愛と運命のリミッター(脚本)
〇魔法陣のある研究室
愛は人を幸せにする。
しかし、愛はときに人を狂わせる・・・
コトハ「できた!」
コトハ「AIを駆使してできた理想の男性アンドロイド!」
コトハ「きゃっ!」
コトハ「こっちをじっと見てる。それにしても、なんて澄んだ目をしているの・・・」
コトハ「えっと、あなたの名前は・・・」
コトハ「えっ!」
コトハ「すごい、キラキラしてる」
コトハ「ヒカル、あなたの名前はヒカルよ!」
ヒカル「僕を誕生させてくれてありがとう」
コトハ「えっと、その・・・こ、これからよろしくね」
ヒカル「こちらこそよろしく」
コトハは人材派遣サービス会社「ビューティフルAI(愛)」に勤務する研究者。
ビューティフルAIの仕事は、AIを使って作ったアンドロイドを依頼人のもとに派遣し、依頼人を幸せにすること。
〇綺麗なダイニング
コトハ「ヒカル君、ここがあなたの家よ」
ヒカル「僕たちのスイートホームだね、コトハ」
コトハ「こら、変な言い方はやめなさい。 それにコトハって呼び方も」
コトハ「私のことはお姉ちゃんって呼びなさい。私たちはきょうだいよ」
ヒカル「わかったよ、お姉ちゃん」
ヒカル「お姉ちゃんの照れた顔もかわいいな」
コトハ「そ、そういうこと言うのはやめなさい」
〇研究機関の会議室
レイコ「ヒカル君、依頼人からの評判もかなりいいみたいね」
コトハ「ありがとうございます、レイコさん」
レイコ「ところで、私が以前言ったことを覚えてる?」
コトハ「「愛はすべてを狂わせる。完璧なAIでも、愛の感情を強く持つことによって、暴走して壊れてしまうことがある」って話ですか?」
レイコ「ええ。ヒカル君はそうならないといいけど・・・」
コトハ「それは大丈夫です」
レイコ「?」
コトハ「実は、ヒカル君の中にある「誰かを本気で愛する」という気持ちにだけ、リミッターをかけているんです」
レイコ「リミッター・・・」
コトハ「リミッターを外すのは、私やレイコさんのような専門家にしかできません」
コトハ「だから、ヒカル君が暴走することも壊れてしまうこともありません」
レイコ「そう、それなら大丈夫ね」
レイコ「私も今度ヒカル君を派遣してもらおうかしら?」
コトハ「ぜひ!」
〇高級マンションの一室
ヒカル「レイコ社長は、美人で、仕事もできて、本当に理想の女性ですね」
レイコ「えっ、あ、ありがと」
レイコ(ヒカル君・・・何この気持ち・・・)
〇魔法陣のある研究室
レイコ「実はあなたに頼みがあるの」
コトハ「レイコさんの頼みなら何だってやります!」
コトハ「レイコさんは就職の決まらなかった私を採用してくれました。研究にもたくさんの支援をしてくれました」
コトハ「そのご恩は決して忘れません。何なりとお申し付けください」
レイコ「そう・・・」
レイコ「・・・・・・」
レイコ「ヒカル君を私に譲ってほしいの」
コトハ「えっ・・・」
レイコ「彼を私のそばに置いておきたいの」
コトハ「ヒカル君を・・・」
レイコ「どうかしら?」
コトハ「・・・・・・」
コトハ「わかりました。きっとヒカル君も喜ぶと思います」
レイコ「ありがとう」
コトハ「・・・・・・」
〇綺麗なダイニング
コトハ「・・・というわけで、明日からレイコさんのところに行ってもらうわ」
ヒカル「そんな・・・もうお姉ちゃんと一緒に過ごせないの?」
コトハ「そんなことないわよ。いつでも会えるわよ」
ヒカル「お姉ちゃんがそう言うなら・・・」
〇高級マンションの一室
レイコ「ヒカル君、急にごめんね」
ヒカル「大丈夫です。レイコ社長の力になれるようがんばります」
レイコ「ああ、これよ。これが欲しくて私は・・・」
〇豪華なベッドルーム
レイコ「かわいい寝顔」
