最強戦士 イナネ

敵当人間

読切(脚本)

最強戦士 イナネ

敵当人間

今すぐ読む

最強戦士 イナネ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒
  初めにお伝えしておこう。
  この世界は、地球ではない。
  ”フマノ”と呼ばれる我々に似た人類が、
  悩み、葛藤する様を描いた物語である。

〇密林の中
「チッ──」
ゲニオ「すばしっこいなぁ・・・」
「ゲニオ!」
ゲニオ「ピーストルラの弾数は?」
「残り2発だ・・・」
ゲニオ「援護を頼むよ」
「あ、ゲニオ!」
「待てったら!」

〇密林の中
「・・・」
ゲニオ「ミッション完了だね」
「・・・隣町で失踪してた爺さんらしい」
ゲニオ「そっか・・・」

〇巨大な城門
  ミイト帝国──。

〇西洋の街並み
「最年少カピタンのゲニオ様よ!!」
「美しいわ」
「ほんと、同じフマノとは思えない」
「今日も怪人を一人、救済したそうよ!」
イナネ(くっそー)
イナネ(ゲニオの褒め言葉ばっかりだな)
ゲニオ「どうかしたの?」
イナネ「いや」
ゲニオ「・・・そっか」
イナネ(捻くれるな、俺!)
イナネ(ゲニオの努力は知ってるじゃんか)

〇外国の田舎町
イナネの母「アンタ、ルーチャになるって本気なの!?」
イナネ(幼少期)「うん!」
イナネの母「お母さんと一生離れ離れになるよ?」
イナネ(幼少期)「うん!」
イナネの母「お母さん、怪人になっちゃうよ?」
イナネ(幼少期)「ならないよ」
イナネ(幼少期)「俺のお母さんだもん」
イナネ(幼少期)「怪人なんかにならない!」
イナネの母「そうね」
イナネの母「分かったわ、応援する」
イナネ(幼少期)「やったー!」
ゲニオ(幼少期)「おばさん・・・」
イナネの母「ゲニオ、どうしたの?」
ゲニオ(幼少期)「イナネ、ルーチャになっちゃうの?」
イナネ(幼少期)「そうだぞー!」
イナネ(幼少期)「許可もらったんだ!」
ゲニオ(幼少期)「なろうかな、僕も」
イナネの母「そうね、ゲニオが居れば安心だわ」
イナネの母「二人でルーチャの試験、受けてきなさい」
イナネ(幼少期)「おっけーい」
ゲニオ(幼少期)「はい!」

〇武術の訓練場
「体力テスト、一位 ゲニオ!」
「最下位 イナネ!」

〇ファンタジーの教室
「学力テスト、一位 ゲニオ!」
「最下位 イナネ!」

〇西洋の街並み
イナネ(あれ?)
イナネ(コイツ、努力してたことなんてあったか?)
ゲニオ「何をぼーっとしてるの?」
イナネ「悪い、悪い」

〇荒廃した教会
  あぁ、そうさ・・・
  ゲニオは天才で・・・
  俺が努力しなけりゃ手に入れられないものを
  最も簡単に熟す男だった・・・
  けどなぁ・・・
イナネ「お前なんかに簡単に倒されて良い男じゃなかったんだよ!!」
最強の怪人「・・・」
最強の怪人「言いたいことは、それだけか?」
  ゲニオ・・・
  なんで勝手に、居なくなったんだよ?
イナネ「いや、語り足りねぇな!!」
最強の怪人「・・・」
イナネ「けど、お前に話すのもしゃらくせぇから、」
イナネ「サクッと倒させて貰おうか!!」
  お前を倒せて初めて、
  俺は自信が持てるのに・・・

〇草原
イナネ「ゲニオ」
ゲニオ「うん?」
イナネ「俺は、」
イナネ「最強のルーチャになりたい」
ゲニオ「うん」
イナネ「一生会えなくなった母さんに」
イナネ「少しでも誇りに思って貰えるように」
ゲニオ「うん」
イナネ「だがなぁっ!!」
ゲニオ「うん」
イナネ「俺には最強のライバルが居るんだ」
ゲニオ「誰?」
イナネ「お・ま・え・だ・よ!!!!!」
ゲニオ「ぼ、僕?」
イナネ「そーだよ!!」
ゲニオ「・・・」
イナネ「今日という今日は手加減すんなよ!!」
ゲニオ「て、手加減っていうか・・・」
ゲニオ「親友相手に本気で戦えって方が」
ゲニオ「無理な話じゃない?」
イナネ「いいや!!」
イナネ「出来るさ!!」
イナネ「お前が本気で、俺のことを親友だと思うならな!!」
ゲニオ「えー」
ゲニオ「また今度ね!」
イナネ「お、おい!!」

