読切(脚本)
〇理科室
松戸「んふふふふ」
松戸「ついに完成しました」
千葉「はあ・・・」
千葉「今日はどんな失敗を見せてくれるの?」
松戸「し、失礼な!」
松戸「この天才の私が、失敗などするはずないだろう!」
千葉「むしろ失敗しか見たことがないよ」
松戸「くっ・・・」
松戸「そう言っていられるのも今の内だぞ」
私の名前は千葉
ごくごく普通の女子高生だ
こいつの名前は松戸
私の幼馴染にして
日本一の研究者と名高い博士
の孫だ
松戸「しかと見るがいい!」
松戸「この『人を惹きつける薬』の力を!」
松戸「これで私は!」
松戸「モテモテだ!」
ゴクゴク
千葉「・・・」
研究者としての実力は・・・
松戸「どうだ!」
千葉「どうって?」
松戸「私に惹きつけられるだろう?」
千葉「いや全然」
千葉「・・・って、あれ?」
松戸「むお!?」
千葉「きゃあっ!?」
私の体が、松戸へとぴったりくっついた
まるで磁石のように
松戸「なんてことだ!」
松戸「『人を惹きつける薬』ではなく、『人を引きつける薬』を作ってしまったのか!」
千葉「・・・」
松戸「・・・」
松戸「いや、これはこれでアリ」
千葉「アリなわけあるか!」
千葉「離れろ変態!」
松戸「ちょ、ちょっと待つんだ!」
松戸「この薬の効果は、十分経たないと切れないんだ!」
千葉「十分間もあんたと引っ付いてなきゃならないの!?」
千葉「悪夢!」
松戸「よ、喜びたまえよ」
松戸「こんなイケメンと密着することができ」
千葉「喜べるかあ!」
千葉「・・・って、ん?」
松戸「ん?」
千葉「なんだか、外が騒がしいような」
松戸「確かに」
千葉「・・・まさか」
松戸「ん?」
千葉「学校中の人が、あんたに引きつけられ・・・なんてことは・・・」
松戸「あ」
扉が開いて、大量の生徒が雪崩れ込んできた
千葉「いやああああ!?」
松戸「うわあああああ!?」
全校生徒を巻き込んだ大おしくらまんじゅう大会は、十分間にも及んだ
〇理科室
翌日
松戸「んふふふふ」
松戸「ついに完成しました」
千葉「昨日の今日で、またか!」
千葉「少しは懲りろ!」
松戸「どんな状況をも己の糧としてこそ」
松戸「天才!!」
千葉「よし、逃げよう」
千葉「巻き込まれないうちに私は帰る」
松戸「ま、待ちたまえ!」
松戸「今日の薬も、誰かがいないと効果が試せないのだ!」
千葉「私以外の友達に頼んでどうぞ」
松戸「君以外の・・・友達・・・?」
千葉「・・・」
松戸「・・・」
千葉「ごめんなさい」
松戸「謝らないでくれえ!?」
松戸「逆に悲しくなってしまう!」
千葉「わかったわよ」
千葉「腐れ縁とはいえ、唯一の友達の私が、相手してあげるわよ」
松戸「わざわざ唯一を入れる必要性はあったかなあ!?」
千葉「重要よ」
松戸「ふっ」
松戸「まあいい」
松戸「今日はこれ!」
松戸「『相手が本心を話したくなる薬』だ!」
千葉「へぇー」
松戸「相手の本心がわかれば、相手が何をされると嬉しいかがわかる」
松戸「つまり、誰よりも気遣いができる男になれる」
松戸「これで私は!」
松戸「モテモテだ!」
ゴクゴク
千葉「・・・」
松戸「さあ!」
松戸「君の本心を話してもらうぞ!」
千葉「・・・」
松戸「・・・」
千葉「・・・」
松戸「あれ?」
松戸「本心、話したくならないか?」
千葉「いや全然」
松戸「ぐう・・・」
千葉「また失敗ね」
松戸「断じて・・・断じて失敗ではない・・・!」
〇黒背景
松戸(ちくしょう・・・また失敗か・・・)
松戸(どうして上手くいかない・・・)
松戸(『人を惹きつける薬』でも、千葉を俺に惹きつけることができない)
松戸(『相手が本心を話したくなる薬』でも、千葉の本心を知ることができない)
松戸(千葉が私のことをどう思っているのか、知ることができない・・・)
松戸(どうすれば千葉は私に振り向いてくれる)
松戸(どうすれば千葉に私の気持ちを伝えられる)
松戸(ずっと、お前のことが好きだって・・・)
〇理科室
松戸「んふふふふ」
松戸「仮説ですが、君は私に対しては常に本心で接している」
松戸「そのため、いつもと変わらないということですね」
松戸「ならば仕方な・・・おや?」
千葉「・・・」
松戸「どうしました?」
松戸「顔が赤いですが?」
千葉「な、なんでもないわ」
松戸「ま、まさか!」
松戸「今、本心を話すのを必死で我慢しているのですね!」
松戸「なるほどなるほど」
松戸「『相手が本心を話したくなる薬』は、大成功ということですね!」
千葉「・・・」
松戸「しかし、我慢ができてしまう程度の効果しかないということ」
松戸「改善が必要ですね」
千葉「もう、それでいいわよ」
千葉(『相手が本心を話したくなる薬』か・・・)
千葉(確かに、本心を話したくなるわよ)
千葉(さっきからあんたの心の声が駄々洩れで)
千葉(感情ドストレートでぶつけられちゃったんだもの)
失敗にまったく気づいていないのがかわいらしくてニヤニヤしてしまいました! 失敗とはいえ、この反応は「成功」なのかもしれませんね!
オチが最高ですね!
1回目の失敗に物理!と笑わされ、2度目はまさかの失敗に、しかも気付いてない松戸……。こりゃ千葉ちゃんそうなるよ、と思わず同情です(笑)
めっちゃ笑わせてただきました!楽しかったです~ありがとうございました😆
相手の本心を聞けることで傷ついてしまうこともあるかもしれないですが、彼はとにかく千葉さんが好きでしょうがないのですね。次はどんな薬が飛び出すのでしょうか!