好きの2文字が言えなくて

深海雪

好きの2文字が言えなくて(脚本)

好きの2文字が言えなくて

深海雪

今すぐ読む

好きの2文字が言えなくて
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇一軒家
工藤杏奈「・・・蓮ったら、学校、遅刻しちゃうよ」
五十嵐蓮「あっ、杏奈・・・」
工藤杏奈「おそ〜い!!」
五十嵐蓮「なんだよ、朝っぱらから・・・」
五十嵐蓮「お前、今日も制服!? 服装自由な高校にしたのに、よく毎日着るよな」
工藤杏奈「だって、この制服がかわいいと思ったから、この高校にしたんだもん!!」
五十嵐蓮「・・・で!?」
工藤杏奈「その腰じゃ、登下校つらいと思って・・・」

〇通学路
  昨日、下校途中。サッカーボールを追いかけてきた男の子が、道に飛び出してきた。
工藤杏奈「ダメ! 危ない!!」
五十嵐蓮「・・・何やってんだよ!!」
工藤杏奈「男の子は!? 男の子がサッカーボールを追いかけて道に飛び出してきて、車が・・・」
五十嵐蓮「横、見てみな!!」
男の子「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ごめんなさい」
工藤杏奈「よかったぁ〜!! 無事で・・・」
五十嵐蓮「杏奈は大丈夫か!?」
工藤杏奈「うん!! 蓮は?」
五十嵐蓮「あぁ〜・・・」
  蓮は、杏奈と男の子を引き寄せた勢いで、腰から転び、杏奈を抱きとめていた。
工藤杏奈「あっ、ごめん!!」
  杏奈が蓮から離れると、蓮は腰を押さえながら苦しそうな表情で立ち上がる。

〇一軒家
工藤杏奈「私が荷物持てば、歩くの楽でしょ!!」
工藤杏奈「きつかったら、肩もかすし・・・」
五十嵐蓮「心配しなくても大丈夫だから・・・」
工藤杏奈「・・・でも・・・」
五十嵐蓮「・・・わかったよ!! ほらっ!」

〇タワーマンション
五十嵐蓮「くそっ。やっぱり、腰痛くてダンスどころじゃないわ・・・」
  いつも練習しているビルの前で、しゃがみこむ蓮。
五十嵐蓮「コンテストまで、1ヶ月しかないっていうのに・・・」

〇学生の一人部屋
五十嵐蓮「いってっ!!」
  帰宅した蓮は、いつも通り家でのトレーニングをしようとするが、やはり腰が痛くて思うように動けない。
五十嵐蓮「ん!?」
五十嵐蓮「・・・杏奈か・・・」
五十嵐蓮「・・・また!?」
五十嵐蓮「えっ!?」
五十嵐蓮「何回送るんだよ・・・」
  うんざりしながら、スマホ画面を開く。
  すると、腰痛の時の注意事項やトレーニング方法のサイトが何個も届いてた。
五十嵐蓮「・・・杏奈のやつ・・・」

〇一軒家
  あれから1週間。
  杏奈は、毎日蓮を迎えにきている。
工藤杏奈「あっ、おはよ!!」
五十嵐蓮「もう来なくていいって言ったろ」
工藤杏奈「だって・・・」
五十嵐蓮「ほら、この通り。もう大丈夫だから・・・」
  蓮は、軽くステップをふんだ。
工藤杏奈「じゃ今日で最後にするから・・・行こう!!」
五十嵐蓮(ありがとう・・・杏奈が調べてくれたサイト、役立ったよ・・・)

〇綺麗な一戸建て
  そして3週間が経った。
工藤杏奈「蓮、どうしたの!?」
五十嵐蓮「明日さぁ〜、ここ来いよ」
  蓮は杏奈にチケットを渡した。
工藤杏奈「・・・蓮、腰は・・・!?」
五十嵐蓮「あぁ・・・もう大丈夫!!」
工藤杏奈「なら・・・いいけど・・・」
五十嵐蓮「来るだろ!?」
工藤杏奈「・・・うん、行く行く!!」
工藤杏奈(ゆりと約束あったけど、リスケしよ!!)

