幼なじみじゃイヤだよ

上坂凛

読切(脚本)

幼なじみじゃイヤだよ

上坂凛

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〇教室
  高校の休み時間──。
  私は友達の楓と他愛のない話をしていた。
楓「そういえば『ナツ恋』の新刊読んだ!?」
陽菜「うん! 今回も伊織くんめちゃくちゃカッコよかったよね~!」
陽菜「やっぱり、壁ドンとかバックハグって憧れちゃうなあ・・・」
悠真「ハッ、何言ってんだよ」
陽菜「えっ!?」
  突然、近くにいた悠真が話に割り込んできた。
悠真「そんなことする奴いるわけねーだろ。 いつまで夢見てんだよ」
悠真「そんなんだから彼氏いねんじゃねーの?」
陽菜「うるさいな・・・! 悠真だって彼女いないくせに!」
悠真「俺はバスケで忙しいからいいんだよ」
  悠真はニヒルに笑い、教室を出ていった。
陽菜「もう! なんなのあいつ・・・!」
楓「陽菜と悠真くんって幼なじみなんだよね?」
楓「悠真くんバスケ上手くてカッコいいし、うらやましいな~」
陽菜「いやでも、あいつ性格悪いし最悪だよ?」
楓「陽菜は好きなんでしょ?」
陽菜「えっ!? ち、違うよ!」
楓「フフフッ、分かりやすい~」
楓「悠真くんも陽菜のこと好きだと思うけどなー」
陽菜「そんなことないって!」
  悠真とは家が隣り同士で、物心ついた時から一緒にいた。
陽菜(だからたぶん異性として見られてないんだろうなぁ・・・)

〇教室
  その日の午後──。
  授業を受けていると、なんだか頭が痛くなってきてしまった。
陽菜(どうしよう・・・ 早退したいけど、今日委員会だったっけ・・・)
陽菜(あと少し頑張らなきゃ・・・)
  そんなことを考えている間に授業が終わり、休み時間になった。
悠真「陽菜、ちょっと来い」
陽菜「え? 何!?」
  悠真に腕をつかまれ、教室を出る。

〇学校の廊下
  ひとけのない廊下に着いて、悠真は手を放した。
陽菜(急になんだろう・・・)
悠真「お前、体調悪いんだったら早退しろよ」
陽菜「え!? なんで分かったの・・・!?」
悠真「なんでって、分かるに決まってんだろ 10年以上一緒にいんだから」
陽菜(──そうだ、悠真はいつも気づいてくれた)
陽菜(小さい頃から私が落ち込んだり、ケガした時に助けてくれて。ヒーローみたいで)
陽菜(だから私は悠真のことが・・・)
悠真「授業終わったらメシ作りに行ってやるから、家で大人しくしとけよ」
  私の両親は共働きで帰りが遅くなることが多くて、料理の得意な悠真が作りに来てくれることがあった。
陽菜「え、そんな悪いよ。バスケ部の練習あるでしょ?」
悠真「バカ、お前の方が大切に決まってんだろ」
陽菜「えっ・・・!?」
悠真「・・・もう妹っつーか、家族みてえなもんだし。不本意だけどな」
陽菜(妹・・・)
陽菜(なんだ・・・ やっぱり異性として見られてないんだ・・・)
陽菜(期待した私がバカだった・・・)
悠真「陽菜、聞いてんのか?」
陽菜「う、うん・・・ ありがとう。じゃあ早退するね」

〇女の子の一人部屋
  翌日、体調はすっかり良くなったけど、気分は落ち込んだままだった。
陽菜(やっぱり、私のことなんとも思ってないってことだよね・・・)
陽菜(もしかしたら違うかもしれないけど、 告白して、今の関係が壊れてしまったら──)
陽菜(そう考えると怖くて、告白なんてできないよ・・・)
陽菜「はぁ・・・」
  ため息をついた時、テーブルの上に置いていたDVDが目に入った。
陽菜(そういえば、楓に葉川さんのライブDVD借りたんだった)
陽菜(気分転換に観ようかな)
  1ヶ月前から『ナツ恋』のアニメが始まり、私は伊織くんを演じている声優の葉川樹さんにすっかりハマっていた。
陽菜(アーティストとしても活動してるなんて、すごいなぁ)
葉川 樹(はがわ いつき)「感謝の気持ちを込めて歌います。 『Promise』」
陽菜「わぁ、やっぱりカッコいい・・・!」
陽菜「それに優しい声で癒されるなぁ」
  その時、部屋の扉が勢いよく開いた。
悠真「何騒いでんだ? 静かにしろよ」
陽菜(えっ、なんで来るの・・・ 気まずいのに・・・)
悠真「なんだこいつ」
  悠真が不思議そうにテレビ画面を見つめる。
陽菜「こいつじゃなくて、声優の葉川さんだよ!」
悠真「はぁ? なんで観てんだよ」
陽菜「なんでって、カッコいいから」
陽菜「声が素敵だし、歌もすごく上手くて ほら、ダンスもカッコいいでしょ!?」
陽菜「楓も葉川さんのファンでね、今度一緒にライブに行きたいねって話してて──」
  プチッ、という音がしたかと思うと、テレビの電源が消えて画面が真っ暗になった。
陽菜「ちょっと何するの!?」
悠真「さっきから葉川、葉川ってうるせーんだよ」
悠真「お前は俺のことだけ見てればいいんだよ!」
陽菜「えっ・・・!? それって──」
  気恥ずかしそうにそっぽを向いた悠真の頬が、赤く染まっていた。
陽菜「うそ・・・ 悠真は私のことなんとも思ってないんじゃ・・・」
  気がつけば、私は悠真に抱きしめられていた。
  悠真のぬくもりに、ドキドキして体が熱くなっていく。
悠真「・・・なんとも思ってねえわけねーだろ」
悠真「ずっと・・・お前のことが好きだった」
悠真「だから他の男の話すんじゃねーよ」
陽菜「ほ、ホントに・・・?」
悠真「好きだっつってんだろ」
  ようやく本当のことだと実感して、涙があふれてくる。
悠真「陽菜!? 泣くなよ」
陽菜「だ、だって・・・悠真は私のこと好きじゃないって思ってたから・・・!」
悠真「そんな、なかなか素直に言えるもんじゃねーだろ・・・悪かったよ」
陽菜「うん・・・」
悠真「・・・そんで、返事は?」
陽菜「あ、えっと・・・」
陽菜「私も悠真のことが大好き」
悠真「ようやく伝わったな」
  悠真は優しく微笑むと、 顔を近づけてきて──。
陽菜「ちょ、ちょっと待って! 恥ずかしいよ・・・!」
悠真「分かった。今日はしねーよ」
悠真「けど早く慣れろよ。 これから何回もすんだからな」
陽菜「もう・・・! バカ・・・!」

コメント

  • こういう幼馴染みの話ってとっても憧れます。よく知ってるからこそ照れくさいとか、なかなか言い出せなくてモヤモヤしてる感じからのドキドキの神展開!彼の言葉からもこれからはリードするっていう覚悟が伝わってきてかなり好きです。

  • 楽しく読ませてもらいました!こういう幼馴染の関係って憧れますね!いつの間にかお互い意識しだして、幼馴染が恋人にかわる…まったくそういう幼馴染がいなかったので羨ましいです。

  • 彼の素直なようで素直でない態度が可愛らしかったです、最後は男らしく気持ちを伝えたシーン、きゅんとなりました。幼なじみとの恋愛ってなんか素敵ですね。

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