幸せのたまごサンド

紗卦冬葉(さけとば)

おふくろの味(脚本)

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〇見晴らしのいい公園
  うぅ・・・ぐすっ・・・ひっく・・・
  公園で、誰かの泣き声がする
???「ぐすっ・・・うぇぇん・・・」
  どうしたの?
???「お家どこぉ・・・? お腹減ったぁ・・・」
  そっか・・・
  迷子になっちゃったんだ・・・
  コレ、おすそ分け!
  『腹が減っては戦ができぬ』!
???「・・・・・・何それ?」
  家訓だよ!
???「いや、そうじゃなくて・・・ 手に持ってるソレ」
  ──ああ、これはね?
???「おふくろ謹製、『たまごサンド』!」
???「一緒に食べようぜ! 食べたらお前の家、大捜索だ!」
???「・・・」
???「ありがとう、ハッシー!!」
???「いや待て、なんで俺のアダ名・・・?」
  ハッシー!ハッシー!
  いい加減起きろ!遅刻したいのか!?

〇男の子の一人部屋
御袋 風海(おふくろ かざみ)「起きろ、ハッシー! 朝飯出来てるぞ!!」
  ガバッ
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「当然のように ヒトの部屋入ってんじゃねーよ!!」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「大丈夫、セキュリティ(お母さん)は 通行許可出したから・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「『本人のセキュリティ』を通せや!!」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「・・・ハッシー、おはよ」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「ハイハイ、おはよーさん」

〇おしゃれなリビングダイニング
大黒の母「おはよーさん!」
大黒の母「──さしずめ、 眠り姫のお目覚めってトコかしら?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「・・・おふくろ、はっ倒すぞ?」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「えっ、朝から・・・?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「オメーじゃねェんだわ! 紛らわしい苗字だなホントよォ!!」
大黒の母「アッハッハ! カザミ君ホント面白〜い!」
大黒の母「──ウチの家はいつでも大歓迎だからね?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「もう諦めよう・・・ 朝から疲れる・・・」
大黒の母「はいよ どうぞ」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「いただきます」
大黒の母「カザミ君はもう朝食べたんだっけ。 この子食べてる間コーヒーとか飲むかい?」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「いただきます、ありがとうございます」

〇新興住宅
大黒の母「2人とも、行ってらっしゃい」
  ”おーう”
  ”行ってきます!”
御袋 風海(おふくろ かざみ)「朝ごはん、美味しそうだったね」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「何だか年々、 おふくろの凝り性が酷くなってる気がすンだ」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「特に弁当のレパートリーとか な〜んか増えてるっていうか・・・」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「・・・喜んで、貰いたいんだね」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「ん〜、そうなのかね」
  俺、大黒 ハシラと
  こいつ、御袋 風海は
  友人関係だ。
  昔、迷子になったコイツの家を探したら
  自宅から徒歩2分の近所にあって・・・
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)(そこからもう、 10年の付き合いかぁ・・・)

〇学校の屋上
  昼休み
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「最近、ミックスサンドの頻度が・・・ 何かこう・・・増えてるような・・・」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「・・・何かご不満でも? ハッシー、パン派でしょ?(もぐもぐ)」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「そうだけどよォ・・・バスケ(部活)の 消費カロリーに見合うのかコレ?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「野菜ばっかりだしよォ」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「・・・」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「季節の変わり目だし、大会近づいてるし、 風邪、ひいて欲しくないんじゃない?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「──────ん?(チラッ)」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「おまっ・・・ガッツリ肉じゃねーか!!」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「何か問題でも?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「よこせ」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「は?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「朝のコーヒー代として、肉よこしな」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「おまっ・・・イッキ食いは太るぞ!」
  これが俺たちの日常
  高校生活最後の年の、日常

〇銀杏並木道
  11月30日
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「インハイまであと1ヶ月かァ・・・」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「大学のスポーツ推薦来てるんでしょ? どこ受けるつもり?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「ん〜〜・・・・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「まだ、分からねェな・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「インハイ辿り着いたのも キセキみてーなもんだし・・・」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「・・・結構、活躍してると思うけど?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「上には上がいるんだって 俺より上手い奴なんてザラにいるだろ」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「正直、こんなオレが推薦受けて良いのか? ──って『不安』は・・・、正直、ある」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「『不安』・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「まっ、なるようになる」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「オマエの方は 料理系の専門受けるって話だよな」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「応援してるわ、マジで 筆記試験の方も頑張れよ」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「・・・うん」
  それからしばらく部活が忙しくなって
  朝練や昼練の回数も増えたから
  しばらくアイツとは会わなくなった

〇体育館の中
  練習に明け暮れて、明け暮れて・・・
  
  アイツの事情なんか考えてる余裕なんか
  
  ──なかった。
  そんな俺のモチベーションを
  
  維持してくれたのは・・・
  
  部活の合間に食べるサンドイッチだった。
  カツサンドか・・・
  肉だから今日はラッキーだな
  3日連続ミックスサンド・・・
  野菜ばっかりじゃねーか・・・
  そして・・・

〇おしゃれなリビングダイニング
  インハイ当日、朝
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「緊張してあんま寝れなかったな・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「おふくろ、おはよーさん」
「おはよう、今日は珍しく早起きだね?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「あー・・・ やっぱ緊張してんのかね、俺・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「──って」
「はい、おふくろ謹製『たまごサンド』」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「・・・・・・」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「家訓、なんでしょ?」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「──ああ、なんだか」
  『不安』なんて、吹っ飛んじまったな

〇見晴らしのいい公園
  時が経ち、卒業式後
御袋 風海(おふくろ かざみ)「そっちは大学生か・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「オメーは専門学生か・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「俺の弁当、毎回作ってくれてたんだってな」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「おかげでインハイ、いい成績残せたわ」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「本当に助けてもらったよ・・・ありがとう」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「・・・」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「弁当の批評出来なくなるの、 ちょびっと寂しいな・・・」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「どうせ家は近いんだし 週末くらいは遊べるでしょ」
御袋 風海(おふくろ かざみ)「それに弁当くらい、毎日でも作れるし!」
大黒 ハシラ(おおぐろ はしら)「・・・なんだか、 本当に俺のおふくろになったみたいだな」
「アハハ! 胃袋鷲掴みにされた分、説得力あるねェ!」
「・・・上手い料理、期待してるわ」
「・・・うん、もっと上手くなるよ」
  おふくろ謹製、『たまごサンド』
  きれいに半分に分けて、
  
  2人はその味を、
  
  思い出の公園で噛み締めたのだった。

コメント

  • さけとばさん特有の『』遣いはこの時から健在だったんですね!!!!この独特の『味』が大好きです🙆‍♂️

    食事のシーンって食べ方でキャラクターの個性がみえたり
    食事相手との人間関係がみえたりと
    1番キャラクターが生きていることを実感させてくれる感じがして
    とても好きです

    おふくろの味、というタイトルからも2人の関係性が伺えて素敵な作品でした🙏

  • うわー、ステキ!!
    2人の関係がベタベタなものでなく、けどちゃんと気持ちは繋がっている、とっても魅力的な関係性ですね!たまごサンドが食べたくなります、作中のは「幸せの味」なんでしょうね!

  • 尊い😭幼なじみ高校生っていいなあ😭さわやかすぎて、浄化されそうです😭素敵なお話を作ってくださり、ありがとうございます!😉✨

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