2人の約束、2つの約束(脚本)
〇桜並木
しずく「私、アイドルデビューが決まったの」
カイト「本当に?」
しずく「うん」
カイト「小さい頃からの夢が叶ったんだ。 おめでとう!」
しずく「ありがとう」
しずく「でも、これからはこうして普通に会ったり連絡をとったりはできないと思う」
カイト「まあ、そうだろうね」
しずく「それに、小さな事務所だし、正直ファンの人がちゃんとついてくれるかとか不安もあるの」
カイト「・・・」
カイト「大丈夫、心配いらない」
しずく「?」
カイト「俺がしずくのファンになる。 いや、俺がしずくの一番のファンになる!」
カイト「約束するよ」
しずく「カイト君、ありがとう」
〇ナイトクラブ
しずくはアイドルデビューを果たした。
そして、カイトは・・・
カイト「しずくちゃん、今日もかわいいよ!」
カイト「しずくちゃん、神! 女神! 天使!」
カイト「しずくちゃん、最高!」
カイトはアイドル・しずくのファンになっていた。
しずくのライブやイベントには欠かさず参加した。
CDやグッズも大量に購入した。
カイト「しずくちゃ~ん!」
〇大衆居酒屋
田中「今日のしずくちゃんもかわいかったなあ」
カイト「本当、まさに天使ですよね」
鈴木「新曲もよかったなあ」
カイト「俺、毎日100回は聴いてますよ」
カイトには、同じしずくファンの仲間もできていた。
少しずつだか、しずくのファンは確実に増えていった。
しずくはアイドルとして充実した毎日を送っていた。
カイトらしずくのファンも幸せなアイドルオタク生活を送っていた。
しかし、それは突然知らされた・・・
〇テーブル席
しずく引退
しずくのファンサイトで、突然しずくの引退が発表された。
カイト「しずくちゃんが引退!?」
理由は「体調不良のため」とのことだった。
〇シンプルな一人暮らしの部屋
その日の夜、カイトのもとへしずくから連絡があった。
しずく「カイト君・・・」
カイト「しずく!?」
カイト「大丈夫なのか? 体調不良ってそんなにひどいのか?」
しずく「検査で病気が発見されて・・・」
カイト「病気!?」
しずく「でも、きちんと休めば普通に生活するには問題なく治るって」
カイト「そうか」
しずく「ただ、アイドルを続けていくのは難しいだろうって・・・」
しずく「それで、事務所と相談して、次のライブを最後に引退することに決めたの」
カイト「・・・」
しずく「いっぱい応援してくれたのにごめんね・・・」
しずく「それじゃあ・・・」
カイト「あっ!」
カイト「しずく、泣いてたな」
カイト「なのに何も言ってあげられなかった・・・」
カイト「俺はどうすれば・・・」
カイト「俺にできることは・・・」
カイト「俺はしずくの一番のファンになると約束した」
カイト「俺のやるべきことは・・・最後までその約束を果たすことだ!」
〇テーブル席
田中「しずくちゃんが引退・・・」
鈴木「しずくちゃん、これからというときに・・・」
カイト「田中さん! 鈴木さん!」
田中「カイト君?」
鈴木「どうしました?」
カイト「しずくちゃんの最後のライブです」
カイト「俺たちファン全員でしずくちゃんを応援して、最高のライブにしましょう!」
田中「カイト君の言う通りだ。ファン全員でしずくちゃんのために声援を送ろう!」
鈴木「いつも元気をもらっていたしずくちゃんに、恩返しをしましょう!」
カイト「はい!」
〇コンサート会場
そして、しずくの最後のライブが始まる。
歓声と涙に包まれたステージは異様な盛り上がりを見せていた。
ファンから次々としずくにメッセージが送られる。
田中「しずくちゃん、ありがとう! しずくちゃんの笑顔が俺の生きがいだった!」
鈴木「しずくちゃんは僕の太陽だ! 本当にありがとう!」
カイト(しずくちゃん、こんなにも多くのファンに愛されていたんだ)
カイト(しずくちゃん、君は最高のアイドルだったよ。本当にありがとう)
カイト(大丈夫。引退しても心配しなくていい。 俺はこれからも・・・)
カイト「俺はお前の一番のファンだ!」
カイト「俺はお前のことが好きだ! ずっと好きだった! これからもずっと好きだ!」
カイト「俺はお前のことを、これからもずっと守り続ける!」
カイト「約束する!」
しずく「・・・」
そして、ライブはフィナーレを迎える・・・
しずく「みんな、ありがとう!」
しずく「私、みんなに支えられてすごく幸せだった。 本当にありがとう!」
〇桜並木
数年後・・・
カイト「桜がきれいだな」
カイト「そういえば、しずくからアイドルデビューの話を聞いたのもここだった」
カイト「そのとき、しずくの一番のファンになるって約束して・・・」
カイト「すべてはここからか。懐かしいなあ」
カイト「・・・しずくは今、どこで何をしているんだろう」
しずく「カイト君?」
カイト「しずく?」
カイト「しずく、体はもう大丈夫なのか?」
しずく「うん。 まだリハビリはしてるけど、もう大丈夫」
カイト「そうか、よかった」
しずく「ごめんね、連絡しないで」
しずくがちらっとカイトの左手を見る。
しずく「その・・・カイト君は結婚してるの?」
カイト「は? してないけど・・・」
しずく「付き合ってる人は?」
カイト「別にいないけど・・・」
しずく「そっか」
しずく「カイト君、私との約束覚えてる?」
カイト「約束? ああ、しずくの一番のファンになるってやつだろ。もちろん」
カイト「約束は守ったつもりだよ。俺はしずくの一番のファンになって、しずくを全力で応援した」
しずく「みんなの声援、本当にうれしかった」
しずく「・・・もうひとつの約束は覚えてる?」
カイト「もうひとつの約束?」
しずく「・・・」
しずく「俺はお前のことが好きだ!」
しずく「俺はお前のことをこれからも守り続ける! 約束する!」
カイト「そ、それは・・・お前、聞こえていたのか?」
しずく「もちろん、はっきり聞こえたわよ」
しずく「すごくうれしかった」
しずく「思い出した?」
カイト「うん、はっきり覚えてる」
しずく「じゃあ・・・」
しずく「じゃあ、あのときの約束、今から守ってもらおうかな?」
カイト「えっ?」
しずく「だめ?」
カイト「・・・」
カイト「もちろん、約束は必ず守る」
カイト「俺はお前が好きだ。 これまでも、これからも、ずっと」
カイト「俺がずっとお前を守り続ける」
しずく「ありがとう・・・」
オー・ヘンリーの短編のようで心にしみますね‼
お互いの思いやりと愛情が感じられて、ジーンとしました😭
結構ピュアな主人公が多いですよね! 作者の温かい人柄が偲ばれます🙇♂️
カイトくんのしずくちゃんへの一途な思いにキュンとしました。
それにあくまでもファンとしてしずくちゃんの夢を応援する姿がカッコイイ!
だからこそ思いが通じて良かった……(涙
これからは夫として妻しずくちゃんの一番のファンですね。
2人の幸せな姿しか見えません。
カイトくんの言葉、ちゃんとしずくちゃんに届いていたんですね。それを一語一句覚えているしずくちゃん、きっとカイトくんの言葉は何より特別だったんだろうなぁ。
病気を乗り越えて、これから二人の恋が始まる……素敵な予感に、胸がじんわり温かくなりました。
素敵なお話をありがとうございました☺