〇コンサート会場
  ハットをかぶった蓮が、中央でスポットライトをあびてる。音楽が流れ出したとたん、そのハットを放り投げ、踊り出した。
五十嵐蓮(あっ・・・)
  ターンをしたときに足をすべらせ、足首が変な方向に曲がった。
五十嵐蓮(や・・・やばい・・・)

〇コンサートの控室
五十嵐蓮「くそっ!! 腰の次は足首かよ・・・」
  小さい頃からずっと一緒だった蓮と杏奈。高校卒業を前に、蓮は杏奈を自分だけのものにしたいと思っていた。
五十嵐蓮(このコンテストで優勝したら、杏奈に気持ちを伝えようと思ってたのに・・・)

〇学生の一人部屋
  帰宅した蓮は、カバンを放り投げ、ベッドに横になり、頭を抱えた。
  見たこともない番号からの着信。
五十嵐蓮「・・・はい」
五十嵐蓮「・・・はい・・・はい・・・」
五十嵐蓮「えっ!?」

〇綺麗な一戸建て
工藤杏奈「蓮、どうしたの? こんな夜に・・・」
五十嵐蓮「まぁ・・・」
工藤杏奈「足、大丈夫? 腰は?」
工藤杏奈「・・・今日は残念だったね・・・」
五十嵐蓮「ちょっとついてなかったな・・・」
五十嵐蓮「でも・・・」
五十嵐蓮「さっき主催者の人から連絡があって、ニューヨークに留学してみないかって・・・」
工藤杏奈「えっ、本当!?」
五十嵐蓮「あぁ・・・」
五十嵐蓮「だから・・・」
五十嵐蓮「一緒にニューヨークに行かないか!?」
工藤杏奈「えっ!?」
五十嵐蓮「杏奈、スタイリングの勉強したいって言ってたろ。ほらっ!!」
工藤杏奈「あっ!? これって、私が行きたいって言ってた専門学校のパンフ!?」
五十嵐蓮「あぁ。俺がダンス、杏奈はスタイリングの勉強をニューヨークでするんだ」
  蓮は、ポケットの中から小さな箱を取り出し、杏奈の手に強引に持たせた。
工藤杏奈「えっ、何!?」
工藤杏奈「・・・ゆ・・・指輪!?」
工藤杏奈「・・・もう、いっぺんにいろんなことがありすぎて、よくわかんないんだけど・・・」
五十嵐蓮「俺の衣装は、ずっと杏奈に任せたい」
五十嵐蓮「ニューヨークでも、それからも・・・」
五十嵐蓮「・・・ずっと俺の側にいてほしい!!」

〇空港ターミナルビル
工藤杏奈「もう、蓮ったら、全部ひとりで決めちゃって、私、準備、大変だったんだから!!」
五十嵐蓮「まぁ、いいじゃん。ふたりでニューヨークに行けることになったんだし・・・」
工藤杏奈「・・・ねぇ・・・蓮・・・」
五十嵐蓮「ん?」
工藤杏奈「私、蓮の彼女ってことでいいんだよね・・・」
五十嵐蓮「当たり前じゃん・・・」
工藤杏奈「・・・私、蓮に「好き」って言われてないんだけど・・・」
五十嵐蓮「・・・あっ・・・そうだったっけ!?」
工藤杏奈「ねぇ・・・「好き」って言って!!」
五十嵐蓮「・・・あ・・・後でな・・・」
工藤杏奈「今!!」
五十嵐蓮「・・・人がたくさんいるだろ・・・」
工藤杏奈「じゃ、一緒にニューヨーク行かない!!」
五十嵐蓮「何言ってんだよ、ここまで来て・・・」
  蓮をまっすぐ見つめる杏奈。
五十嵐蓮「・・・・・・」
  杏奈の耳横に顔を近づけた蓮がささやく。
五十嵐蓮「・・・す・・・好きだよ・・・」

コメント

  • 言われたい言葉ですよねぇ。
    雰囲気で察してくれとかそういうのではなくて…。
    ちゃんと言葉にしないとわからないこともありますし、まず納得したくないです!

  • 最後の「好きだよ」にキュンキュンしまくりです!
    やっぱり気持ちはわかっていても、言葉で欲しいですよね。笑
    プロポーズがロマンティックでよかったです!

  • 健気な杏奈を応援しながら読んでいました。
    これだけの関係でも、お互いに”好き”とは言っていない幼馴染の関係性も大変ですね、見ていてキュンとします。

コメントをもっと見る(5件)

ページTOPへ