〇森の中の駅
　　森に包まれた美しい駅のホームに、登山電車が停車した。
　　下車する若者たちに続いて、椿が電車から降り立った。
雪代椿「・・・・・・」

〇谷
魔霊「結婚などくだらない。 女性の人たちよ聞きなさい」
　　魔霊化したさよりが、キューピット像の下に集まる若者たちに向かって叫ぶ。
魔霊「男は必ず浮気をする動物です。 あなたたちは結婚した人の苦労を見ているはず」
魔霊「結婚などしたら男に騙され、あなたたちの自由が束縛されます」
魔霊「我が儘で小うるさい舅や姑。 掃除、炊事、洗濯、子育て！」
魔霊「自分だけの生活空間、自由時間が全て奪われます」
女性「そうね。その通りかもしれないわね」
魔霊「男たちよ聞きなさい」
魔霊「結婚などはくだらない。 あなたたちの収入は今、幾らなの？」
魔霊「安い給料で結婚して生活の見通しが立つの？」
魔霊「自分が生きるだけでも大変なのに、妻を養い、ましてや子供が生まれたら、子育てのお金に余裕があるの？」
男性「そうだ、その通りだ」
魔霊「愛を憎め、愛を壊すのだ」
若い男女たち「愛を憎め、愛を壊すのだ」
朝陽林檎「やっぱり、魔霊ね！」

〇水玉2
朝陽林檎「マニフェステイション・オブ・ラブリィ・エンジェル・アップル」

〇谷
アップル「待ちなさい！」
魔霊「お前は!?」
アップル「愛を求める人々を誘い出し、悪に染めるなんて認めません」
アップル「このウエディング・アップルが、悪のオーラを消し去ります」

〇林道
　　椿が林道を歩いていると、周囲が突然モノクロームの世界に変化した。

〇林道
雪代椿「！」
雪代椿「これは・・・」

〇谷
魔霊「ほざくな。愛など・・・結婚など・・・脆く壊れやすいものだ」
魔霊「アップル、お前は愛し合って結婚した者同士が、いがみ合い、憎しみ合う姿を見たことがないのか？」
アップル「うぅぅぅ・・・」

〇モヤモヤ
苗場美樹「私はお花屋さんを続けたいのです」
苗場大地「勝手を言うな。だったら離婚だ！」
苗場美樹「いいわ。離婚しましょう」
朝陽まゆみ「男なんて勝手よ。料理、洗濯、掃除。 すべて妻の私に押しつける」
朝陽まゆみ「結婚なんてしなければ良かった！ 離婚したい！」
「離婚だ！（離婚よ！）」
朝陽まゆみ「愛など嘘！ 愛など偽りよ！」

〇谷
アップル「うぅぅぅぅ・・・」
魔霊「そうだ。愛など偽りだ。 愛を憎め。愛を壊せ！」
　　アップルは瞳を閉じて胸のペンダントを懸命に握り締める。
アップル「誰も憎しみ合ってなどいません」
アップル「桜ちゃんのパパとママはそれぞれの考え方、生き方が少し異なっているだけです」
アップル「それに・・・私は単純だけど、パパとママは純粋だから、言葉の裏に悪意などはありません」
アップル「結婚を望まない女性に取りついて、愛を求める多くの人を誑かす魔霊は許せない」
アップル「このウエディング・アップルが不滅の愛を教えて上げるわ」
魔霊「ほざくな！」
　　さよりは素早く弓矢を取り出して、アップルに放った。
　　無数の魔法の矢が、アップルめがけて襲いかかる。
アップル「わっ、わっ、わっ！」
アップル「お色直し！」

〇水玉2
アップル「ア・ブライズ・チェンジ・オブ・コスチューム！」

〇谷
魔霊「逆らうな！」
　　アップルは、さよりが放つ無数の矢を次々にかわしていく。
　　さよりはさらに弓をしならせて、素早い矢を放った。
アップル「わっ！」
　　攻撃を受けたアップルは、岩場に激しく叩きつけられる。
魔霊「愛は不滅だと？ ふざけるな。 消え失せろ、愛天使！」
アップル「うわぁぁぁ～～！」
？？？「バージンロード！」
魔霊「な、なに～？」
カミーリア「麗しき愛を求める愛天使、ウエディング・カミーリア！ 参上ですわ」
アップル「カミーリア！」
カミーリア「アップル。お気を確かに！」
アップル「あ、ありがとう・・・。 ウ、ウエディング・ベル！」
魔霊「二人とも死ね～！」
　　邪悪なオーラを浴びて苦しむ愛天使たち。
　　しかし、カミーリアがさよりの前に立ち、黒いオーラからアップルの身を守った。
アップル「さよりさん、あなたが一人暮らしを望む気持ちはわかるような気がします」
アップル「でも、魔霊に惑わされないでください」
魔霊「黙れ、黙れ～！」
　　リン、リン、リン
アップル「悪いのは、さよりさんに取りついた魔霊なのです！ 出て行け！」
魔霊「ギャアァァァ～！」