第29話 蘭の決意! W・オーキッド誕生②(脚本)
〇道場
武笠剛「始めっ!」
剛の立ち合いのもと、蘭と秋山広大(こうだい)が空手の試合を始めた。
蘭は果敢に攻めるが、広大は隙をついて蘭に上段蹴りを決める。
武笠蘭「くっ・・・勝負はこれからだよ、広大!」
〇道場
武笠蘭「・・・はぁ、はぁ」
武笠蘭「二勝十七敗、五引き分け。 あたしの負け・・・。いや、まだまだ!」
秋山広大「やらないよ」
武笠蘭「えーっ!」
秋山広大「今日の蘭は上の空だ。 そんな奴に勝っても全然嬉しくない」
武笠蘭「上の空・・・」
武笠蘭「そう、かもね・・・あーあ。 昔はあたしのほうが強かったのになー」
秋山広大「男と女じゃ体格がちがう。男の俺が勝って当たり前、それが普通なんだよ」
武笠蘭「普通、か・・・」
秋山広大「?」
武笠蘭「あたしが男だったら、今すぐ林檎に好きっていえるのに・・・」
秋山広大「蘭?」
武笠蘭「・・・はあ」
武笠蘭「──広大。付き合って」
秋山広大「え!? 付き合ってって、あの、その・・・」
〇繁華な通り
店員「ありがとうございましたー!」
秋山広大「って、ラーメンかよ・・・」
武笠蘭「あーおいしかった♪」
秋山広大「ったく・・・。 ま、蘭が元気になったならいいけどさ」
女性ファン「ショウ様~!」
武笠蘭「ん?」
カフェのテラス席に、女性ファンに囲まれたショウが座っている。
武笠蘭「誰?」
秋山広大「FRENZYのショウだよ! こんなところで会うなんてすげー!」
武笠蘭「ショウ?」
蘭がショウを見つめていると、視線に気づいたショウがウインクをした。
武笠蘭「なにアイツ? 行こ、広大!」
秋山広大「えっ? あっ、おい・・・」
布瀬川ショウ「おい、女! サインしてやってもいいんだぜ」
武笠蘭「女? ・・・」
武笠蘭「あたしにはね、『武笠蘭』っていうちゃんとした名前があるの」
武笠蘭「FRENZYだか何だか知らないけど、女が全員あんたを好きになるなんて思わないで!」
布瀬川ショウ「お前・・・!」
秋山広大「すみません、俺の連れなんで」
布瀬川ショウ「!」
秋山広大「行くぞ、蘭」
武笠蘭「えっ? ちょっと・・・広大!」
布瀬川ショウ(アイツら恋人同士だったのか・・・俺に喧嘩を売るとは上等だ。二人まとめてブッ殺してやる!)
布瀬川ショウ(しかし、ただ殺すだけじゃつまらねえ。もっと残酷で、もっと悲惨な最期。そのためには・・・アイツだ!)
〇街中の道路
武笠蘭「離してよ。広大!」
秋山広大「お前なあ、男相手に喧嘩売るなよ。 何かあったらどうするんだ?」
武笠蘭「大丈夫だよ。あたし強いから」
秋山広大「そうじゃなくて、いっただろ? 男と女じゃ男が勝って当たり前だって」
武笠蘭「・・・男だとか、女だとか」
秋山広大「?」
武笠蘭「広大までそんなこといわないで・・・!」
秋山広大「・・・蘭?」
???「Dr・ボーク・メッツの恋人たちの屋台へようこそ~!」
武笠蘭「わっ、何!?」
Dr・ボクメツ「どうぞ私の屋台を見ていってくださ~い!」
秋山広大「屋台?」
〇奇妙な屋台
蘭たちが屋台を覗くと、中は沢山のカップルで賑わっていた。
秋山広大「まるで理科の実験みたいだな」
武笠蘭「何これ?」
Dr・ボクメツ「私が発明した、二人の愛が燃え上がる不思議なグッズで~す!」
Dr・ボクメツ「例えばみなさんにお渡しした白い試験紙、これは『愛の試験紙』!」
Dr・ボクメツ「使い方は簡単、まずこれを自分の唇につけて~」
Dr・ボクメツ「愛する人を想いながら、その人に貼ると~」
カップルたちが、試験紙をお互いの体に張り付ける。
武笠蘭「赤くなった!」
秋山広大「どうなってるんだ?」
Dr・ボクメツ「フフフ、これは相手の気持ちがわかる試験紙なので~す!」
Dr・ボクメツ「白から赤に変わればあなたを『愛してる』、青に変われば『大嫌い』、白いままなら『何とも思ってない』!」
Dr・ボクメツ「つまりこのお二人は・・・」
女性「赤よ・・・」
男性「僕も赤だ・・・」
女性「じゃああたしたち・・・」
男性「そうだ・・・」
「愛してる~!」
「!」
Dr・ボクメツ「お二人にもプレゼントで~す! どうぞ使ってみてくださ~い!」
武笠蘭「えっ?」
秋山広大「いや、俺たちは・・・」
武笠蘭「うん。あたしたち、そんな関係じゃありませんから!」
Dr・ボクメツ「へっ?」
秋山広大「あ・・・待てよ、蘭!」
〇街中の道路
武笠蘭「相手の気持ちがわかる試験紙?」
武笠蘭「そんなものあるはずがない。 バカみたい!」
秋山広大「そ、そうだよな・・・」
広大は相槌を打ちつつも、手には白い試験紙を握りしめていた。
〇奇妙な屋台
Dr・ボクメツ「おかしいですね~。 あのときホーーディ様は・・・」
〇黒
布瀬川ショウ「あの恋人たちの仲を引き裂き、殺し合いをさせろ!」
〇奇妙な屋台
Dr・ボクメツ「とおっしゃって。私はてっきり、あの二人は恋人同士と思っていたのですが・・・」
Dr・ボクメツ「まあいい。 男の方にはその気があるようで~す!」
Dr・ボクメツ「ククク。愛しなさい。愛が強ければ強いほど、『愛の試験紙』はその威力を発揮する・・・」
ボクメツが不気味に笑うと、屋台のカップルたちが黒い妖気に包まれる。
女性「どうしてかしら、あんたが憎たらしいわ」
男性「俺もだよ。お前を殺したいくらいにな」
女性「それはこっちのセリフよ! ケチなマザコン男が!」
男性「なんだと! 金遣いの荒いクソ女が!」
Dr・ボクメツ「愛と憎しみは紙一重」
Dr・ボクメツ「そう、この『愛の試験紙』はですね。人間の愛が強ければ強いほど相手を憎むように魔術をかけてあるので~す!」
Dr・ボクメツ「愛はボクメツ、憎しみのタンジョウなので~す!」
〇美しい草原
武笠蘭「林檎。あたし林檎のことが・・・」
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