〇西洋の街並み
ゲニオ(なーんであんなに血気盛んになれるんだろ?)
ゲニオ(普通になんでも卒なく熟すだけで良いじゃん)
トルヴァス「ゲニオ!」
ゲニオ「あ、トルヴァスカピタン」
トルヴァス「お前、今日は非番か?」
ゲニオ「そうです」
トルヴァス「実は、最強と謳われている怪人が」
トルヴァス「この街に近づこうとしている」
ゲニオ「そ、そんな・・・」
トルヴァス「協力してくれないか?」
ゲニオ「・・・」
トルヴァス「頼む」
ゲニオ「分かりました」
トルヴァス「恩に着るよ」
トルヴァス「行こう」
ゲニオ(あーぁ・・・)

〇草原
イナネ「おい!」
イナネ「最年少カピタンってどういうことだよ!?」
ゲニオ「僕だって好きでなった訳じゃないよ」
イナネ「そうじゃねぇだろ!?」
イナネ「なんで一番に俺に報告してくれないんだよ!?」
ゲニオ「・・・」
ゲニオ「嬉しいことじゃないからだよ」
ゲニオ「トルヴァスカピタンの功績なのに・・・」
ゲニオ「カピタンが、怪人から俺を庇って・・・」
イナネ「・・・」
ゲニオ「俺は、倒せなかった・・・」
ゲニオ「カピタンの敵だったのに・・・」
ゲニオ「倒すことが出来なかったんだ」
イナネ「・・・」
イナネ「・・・」
イナネ「俺がっ!!」
イナネ「復讐する!!」
イナネ「トルヴァスカピタンの敵も打つ!!」
ゲニオ「イナネ・・・」
イナネ「だからお前は、カピタンとして堂々としてくれ!!」
ゲニオ「う、うん・・・」

〇荒廃した教会
イナネ「うぉおおおぉぉお!!!!!」
  トルヴァスカピタンも・・・
  ゲニオも・・・
  コイツさえいなければ・・・
最強の怪人「強いじゃないか?」
イナネ「当たり前だろっ!!」
イナネ「俺はっ!!」
イナネ「ルーチャだっ!!!!!」
  勝ってやる・・・
  勝ってみせる・・・
  二人の為にも・・・
最強の怪人「フッ──」
最強の怪人「やはり、敵わんようだ・・・」
最強の怪人「お前には・・・」
イナネ「どういうことだ?」

〇密林の中
トルヴァス「いたぞ!!」
最強の怪人「ゲニオ!?」
トルヴァス「はぁああぁぁっ!!」
最強の怪人「邪魔をしないで」
トルヴァス「ゲニオ、援護しろ!!」
ゲニオ「は、はいっ!!」
最強の怪人「ゲニオ!」
トルヴァス「よくやった!!」
ゲニオ「ト、トルヴァスカピタン・・・」
トルヴァス「なんだ?」
ゲニオ「あの怪人・・・」
ゲニオ「僕のことを知っている様なのですが」
トルヴァス「だからどうした!?」
トルヴァス「怪人は怪人だ!!」
トルヴァス「何のために俺たちが別の地区で働いているのか知らん訳じゃないだろ!?」
ゲニオ「・・・」
最強の怪人「黙れ、小僧」
最強の怪人「正論を振り翳せば正義になれると思ったら・・・」
最強の怪人「大間違いだっ!!」
トルヴァス「くっ・・・」
ゲニオ「だ、大丈夫ですか?」
トルヴァス「逃げろ、ゲニオ・・・」
トルヴァス「お前の名前を言えるのは、新たな怪人の能力かも知れん・・・」
トルヴァス「上に伝えてくれ・・・」
ゲニオ「わ、分かりました・・・」
最強の怪人「何をごちゃごちゃと・・・」
トルヴァス「逃げろ!!」
最強の怪人「あ、ゲニオ!!」
トルヴァス「さぁ、お前の相手は俺だ!!」
最強の怪人「お前・・・よくも・・・」
最強の怪人「ここまで来るのに、どれだけ掛かったと思ってるんだ!?」
最強の怪人「あぁ・・・」
最強の怪人「最近、どんどん力の加減が出来なくなってる・・・」

〇荒廃した教会
イナネ「言えっ!!」
イナネ「どう言う意味だ!!」
最強の怪人「・・・」
最強の怪人「殺せば分かるさ」
最強の怪人「トドメを刺せ・・・」
イナネ(なんだ?この違和感・・・)
最強の怪人「行かぬなら・・・」

〇荒廃した教会
最強の怪人「こちらから行く!!」
イナネ(分からない)
イナネ(この違和感の正体が!!)

