〇ホテルのレストラン
　　ケーキビュッフェの会場は、溢れるほどの人々で賑わっていた。
　　特大ケーキ『想いの通じ合うケーキ』の周りには、特に人々が集まっている。
苗場桜「ちょっとー!! 林檎、なんでこいつらがいるのよ!!」
武笠蘭「おい、そんな言い方ないだろ!? っていうかそれはこっちのセリフだっ！」
朝陽林檎「え？ 私、みんなで行くって言ってなかったっけ？」
「言ってない!!!」
朝陽林檎「・・・あ、あれ～??」
　　救いを求めるように椿を見る。
　　椿はビュッフェのパンフレットを食い入るように見つめていた。
雪代椿「枯石君のお好きなケーキはビターな大人の味。このビュッフェで参考になるのは──」
朝陽林檎（だ、大丈夫だよ林檎！ 『想いの通じ合うケーキ』があるんだから!!!）
朝陽林檎「私、ケーキ取りに行ってくる!!」
武笠蘭「あ、じゃあ私も──」
朝陽林檎「大丈夫、三人は仲良く話してて！ 仲良く、だよ!!」

〇ホテルのレストラン
朝陽林檎「ほんと頼むよ・・・『想いの通じ合うケーキ』!!」
　　そのとき、近場のカップルが『想いの通じ合うケーキ』を口に入れた。
カップル男「うぐっ──」
カップル女「ううっ──」
「・・・・・・」
カップル男「なにが記念日だああ！ 毎回毎回めんどくせーんだよ!!」
カップル女「記念日もまともに覚えてられないくせに、なに偉そうに言ってんのよ!!」
朝陽林檎「えっ!?」
　　見渡すと、周囲は暴れる客たちで溢れかえっている。
　　ビュッフェ会場は、一瞬にして混乱の渦に包まれた。
朝陽林檎「どうしちゃったの、みんな!?」
ケーキ魔霊「ケーケッケッケ！ わしの特製クリーム、たーんと食らうがいいケー!!」
朝陽林檎「あれは!?」
　　巨大なケーキ型の魔霊が、体からクリームの塊を発射する。
　　攻撃を受けた男性は、悪鬼のごとく変貌して暴れ始めた。
「魔霊！」
　　林檎は素早く柱の影に隠れて、ペンダントを構えた。

〇水玉2
朝陽林檎「マニフェスティション・ラブリィ・エンジェル・アップル！」

〇ホテルのレストラン
ケーキ魔霊「ケーケッケッケ！ 罵れ、憎め、想いよ壊れるのだケーー!!」
？？？「待ちなさい！」
ケーキ魔霊「なに!?」
アップル「心を繋ぎ、新たな幸せを願う人々の想いを壊そうとする魔霊は許せない！」
アップル「愛天使ウェディング・アップルが不滅の愛を教えてあげるわ!!」

〇ホテルのレストラン
「アップル!!」
　　他の愛天使たちもアップルの元へ駆けつけると、顔を見合わせて頷いた。
アップル「お色直し！」
「ア・ブライズ・チェンジ・オブ・コスチューム！」
ケーキ魔霊「ふん、四人揃ったケ！ まとめて片付けてやるケーッッ！」
　　ケーキ魔霊は、愛天使たちにクリームの塊を射出する。
　　次々と飛んでくるケーキの塊を、愛天使たちは軽やかに避けた。
カミーリア「『愛のケーキ』があんなことを言うだなんて・・・なんてことですの」
チェリー「愛ぃ!? 愛のケーキなんて名前じゃないでしょ！ あれは想いの通じ合うケーキ！」
ケーキ魔霊「どっちも違うわい！ わしは『想いを引き裂くケーキ』のケーキ魔霊──」
カミーリア「お黙りなさい!! 想いとは愛、すなわちあなたは愛のケーキ!!」
ケーキ魔霊「!!」
オーキッド「気迫で魔霊を黙らせた・・・」
アップル「カッコいい・・・!!」
ケーキ魔霊「ぬうう、バカにしやがって──。 ケーーー!!!!」
　　猛烈な勢いでクリームを発射する魔霊。
カミーリア「! アップル、こちらへ！」
アップル「わわっ!!」
　　カミーリアはアップルの手を引いて、素早く柱の陰へ隠れる。
　　チェリーとオーキッドは、巧みにクリームの雨を避けた。
ケーキ魔霊「あ、あたらんケ!?」
オーキッド「くらえっ!!」
チェリー「そこだっ!!」
オーキッド「ちょっ!?」
　　ゴツン！
チェリー「いたた・・・邪魔しないでよ！」
オーキッド「なっ！ 邪魔したのそっちだろ!?」
ケーキ魔霊「ケッケッケ！ チャンス!!」
アップル「させない!!」
カミーリア「はあっ！」
　　柱の影から飛び出すアップルたち。
　　二人は飛び蹴りをして、ケーキ魔霊を吹っ飛ばした。
ケーキ魔霊「ンケェェ～～～～!!!」
アップル「やった！ チェリー！ オーキッド！ 今──」
チェリー「ほんっと何なのあんた、いつも私の邪魔ばっかりして！」
オーキッド「んだと!? それはこっちのセリフだって言ってんだろ！」
アップル「って、また燃え上がってる～！」
チェリー「今日だってほんとは私とアップルのふたりで来るはずだったのにぃ～～！」
オーキッド「だ、か、ら！ 今日アップルとふたりっきりだったのは私なんだって！」
「ぐぬぬ・・・」
アップル「ふ、ふたりとも──」
カミーリア「おふたりとも戦闘中です。 集中いたしましょう！」
チェリー「黙れこの恋愛バカ！ あんたもあんたよ！」
チェリー「大人のくせに愛とか恋とか恥ずかしくないわけ!?」
カミーリア「・・・今、なんと？」
アップル「カ、カミーリア・・・？」
カミーリア「この愛天使カミーリア、たとえ仲間と言えど人の純情を愚弄するなど聞き捨てなりませんわ！」