ちゃんと選んで、閻魔ちゃん!

安芸沙織理

第5話 ちゃんと選んだ、閻魔ちゃん(脚本)

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安芸沙織理

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〇西洋の円卓会議
  自分を殺した相手すら、地獄に送れなかった私は、それ以後どんな魂でも天国送りにしてしまう日々が続いていた。
  私は、次に裁かれる予定の魂の情報を仏様と餓鬼くんから教えられたのだが
  それがとんでもないものだった。
園真帆「こ、これって・・・!」
仏様「そう、刹田斬男(さつたきるお)、世紀の大悪人と呼ばれる犯罪者、連続殺人鬼よ」
餓鬼「ずいぶん前に捕まってましたが、この度死刑が執行されたとのことで、魂がやってくることになりました」
仏様「正直、実地検証もプレビューも弁論も無しで、即座に地獄送りにしてもいい案件なんだけど・・・」
園真帆「・・・だったら、地獄行きでいいです、もう」
園真帆「天国送りがダメなら、地獄しかないですし、そっちで判断してくれても──」
仏様「・・・いい加減に、しなさいよ」
園真帆「・・・え?」
仏様「前までのあんたは優柔不断なりに、ちゃんと魂と向き合って結論を出そうとしてたのに、今のあんたはどうよ」
仏様「考えることから逃げて、無責任に天国行きを連発して、前は前でイライラしたけど、今は最低」
園真帆「・・・・・・」
仏様「優柔不断って裏を返せば、きちんと考えてるってことだったんだな。 って今のあんたを見てると思うわ」
園真帆「そう、なんですかね・・・」
園真帆「私、自分の優柔不断が嫌で仕方なかったけど、良い面もあったんですね」
仏様「ええ、もう一度前みたいに、散々悩みながらも向き合ってみなさい」
仏様「そうすれば、見えてくるものもあるはずよ」
園真帆「・・・は、はい!」
餓鬼「そうと決まれば、刹田に対する調査をしないといけませんね」
園真帆「えっと、その前に・・・すいませんでした」
園真帆「なんだか、投げやりになってしまって・・・」
仏様「まあ、終わったことはもういいわ」
仏様「これから挽回してちょうだい」
園真帆「はい! そのために全力であらゆる調査を行います」
餓鬼「じゃあ・・・まずは実地検証からでいいですか?」
園真帆「はい! お願いします!」

〇市街地の交差点
  そして、下界にやってきた私は刹田さんについての聞き込みを始めた。
男A「刹田か~、昔からなんかおかしかったよ。動物いじめてたりさ」
女A「昔、別れ話してたら急にキレだして怖かったわ。異常な目をしてたし・・・」
男B「あんなにヤバいやつは見たことねえよ。死刑になって良かった」
餓鬼「・・・やっぱり、普段からまともではなかったみたいですね」
園真帆「そうですね・・・」
園真帆「じゃあ、次はプレビューを行いましょう」
餓鬼「いいんですか?」
餓鬼「かなり酷いシーンばかりになるかと思いますが・・・」
園真帆「・・・はい、覚悟してます」

〇裁きの門
  映し出されたプレビューシーンは凄惨な殺害現場ばかりで
  どう考えても同情の余地はなかった。
園真帆「う、うう・・・」
仏様「これは・・・ひどいわね」
仏様「そろそろ結論を出してもいいんじゃない?」
園真帆「いえ、まだです」
園真帆「もっと迷って、考えてから決めないとダメだと思うんです」
仏様「・・・残りは、魂の弁論と、書類の確認ね」
仏様「じゃあ、それは明日の裁きの場で行いましょ」

〇裁きの門
  そして、裁きの時がやってきた。
  凶悪犯の刹田さんを一目見ようと、オーディエンスはかつてないほど詰めかけていた。
仏様「それじゃあ、これから裁キングタイム、スタートよ!」
オーディエンスA「時間かける必要なんかねえよ! さっさと地獄送りにしろ!」
オーディエンスB「あいつ、10人以上殺してるんだぜ。天国行きのわけねえよ」
餓鬼「静粛に! 静粛にしてくださーい!」
園真帆「・・・ひとまず、刹田さん、何か言いたいことはありますか?」
刹田「・・・ん? 嬢ちゃん、なかなかそそる身体してるな・・・」
刹田「殺してもいいか?」
園真帆「そ、それはダメです・・・」
刹田「ふん、まあ、どこにでも送ればいいさ」
刹田「オレはどこだろうが、やることは変わらん」
園真帆「同じことを繰り返すんですか・・・?」
刹田「そうだな・・・。天国にも地獄にも魂とやらはいるんだろ?」
刹田「殺す対象が人からソレに変わるだけだ」
餓鬼「これは・・・もうどうしようもないですね」
仏様「場内のブーイングもすごいわ」
園真帆「とりあえず、弁論はここまででいいです」
園真帆「あとは書類を見て判断します」
  そして書類を細かくチェックしていくと、刹田さんについて、あるひとつの事実がわかった。
園真帆「この、生い立ちの部分・・・」
仏様「・・・これはひどいわね」
仏様「親に捨てられ、施設では虐待され」
仏様「性格が歪んでも仕方ないかも」
餓鬼「でも、同じような境遇で立派に生きてる人もいますからね」
餓鬼「同情はしますが、許容はできません」
園真帆「でも、刹田さんだって犯罪者になりたくてなったわけでもないですよね・・・」
餓鬼「それはそうかもしれませんけど・・・」
園真帆「これまで変われなかった刹田さんを救うには、どうしたいいんでしょう・・・?」
  私はまだ答えを出せずにいたが、判決の時間を知らせる鐘の音が響いた。

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