僕だけが知っている"カノジョ"

たぬきno盆踊り

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〇黒背景
  私には長所が無い
  だから・・・XXXでなきゃダメなんだ

〇備品倉庫
  とあるメーカーの倉庫
  一人の女性が荷物を運び続けている
中田 真子(重っ・・・ これ、あと何個あるの!?)
藤伊 誠司「お疲れ、真子ちゃん! 頑張ってるね。大丈夫?」
中田 真子「誠司くん、お疲れ様です。 今日、仕入れが多いようで」
藤伊 誠司「実は俺、腱鞘炎で荷物持てないんだ。 イタタ・・・」
中田 真子「そうなんですか!? 確か、試験近いんですよね」
中田 真子「私が何とかするので誠司くんは確認作業など手に負担がない作業をしてください」
藤伊 誠司「ありがとう、助かるよ!」
中田 真子(安請け合いしちゃったなぁ・・・ でも、頑張らないと!)
  私のバイト先は、噂だと窓際支店らしい。
  それ故なのか、全体の士気が低く不真面目なのが「普通」だ。
  とはいえ、自分がさぼっていい理由にはならない。
  お給料を貰っている身だし、誠司くんに関しては徳を積んだと思おう。
中田 真子(私にはそれくらいしか、とりえが無いから・・・)

〇事務所
バイト女子1「全員参加のミーティングとかうざっ! 早く終わらせろよ」
社員「えーっと、今日から新人さんが入ります。 名前は・・・ごめん、なんだっけ?」
一条 焔「一条 焔(いちじょう ほむら)です」
一条 焔「よろしくお願いします」
バイト女子2「なかなかのイケメンじゃん!」
バイト女子1「仕事のこと、教えてあげるね~」
中田 真子(確かにカッコイイな。 ちょっと怖そうだけど・・・)
中田 真子(私とは世界が違うって感じだ)

〇備品倉庫
  一条が来てから数日後

〇備品倉庫
中田 真子「今日の荷物、少ないな。 前のシフトの人がさぼってて大体多く残ってるのに」
一条 焔「お疲れ様です、真子さん」
中田 真子「一条さん、お疲れ様です。 汗びっしょりですけど」
一条 焔「荷物を一心に運んでいました。 これくらいやっておけば次の人の負担が無くなるかなと思って」
一条 焔「あ、逆に数少ないと時間浮いて困るとかありませんか?」
中田 真子「とんでもない! むしろ、助かります」
一条 焔「良かった。 真子さん、いつも大変そうだったので、力になれたなら光栄です」
中田 真子(そういえば、実際に手伝ってくれるのって一条さんが初めてかも)
一条 焔「真子さん、それなりに仕事して感じたんですけど・・・ 抱え込みすぎじゃないですか?」
一条 焔「仕事してない方の分は、放置か上に報告で良いのでは?」
中田 真子「・・・私なんかができることってこれくらいなので」
一条 焔「一番大切にすべきは真子さん自身です。 貴方が何もかも背負う必要はないと思いますよ」
中田 真子「そ、そうですよね・・・考えてみます」
中田 真子(一条さん、いい人だな。 初対面時で怖そうなんて思って、すみません)

〇備品倉庫
  更に数日後
中田 真子(誠司くん、同じシフトのはずなのに見当たらない)
中田 真子(手の調子は相変わらずらしいから、私が頑張らないといけないんだけどね)
  ──貴方が何もかも背負う必要はないと思いますよ
中田 真子(・・・仕方ないよ)
「──・・・」
中田 真子(ん? 話し声が聞える。 あれ、この声って・・・)
バイト女子1「ここ、空調きいててサイコー! 今日もたっぷりダベろうぜ」
バイト女子2「どうせ馬鹿マジメな真子が全部やってくれるっしょ」
藤伊 誠司「お前ら、そんな言い方はないだろ!」
中田 真子(誠司くん、いつもサボってる人たちに注意してくれてたんだ)
藤伊 誠司「ああいう奴は「私良いことしてる感」出して自己満足させるようにしろよ」
藤伊 誠司「逆ギレされて社員に報告されたら面倒だろ?」
バイト女子1「アハハハ、誠司って本当悪党! 将来、女を貢がせてそう!」
藤伊 誠司「俺は賢いんだよ」
中田 真子「・・・」
一条 焔「相変わらずくだらねえ先輩方だな」
一条 焔「他も大概だが、お前らは特に酷いよ」
藤伊 誠司「な、なんだ一条かよ。 お前もサボりにきたのか?」
一条 焔「給料分働くにきまってるだろ、一緒にするな」
バイト女子2「い、一条くん、いつもと口調違くない?」
一条 焔「そんなこと、どうでも良い」
一条 焔「てめえらみたいな真面目な子を利用してヘラヘラしてる奴、虫酸が走るんだよ!」
藤伊 誠司「はぁ? 真面目にとか気持ちわりいんだよ!」
バイト女子1「イケメンでも流石に寒いんだけど~」
中田 真子(このままでいいの? 一条さんだけが悪者みたいにされて・・・)
中田 真子(ダメに決まってる!)
中田 真子「一条さんを責めないでください! あ、貴方たちみたいなの・・・迷惑です!」
一条 焔「ま・・・真子さん!?」
中田 真子「これまでのことは社員さんに報告します。 今後、私は自分の分しかやりませんからっ!」
中田 真子「一条さん、この人たちにこれ以上言っても無駄です! 行きましょう!」

〇事務所
一条 焔「真子さん、かっこよかったです。 キュンとしちゃいました」
中田 真子「そ、そんなっ・・・」
中田 真子「あの、一条さん・・・ありがとうございます」
一条 焔「こちらこそ。 実は僕、昔は荒れていたんです。 その名残でついあんな口調に」
中田 真子「気にしてませんよ。 一条さん、頑張ったんですね」
中田 真子「性格や生き方を変えるって凄いことだと思います」
一条 焔「いえ、最初から真面目な真子さんには敵いません」
一条 焔「周囲に流されず誠実さを維持し続けられるのって、揺るぎない長所なんですよ」
一条 焔「だから、自分なんてって言わないでください」
一条 焔「僕は貴方が頑張っているところ・・・ちゃんと見てますから」
一条 焔「・・・なんか告白みたいになっちゃいましたね」
中田 真子(私には長所が無い。 だから良い子でなきゃダメ)
中田 真子(そんな呪いのような自己嫌悪で自身を大事にできていなかった)
  大切にすべきは己の心と、自分を見てくれている人
  一条さんの言葉で
  私は新しい一歩を踏み出せたような気がした
一条 焔「もし、社員に言っても無駄ならバイト先一緒に変えちゃいませんか?」
中田 真子「ふふ、それも良いですね」
一条 焔(あ、ちょっと悪い顔する真子さんも可愛いな)
  -END-

コメント

  • 仕事は確かに誰かが見ていないと人間なので楽へ進んでしまいがちです。でもそんな中しっかりと働いてる人は誰かしら見ているものです。必ず。そう信じて毎日頑張ってます。

  • 彼女は一見周りの同僚の不真面目さに振り回されているように見えますが、実は自分に正直にいることで居心地の良さを感じているんではないかなあと思いました。それは誰にも負けない長所ですよね。彼はそこにひかれたんでしょうね。

  • お給料もらってるんですから、きちっと働くのは当然だと思うのですが、こういった人はどこの職場も絶えません。
    でも、はっきり言ってくれる彼のおかげで、彼女も口に出せるようになったのは良かったことだと思います。

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