春は舞台で青く色づく

YO-SUKE

第四幕「桜の見える丘で」(脚本)

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〇桜の見える丘
イチカ「・・・来てくれたんだ」
  イチカの手には卒業証書が
  握りしめられている。
ヒナタ「約束だもん。 誰か来てるかなって思ってたけど・・・ 最初に会うのがイチカだったなんて」
イチカ「・・・夏合宿のときはごめん。 私、作品作りのことばかり考えて、 ヒナタの気持ち、全然考えてなかった」
ヒナタ「ううん。謝るのは私のほう。 私もムキになって大嫌いなんて 言っちゃった。お互い様だよ」
イチカ「だね。ありがとう」
  照れくさそうに笑うイチカとヒナタ。
イチカ「そういえば、ヒナタは進路決まったの?」
ヒナタ「うん。私ね、英文学科のある大学に 行くことになったんだ」
ヒナタ「それで、将来は世界で活躍できる 通訳になりたい」
イチカ「そっか。 ヒナタは英語得意だし、向いてると思う」
ヒナタ「イチカは? 卒業後、どうするの?」
イチカ「私は実家の旅館を継ぐ。まあ最初は 見習いって名の雑用になるかもだけど」
ヒナタ「大変そうだね」
イチカ「ハハハ。ま、体力には自信あるから」
ヒナタ「逆に体力くらいしか、 自慢できるところないもんね」
イチカ「あ! 言ったな~」
ヒナタ「でも・・・良かったな。 またイチカと、こんな風に笑える日が来て」
イチカ「大げさだよ」
ヒナタ「大げさなんかじゃないよ」
  ヒナタは真剣な顔でイチカの正面に立つ。
ヒナタ「私、イチカのことが好き」
イチカ「ヒナタ・・・」
ヒナタ「最後に面と向かって、 きちんと伝えておきたかった」
  心を落ち着けるように、
  大きく息を吐くヒナタ。
ヒナタ「はぁ~。ようやく言えた! スッキリした~!」
イチカ「ありがとう・・・ でも、その気持ちには応えられない」
ヒナタ「・・・うん。わかってる」
イチカ「気持ちは嬉しかった。 でもずっと、応えられないと思ってた。 それだけヒナタが真剣だったから」
ヒナタ「うん。 イチカのそういうとこが好きだったよ」
ヒナタ「・・・今朝ね、家を出るときに、 もう大丈夫、前みたいに笑える・・・」
ヒナタ「そう思ったから、 ここに来ようって思ったんだ」
  目に涙を浮かべるヒナタ。
  それを拭い取って、気持ちを切り替える。
ヒナタ「サワコとハルにはこんなところ、 見せたくないな」
イチカ「・・・うん、そうだね。あっ、 そういえば、二人ともまだ来てないね」
ヒナタ「サワコとハル、 ずっと喧嘩したままだったし、 やっぱりここに来るのは厳しいのかも──」
ハル「イチカ! ヒナタ!」
  丘の下から、ハルが走って来る。
イチカ「ハル!」
ヒナタ「良かった、来てくれた! ありがと!」
ハル「ハァ・・・ハァ・・・ あ、当たり前でしょ! 約束だもん」
ハル「それに私、 どうしても見せたいものがあって」
  ハルはバックから
  大学の合格証書を取り出した。
ハル「私、慶星大学受かった」
ヒナタ「え!? 慶星って超難関校じゃん。 演劇学科があって、 有名な女優もたくさん出てるよね?」
ハル「うん。 だからどうしても合格したかったし、 今日はサワコに見せてやろうって」
イチカ「サワコに・・・?」
ハル「私は結果を出した、大学に行っても 演劇をやる、お前はどうだーって・・・ 最後に言ってやろうかなって」
ヒナタ「・・・そっか」
イチカ「どうした? ヒナタ」
ヒナタ「うん・・・それがね。 実は、サワコ、大学受からなかったんだ」
ハル「・・・え? 嘘でしょ?」
ヒナタ「ハルに負けたくないって。 演劇やっている時と同じか、 それ以上に真剣に、毎日頑張ってたのに」
ハル「じゃあなんで・・・」
ヒナタ「サワコ、ああいうキャラだけど、 家族のことでずっと悩んでいて・・・」
ヒナタ「ほら、サワコって 優秀なお兄さんがいるでしょ?」
ハル「そういえば、 弁護士をしてるとか言ってたかも」
ヒナタ「うん。親はいつもお兄さんのこと ばかりで、自分は愛されてないって 笑いながら言ってたけど・・・」
ヒナタ「サワコ、ほんとはずっと 苦しかったんだと思う・・・」
  言葉を詰まらせて涙を浮かべるヒナタ。
ヒナタ「それでもいつも明るくて、 最後は勉強だってすごく頑張ってたのに」
ハル「私たち・・・仲間でしょ? 相談してくれたっていいじゃん」
  落ち込んで俯くヒナタとイチカ。
イチカ「きっと、私たちには気を遣われたく なかったんじゃないかな・・・」
ハル「・・・・・・」
  ハルはスマホを取り出して電話をかける。
ヒナタ「ハル・・・?」
ハル「色々むかつくし、許せない。 はっきりとサワコに文句言ってやる」
イチカ「ちょっとハル──」
ハル「サワコ! 電話に出ろ!」
ハル「・・・なんでよ。なんで電話出ないの」
イチカ「もういいよ、ハル」
ハル「よくない! 四人集まらなかったら意味なんてない!」
イチカ「サワコの気持ちも考えなよ!」
ヒナタ「そうだよ! 四人で集まるって 約束は果たせなかったけど・・・ 三人は集まれたんだから!」
ハル「私は・・・信じてる。サワコは来るって」
ヒナタ「ちょ、ちょっと待って! ハル!」
  ハルは懸命に走り続ける。
ハル(サワコ・・・! どうして・・・ 何も言ってくれなかったの)
ハル「ハァ、ハァ・・・」
ハル(私たち・・・友達でしょ!)
ハル「も、もうダメ・・・限界・・・」
  息切れして立ち止まってしまうハル。
  後を追って来たイチカとヒナタが
  ハルに追いついた。
ヒナタ「ハァ・・・ハア・・・。 ハル、もう諦めようよ。 サワコはきっと──」
サワコ「みんなーーー!」
ハル「え!? 今の声──」

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コメント

  • いつも他の作品も見させていただいております!
    YO-SUKE様はやっぱり流石です!
    次の作品も出す予定でしたら期待してます!

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