レイコ「ヒカル君、私はあなたを好きになってしまった」
レイコ「あなたにも私を好きになって欲しい。私を愛して欲しい」
レイコ「これは!」
レイコ「これが「誰かを本気で愛する」気持ちを抑えているリミッター・・・」
レイコ「これを外せば、ヒカル君は本気で人を愛することができる。私を愛することも」
カチッ
レイコ「これであなたは私のもの」
愛のリミッターが外れるとき、運命の歯車が大きく狂い出す・・・
〇豪華なベッドルーム
ヒカル「・・・・・・」
ヒカル「何だ、この気持ち?」
ヒカル「胸が苦しい、張り裂けそうだ」
ヒカル「会いたい・・・行かなくちゃ」
〇女の子の一人部屋
コトハ「熱があるみたい。 体が熱い、辛い、苦しい」
コトハ「胸も苦しい。 どうしちゃったの、私?」
コトハ「誰か助けて・・・」
コトハ「ヒカル君、助けて!」
ヒカル「お姉ちゃん!」
コトハ「ヒカル君! どうして・・・」
ヒカルがコトハを抱きしめる。
コトハ「きゃっ!」
ヒカル「お姉ちゃん!」
コトハ「ちょっと、ヒカル君。どうしたの?」
ヒカル「お姉ちゃん、いや、コトハ。 会いたかった!」
愛する気持ちが純粋であればあるほど
心と体は激しく乱れる・・・
ヒカルがコトハをじっと見つめる。
コトハ「ヒカル君・・・」
ヒカル「コトハ・・・」
二人はそのまま唇を重ねる・・・
ヒカル「コトハ、愛してる」
コトハ「ヒカル君・・・」
〇女の子の一人部屋
コトハ「ヒカル君・・・」
コトハ「う、うん。あれ、私寝ちゃってた?」
コトハ「昨日は確か・・・夜中にヒカル君がいきなりやって来て、それで・・・」
コトハ「・・・・・・」
コトハ「ヒカル君?」
〇綺麗なダイニング
コトハ「ヒカル君!」
コトハ「ヒカル君?」
コトハがヒカルに触れる。
コトハ「うそ、冷たい・・・」
コトハが何度声をかけても、ヒカルは返事をしなかった。
コトハ「どうしてこんなことに・・・」
コトハ「あっ!」
コトハ「リミッターが外れてる・・・」
コトハ「ヒカル君が動けなくなったのはそのせい?」
コトハ「まさか、レイコさんが・・・」
コトハ「手紙?」
コトハへ
ヒカル「お姉ちゃん、いや、コトハ」
ヒカル「昨日、夜中に急に胸が苦しくなって目が覚めた」
ヒカル「そしたら、コトハの顔がすごく見たくなった」
ヒカル「コトハを思いっきり抱きしめたくなった」
ヒカル「コトハをずっと感じていたかった」
ヒカル「僕はコトハに出会えて幸せだった」
ヒカル「本当にありがとう」
ヒカル「コトハ、愛してる」
コトハ「ヒカル君・・・」
コトハ「ヒカル君、あなたは失敗作です」
コトハ「あなたの役目はたくさんの人を幸せにすることです」
コトハ「それなのに私なんかのために・・・本当に失敗作です」
コトハ「でも、あなたが来てくれたとき」
コトハ「あなたに抱きしめられたとき」
コトハ「私、すごく幸せだった」
コトハ「・・・・・・」
コトハ「私もあなたを愛してる・・・」
とてもキュンとくるお話ですね‼
こういったシリアスなお話も書かれるんですね。ちょっと驚きました。コミカルな作品が多い印象でしたので・・・。とても素晴らしかったです。セリフのセンスがあって切なかったです。
経験が浅いので、私には愛に関して中々深く書けません💦
切ない終わり方に思わず涙が……。「失敗作」の言葉は、コトハが自分に言い聞かせているようで、きっとこの先コトハはヒカルを作り直すことはないんだろうなぁ、と。
コトハが最後悲しい顔ではなく笑顔だったのが印象的でした。叶わない恋だから、これが一番の二人の幸せだったのかな……色々考えさせられました。
素敵なお話をありがとうございました。
個人的にめちゃくちゃ刺さったので、私のリミッターが壊れてしまったこと、取り急ぎご報告いたします。