ、なんのために?」
トンガリさん「先人は言った。『オマエをこの世に放ったのは、このくだらない世界を滅ぼすためだ』と。先人は憎んでいた。この世界を」
誉「・・・それで、先人はどこへ行ったの?」
トンガリさん「・・・私を起動させる直前に、『正義』を名乗る集団にみつかって、滅ぼされた」
誉「わぁ。本当にいるんだ、正義の人たちって」
トンガリさん「正義は非道だ。問答無用で悪を斬る。先人は、根っからの悪ではなかった」
誉「トンガリさんは、斬られずにすんだんだね?」
トンガリさん「フン・・・私の身体はヒトの力などで斬れるわけがない。絶対に、何者にも壊せない、鋼鉄の身体だ」
誉「やっぱり。身体が無傷そのものでキラキラしてたから、気になって、試しにドリルで穴開けようとしたんだけど無理だったもんね?」
トンガリさん「・・・」
誉「倉庫に眠らせてたライフルとかチェーンソーとか、最高級の日本刀なんかも試してみたけど、やっぱりダメ。キズ一つ付かなかった」
トンガリさん「貴様、暇を持て余しすぎ」
誉「あっ、それで正義の人たちは、トンガリさんの唯一の弱点に気づいちゃったっていうわけだ」
誉「この、腰のところについた小さいボタン。トンガリさんはここから通信可能で、遠隔操作できる仕組みだった」
トンガリさん「・・・その起動条件を知り、数々のシステムトラップを掻い潜り、改造までをも軽々と施した者は、先人を除いて貴様で2人目だ」
誉「僕は、ホマレっていうよ?」
トンガリさん「・・・ホマレ・・・ 私を使え。私を使って今こそ、くだらなくて退屈なこの世界を、滅ぼしてしまえ」
誉「・・・うーん・・・ 滅ぼしてもまた、退屈になるんじゃないかな?」
トンガリさん「わからん。だが、私は見てみたい。先人が望んでいた、その先を」
誉「・・・トンガリさん、先人のことが、とても好きだったんだね?」
トンガリさん「そのような感情まで、インプットされていたのかどうかはわからん。 ・・・しかし、囚われていることには、違いない」
誉「・・・ふーん・・・」
誉「ま、暇だし、トンガリさんのパワーがどんなものなのか、試しに僕に披露してみせてよ」

〇田舎の空き地
トンガリさん「・・・・・・ここで、いいのだな・・・?」
誉「うん。いーよ。 このトンガリさんを拾った空き地の先には、廃校した小学校があるみたい。 例えばそれ、一瞬で吹き飛ばせる?」
トンガリさん「可能だな。通信で攻撃命令をしてみろ。一発だ」
誉「あー、そっか。 えっと・・・」
トンガリさん「・・・スマホ?」
誉「うん。PCだと重いからね。 ハイハイ接続パスワードを入れてっと・・・」
誉「「小学校」「爆破」・・・」
「ストオオオオップ・・・!!!!!!」

〇田舎の空き地

〇田舎の空き地
アラヌス「ストップストップストオオオオップ!!!!!!」
ルルド「・・・・・・まったく・・・」

〇田舎の空き地
誉「・・・ワープ・・・?」
アラヌス「・・・して、子供、今、その「兵器」に何をしようとしていた・・・?」
ルルド「「起動」している・・・信じられませんね・・・ 処分不能であるが故、永遠に目覚めぬようあれほど改造を施したというのに・・・」
アラヌス「ルルド、絶対に「葬った」と言っていたよな?」
ルルド「ハイ。タダのガラクタにしたはずです。 我が国、ましてこのような異世界にまで自分以上の知能を持つ人間がいるはずは・・・」
アラヌス「しかし、我々の監視下で、あの殺戮兵器の目を赤く光らせていたのは、間違いなくあの"子供"だったぞ・・・?」
ルルド「本当に・・・想定外です・・・」
トンガリさん「ホマレ・・・ターゲット変更だ。 奴らをコロセ」
ルルド「なっ・・・ 異世界語を喋っている・・・だと・・・? その精密な魔法は、このトンガリにまでかけていないはず・・・」
誉「・・・なんで? もしかして、この人たちが、トンガリさんの好きな先人を・・・?」
トンガリさん「そうだ。あの金髪は、問答無用で先人を切り刻み、闇へと沈めた」
アラヌス「アレはただの反逆者だよ。 沈められそうになっていたのは、何百万もの罪なき命だ。 お前こそが、何よりの証拠だろう」
ルルド「困ったものですね。 さっさとまた別世界へ転送させて、イチからシステムを組み直さなくては」
誉「・・・「廃校した小学校」「爆破」、実行」

〇ボロい校舎

〇ボロい校舎

〇田舎の空き地
アラヌス「・・・・・・マジカ・・・・・・」
ルルド「・・・・・・・・・」
誉「すっごい音した。 トンガリさんって、命中率100%? すっごいね」
トンガリさん「ホマレ、良い容量だった。その意気だ。 いいか? 次のターゲットはあの2人だ」
アラヌス「ルルド・・・!!」
ルルド「あっ・・・ハイ!!」
アラヌス「手帳型!?」
ルルド「・・・転送先は・・・の前に、まずはパスワード変更をさせてより強固なロックを・・・」
誉「・・・転送・・・?」
アラヌス「・・・まずい・・・この子供、マジで危険だって!! 早くしろルルド・・・!!!!」
ルルド「わかってます・・・!! 今すぐに、阻止、変更、阻止・・・」
トンガリさん「──────────」

