呪胎

U太

呪胎(脚本)

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〇綺麗なダイニング
  ううっ・・・ううっ・・・

〇綺麗なダイニング
美沙「ううっ・・・ううっ・・・」
明彦「・・・」
美沙「あら、あなた、お帰りなさい! いつのまにか寝ちゃってた・・・」
明彦「ひどくうなされてたよ」
美沙「なんか、女の人が・・・ 悪い夢でも見てたのかしら?」
明彦「この子がいたずらしたんじゃないかな」
明彦「いい子にしてなきゃダメだぞ」
美沙「フフ、まだ聞こえないわよ〜」
美沙「あ、今日ね、健診に行ってきたの」
明彦「順調かい?」
美沙「性別、教えてもらったよ」
明彦「どっちだった?」
美沙「どっちでしょう?」
明彦「女の子だな」
美沙「よく分かったね!」
明彦「思ったとおりだ 名前も考えてあるんだよ」
美沙「え?」
明彦「雅子ってのはどうだろう?」
美沙「古風な名前ね 私もいろいろ考えてみようかな・・・」
明彦「いや、雅子がいい」
美沙「まあ、無事に生まれて健康なら・・・」
美沙「あと、私に似て美人になるといいな・・・なーんちゃって」
明彦「・・・俺の妹に似るかもな」
美沙「妹? あなたに妹さんなんていたっけ?」
明彦「中学生で死んだんだ 俺が高校の時だけどね」
美沙「そうだったの・・・ どうして教えてくれなかったの?」
明彦「妹、自分で自分の人生、終わらせちゃってさ」
美沙「えっ?」
明彦「ほら、そこのカーテンレールで・・・」

〇綺麗なダイニング
美沙「今、一瞬、何か・・・」
明彦「妹・・・雅子はクラスメートたちにいじめられてたんだ」
美沙「雅子・・・?」
明彦「雅子は俺と3つ違いだから、君と同い歳だ」
明彦「そういえば、君もさくら中学だから知ってるんじゃないかな?」
明彦「両親が離婚する前のウチの苗字はミタライ」
美沙「ミタライ・・・?」
明彦「御手洗と書いてミタライ」
明彦「雅子は便所女、クソビッチってあだ名で、いつもトイレでひどいことをされていた」
明彦「これは雅子の日記だ」
美沙「・・・」
明彦「5月21日、トイレの個室にいたら上からホースの水をかけられた」
美沙「・・・」
明彦「6月2日、椅子に画びょうを置かれた」
美沙「・・・」
明彦「6月13日、虫を食べさせられた」
明彦「7月22日、知らない男の人と無理やり・・・」
美沙「あなた、やめて!」
明彦「何か思い当たることでもあるのかい?」
美沙「そんなまさか・・・どうして・・・」
明彦「そうそう、あの時のみんなはどうしてる?」
明彦「この日記に書いてある・・・今日子って子は?」
明彦「知ってるだろう? 連絡が来てるんじゃないか?」
美沙「今日子は・・・旦那に不倫がばれて離婚して、 今は精神的に病んで実家に引きこもってるって聞いた」
明彦「満里奈は?」
美沙「・・・酔っぱらって帰る途中、階段から転げ落ちて亡くなった」
明彦「佳世は?」
美沙「・・・たしかホスト通いで借金を返せなくなって うわさでは夜のお店で働かせられてるとか」
明彦「みーんな、不幸だなあ」
美沙「全部、あなたが仕組んだの?」
明彦「そんなわけないだろう? そういう運命だったんだよ」
美沙「ウソよ! 私にはどんな復讐するつもり?」
明彦「復讐か・・・ はじめはそのつもりだったんだ」
明彦「だけど今は違う」
美沙「じゃあ、何なの! 何がしたいの!」
美沙「ねえ、言って! 罪なら償うから!」
明彦「安心しろ 君は役目を果たした」
美沙「役目・・・?」
美沙「うっ・・・」
美沙「お腹が・・・お腹が痛い!」
美沙「救急車、お願い・・・早く!」
明彦「・・・」
美沙「どういうこと! どんどんお腹が膨れていく!」
美沙「あなた、見てないで助けて!」
明彦「・・・」
美沙「ダメ・・・何か出てくる! 待って! ああっ! ぐあああああああああ」
明彦「生まれたよ」
明彦「おかえり、雅子」

〇綺麗なダイニング
  (了)

コメント

  • ハッピームードから徐々に不穏な空気が漂い出し、あれよあれよと凄惨な結末に…エグいですね怖いですね…。
    兄が淡々としているのが恐ろしくて…。妹の生前に二人で計画を練っていたのでしょうか、気になりますね…。
    ショートストーリの中で、ゾワッと涼ませていただきました☺️

  • 冒頭の、子供を楽しみにする妊娠中の夫婦の温かな光景から、徐々に疑問や不安などの不協和音が増していく展開に引き込まれました。短編とは思えない怖さのボリュームですね。

  • はじめは赤ちゃんを迎える間近の幸せなご夫婦の話だと思っていたら、赤ちゃんの名前の話がでたあとくらいからどんどん意味深になっていき、中盤であ、もしや、、という思いを読者の頭によぎらせながら、締めでやっぱり!!という展開でスッキリ読み切れました。それにしても怖い。淡々と語るご主人が怖さを増していました涙

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