〇教会の中
ゲニオ「報告致します!!」
ゲニオ「トルヴァスカピタンが、門前の森にて」
ゲニオ「怪人と戦闘中、負傷しております!!」
ゲニオ「お手隙のカピタンの皆様は援護を宜しくお願いいたします!!」
カピタン②「トルヴァスが!?」
カピタン①「本当か!?」
ゲニオ「はい!!」
カピタン①「案内しろ!!」
ゲニオ「はい!!」

〇密林の中
カピタン①「トルヴァス!!」
カピタン②「しっかりして!!」
ゲニオ(あのトルヴァスカピタンを倒すだなんて・・・)
ゲニオ(しかも、僕の名前を知ってるなんて・・・)
ゲニオ「わわっ!!」
カピタン②「ゲニオ!!」

〇密林の中
最強の怪人「あー、良かった!」
ゲニオ「お、お前は・・・」
最強の怪人「あの青髪小僧、失礼しちゃうわ!」
最強の怪人「ゲニオに私のことを攻撃させるだなんて」
ゲニオ「トルヴァスカピタンのことを、悪く言うな!」
最強の怪人「あら?もしかして、私が誰か分かってないの?」
ゲニオ「なんの話だ?」
最強の怪人「私はね」
カピタン②「敵は、打ったぞ・・・」
ゲニオ「そ、そんな・・・」
カピタン①「無事か?ゲニオ!!」
ゲニオ「は、はい・・・」
カピタン①「疲れたろう、今日は休め・・・」
ゲニオ「こんな、こんな事って・・・」
ゲニオ「おばさん・・・」
ゲニオ「せ、せめて・・・お墓を・・・」
  どうして・・・?
  どうして怪人は、
  倒さなくちゃならないんだ?
ゲニオ「ごめんね、おばさん・・・」
ゲニオ「気付いてあげられなくて、ごめんね・・・」

〇黒
  こんな制度・・・
  無くなってしまうべきだ・・・
  怪人だからって・・・
  何をしたって言うんだ・・・
  強く・・・
  強くならなきゃ・・・
  あの二人を倒せる程度には・・・
  強く・・・

〇西洋の街並み
「街に、街に怪人が出たぞぉおおぉお!!」
最強の怪人「酷い言われようだな・・・」
最強の怪人「おい・・・」
女の子「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
最強の怪人「最強の怪人が来たと言いふらせ・・・」

〇教会の中
カピタン①「夜這いとは、良い趣味してるな・・・」
カピタン②「全くだよ・・・」
カピタン②「どこぞの阿呆が、精神鑑定を無視してたんだろうさ」
カピタン①「まぁ、アディクトの類だろうな・・・」
カピタン②「そうだね」
最強の怪人「・・・」
カピタン①「よぉ」
カピタン①「なんでも最強の怪人を名乗ってるそうだな?」
カピタン②「僕達二人を相手に、果たして勝てるかな?」
最強の怪人「ゲニオとか言うルーチャが居たが・・・」
最強の怪人「アレは完全に消滅させたぞ・・・」
カピタン②「許せない・・・」
カピタン①「待て!!」

〇教会の中
カピタン②「え?」
カピタン②「逃げ、て・・・」
カピタン①「おい、おい!!」
カピタン①「・・・くそっ」
最強の怪人「・・・」

〇教会の中
カピタン①「俺たちが・・・」
カピタン①「俺たちが何をしたって言うんだぁああぁぁ!!」

〇教会の中
カピタン①「くっ・・・」
カピタン①「お、お前・・・」
カピタン①「この剣はっ!!」
最強の怪人「いかにも」
最強の怪人「ゲニオという奴の剣である・・・」
カピタン①「──この野郎ぉおお!!」
最強の怪人「大振りが過ぎるな・・・」
最強の怪人「・・・」
最強の怪人「終わったか・・・」

〇綺麗な教会

〇荒廃した教会
イナネ(分からない、けど!!)
イナネ「うぉおおぉぉおおお!!」
  これで、トドメだッ!!
ゲニオ「ふふ」
ゲニオ「勝てるじゃん」
イナネ「な、なんで・・・」
イナネ「何でだよぉッ!!」
イナネ「なんで、怪人になんか・・・」
ゲニオ「分からない」
ゲニオ「全てが嫌になったんだ・・・」
イナネ「・・・」
ゲニオ「でも、親友に殺されるのは悪くないね・・・」
ゲニオ「ありがとう」
ゲニオ「イナネ」
イナネ「嫌だ、嫌だ・・・」
イナネ「嫌だぁああぁぁッ!!!!!」

〇黒
  どうしてルーチャが、
  自分の街を捨てなければならないのか・・・
  どうして必要以上に
  街の人と関わってはいけないのか・・・
  ようやく理解したよ・・・

〇荒廃した教会
イナネ「そういう、ことだよな?」
イナネ「安心しろ、ゲニオ」
イナネ「俺が、こんな世界・・・」
最強の怪人「ぶっ壊してやる・・・」

コメント

  • ストーリーの濃さに脱帽です。世界観やアイテムの使い方など設定に合うよう上手く工夫されており、大変勉強になりました

  • これは悲しすぎる😭
    悲しき怪人が次の怪人を生み出す負のループ😢
    怪人化してもしっかり人格が残ってるけど、殲滅する他どうしようも無いのが余計悲しい😭刺さりました😭

  • 怪人ものどれから読んでいいか分からず……適当人間さんの作品を初読みさせて頂きました😊
    キャラの気持ちが理解しやすく、面白かったです。最後しんみりしてしまいました。
    友情っていうジャンルが欲しいですね✨何でないんでしょう?

コメントをもっと見る(9件)

成分キーワード

ページTOPへ