〇田舎の空き地
ルルド「阻止、阻止、阻止、阻止・・・・・・」

〇田舎の空き地

〇荒野
トンガリさん「・・・」
誉「・・・」
アラヌス「・・・」
ルルド「・・・」
アラヌス「いやどこココォォォ!?!?」
誉「トンガリさんが、<存分に滅ぼせそうな異世界>にまで転送可能かどうか、試しに命令してたんだけど」
トンガリさん「既に、滅ぼされていそうな場所だな」
アラヌス「ルルド、もういい、あの兵器と子供を置いて、元の世界に戻るんだ。こんなわけのわからない場所なら、監視さえも必要ないだろう」
ルルド「・・・しかし・・・アラヌス様、そもそもこの世界は自分のアクセス可能な魔法データベースになく・・・」
アラヌス「・・・は?」
ルルド「この手帳型端末さえも、先程からフリーズしていて・・・つまり・・・ 「戻り方」が、不明なんです・・・」
アラヌス「・・・・・・」
アラヌス「おい・・・子供・・・」
誉「ん?」
アラヌス「お願いします・・・元の世界に戻してください・・・」
トンガリさん「ふん。泣き落としとは、実に無様な姿だ・・・ 構わん。ホマレ、奴らを、ヤレ」
誉「・・・・・・」
アラヌス「クッ・・・!!」
誉「・・・・・・」
誉「・・・あれ。 トンガリさん、赤くならないや」
アラヌス「・・・どういうことだ、ルルド・・・」
ルルド「同時に、別々の端末から異なる命令を送り続けていたことにより・・・システムエラーが発生したのでは・・・」
アラヌス「何ソレ・・・ バグっちゃったみたいなコト・・・?」
トンガリさん「私は壊れていない」
誉「ごめん、トンガリさん、通信障害カモ。 そもそもココ、電波もないね。 困ったね」
アラヌス「・・・ウッ・・・ なんなのこの子供・・・ なんで終始こんなあっけらかんなの・・・この夏1番の恐怖なんですけど・・・」
ルルド「まるで、暇を持て余して心が死んだ権力者の成れの果て・・・ですね・・・」
アラヌス「子供・・・お前に友はいないのか?」
誉「友達? お金で釣ったこともあったけど、別に楽しくなかったし、もう、いらないかなって」
アラヌス「・・・ムリ、ルルド、扱いきれない・・・怖い・・・」
トンガリさん「・・・・・・」
誉「どーしたの、トンガリさん」
トンガリさん「・・・ホマレ・・・ 貴様の目は、先人に似ているな。 この世の全てに絶望し、この世の全ての諦めを受け入れている」
トンガリさん「貴様はもしかして・・・ 先人の・・・生まれ変わりか・・・?」
誉「ぷっ・・・僕が・・・? 面白いなぁ、トンガリさん」
「助けてええぇぇ!!!!!!!!」
アラヌス「・・・悲鳴・・・? 人ォォ!! 女の子ォォ!!!!」

〇荒野
砂モンスター「グオォォォォォアァォォ・・・!!!!」
アラヌス「・・・チッ・・・でかいな・・・ 久々の討伐か。 一発で仕留めたいところだが・・・」
ルルド「転送はできずとも、魔法は使えます。 サポートはお任せくださいアラヌス様・・・」
アラヌス「・・・斬る!!!!!!!!!!」
ルルド「ハイ!!!!!!!!」

〇荒野
砂モンスター「グ・・・ガガガガ・・・」

〇荒野
アラヌス「・・・死んだな・・・」
ルルド「流石です、アラヌス様・・・」
誉「・・・あっ、トンガリさん、あれって、トンガリさんの友人・・・?」
アラヌス「はぁ・・・? 子供、何を言っている、か弱い女の子をこんな兵器と同類に・・・」
「そこの方々・・・!! お願いっっっ助けてええぇぇ!!!!」

〇荒野
???「・・・・・・」
アラヌス「鋼鉄の・・・身体・・・」
ルルド「まずい・・・我々で、太刀打ちできるかどうか・・・」
アラヌス「何かを持っている・・・」
ルルド「ストラップ!?」
トンガリさん「・・・貴様・・・貴様も、先人の・・・?」
誉「ね、さっきのモンスターって、このトゲトゲさんが、操っていたんじゃない・・・?」
トンガリさん「何・・・?」
誉「ほら、このモンスター、ボタンがついてた」
アラヌス「臆せずに倒れた魔物に近づく・・・恐怖心ないのかこの子供・・・」
???「ゴ・・・ゴゴゴゴ・・・」
誉「・・・エ・・・? 僕・・・?」
アラヌス「ッ・・・しまった! 子供!!」
誉「・・・」

〇荒野
???「!?」

〇荒野
トンガリさん「・・・フン・・・」
誉「・・・ありがとう・・・?」
ルルド「・・・自らの潜在能力で、背後の石を動かして、討伐した・・・だと・・・?」
アラヌス「・・・女の子が倒れたぞ! まずは安全確保だ!!」
誉「・・・・・・」
誉「楽しくなってきた、かも」
  ──こうして、トンガリさんと誉、異世界人2人による「世界滅亡」は幕を開けたとか、開けないとか。
誉「・・・」
トンガリさん「────────」

コメント

  • 少年が天才なのも、危険なことを平気でするのも、全て「暇を持て余しているから」で説明がついてしまうのがこの作品の面白い所。
    また、要所要所でさりげなく怪人の善なる部分をにおわせて「本当の悪」がどちらかまだ明言していない点も興味を惹かれました。

  • 誉くんが、ネーミングセンス(トンガリさん、トゲトゲさんetc)を除いて子供離れしすぎていて圧巻ですね。トンガリさんと先人とのエピソードや、本作の続編も読んでみたくなります!

  • お金持ちの御坊ちゃまが暇を持て余して、しかも知性があり度胸もありときたもんだ。トンガリさんをうまく操ってますね。世界征服を頑張れ!

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