メガネの奥の素顔

桜餅

読切(脚本)

メガネの奥の素顔

桜餅

今すぐ読む

メガネの奥の素顔
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇教室
  放課後
  日直の仕事を終わらせて教室に戻ると、机に伏せる黒い影が一つ
  夕日の差し込める淡いオレンジ色の教室で気持ちよさそうに寝息を立てているのは、
  触り心地の良さそうな髪の毛とメガネが特徴的な同級生の羽鳥啓吾だった。
  (寝てる・・・)
  なるべく音を立てないようにそっと近づき、顔を覗く
  (綺麗な顔だなぁ・・・)
  同級生の間でも綺麗な顔立ちをしていることで、女子の間では少し話題になっていた。
  比較的笑顔の多い彼が女子に告白されていることを目撃することも、あまり珍しい光景では無かった。
  友達もしっかり居るみたいだし、部活に所属しているかはわからないが、
  なぜこんな時間にここで寝ているのかは皆目検討もつかない。
  ──カチャ
  ゴソゴソと目の前の彼が少し動いたと思うと、腕にメガネが当たり音を立てた。
  (・・・そう言えば、羽鳥くんがメガネを取った顔、見たことないな)
  それは、ほんの少しの好奇心からだった。
  体育など、運動をする時もメガネのまま動く彼のメガネを取った姿を、私は今まで一度も見たことがなかった。
  (少しだけ・・・)
  好奇心に勝てなくなった私は、少しだけだと自分に言い聞かせながら目の前の彼に手を伸ばした。
  カチャリと小さく音を立てながら、そっとメガネを取った。
  (わ・・・)
  メガネという装飾品を外してもなお崩れないその端正な顔立ちに、思わず見惚れてしまう。
  (・・・綺麗)
  その一言しか出てこなかった。
  しばらくの間その顔をじっと眺めていたが、どうも起きそうにない。
  手に持ったメガネを素直にそのまま返すのはなんとなく勿体ない気がして、
  すやすやと起きる様子のない彼をそのままに、私は手に持っていたメガネをそのまま掛けた。
  (おぉー・・・視界がぼやける)
  慣れないメガネの感覚に目を細めながらそのまま辺りを見渡していると
羽鳥慎吾「・・・何してるの?」
  いつの間に起きたのか、彼が目を細めて微笑みかけながらこちらを見ていた。
  あ・・・いや、あの、これは・・・
  驚きと焦りで口篭りながらそう言葉を零すと、
  ──ガタ
  いきなり音を立てながら椅子から立ち上がったと思ったら、顔をずいっと近づけて、言った。
羽鳥慎吾「人のメガネ、勝手に取ったらダメだよ」
  (ち、近い!)
  優しい声でそう言う彼の顔の近さに思わず顔が赤くなる。
  ご、ごめん・・・!つい・・・
  声が裏返りながらもなんとかそう言うと、
羽鳥慎吾「いいよ、別に。怒ってないから」
  いつも見るような笑顔を浮かべ、私の頭を撫でながらそう言った。
  (え・・・え?!)
  何が起こっているのかイマイチ理解出来ずに、顔は赤くなるばかり。
羽鳥慎吾「じゃあ、俺もう帰るから、気をつけてね」
  あ、うん。羽鳥くんも気をつけてね。
羽鳥慎吾「ありがとう」
  メガネを掛けてそれだけ言うと、彼は教室の扉へ向かって歩いていった。
羽鳥慎吾「あ、あとそれと」
  教室を出る直前、思い出したようにこちらを振り向く彼と目が合った。
羽鳥慎吾「俺がメガネ外したことは、内緒ね」
  少し照れくさそうに笑って人差し指を立てるその姿に、思わず胸が高鳴った。
羽鳥慎吾「じゃあね!」
  最後に一言、手を振りながら元気な笑顔でそう言って廊下を走る姿を、私はただ眺めているだけだった。
  (なんだったんだ、あれは・・・)

コメント

  • メガネを外してみたいという思い、そしてメガネを外したことの秘密の共有、主人公のドキドキ感が読んでいて伝わってきました。いやらしい要素が一切ないはずなのに、赤面してしまいそうです。。。

  • メガネをかけてる人の素顔って、ちょっと興味ありますよね。
    イケメンはメガネを外してもイケメンだったという。笑
    でも、ちょっと距離が近づいたかな?と思いました。

  • 普段から眼鏡をしている人の眼鏡を外した顔はあまり見る機会は少ないですね。眼鏡をしていようがいまいがイケメンはイケメンのままなのね。

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