辛辣

北野

辛辣(脚本)

辛辣

北野

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辛辣
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〇おしゃれなキッチン
朝美「期限切れだ」
  ゴミ箱に期限切れのクリームパンを捨てる
慶悟「何捨ててんの?」
朝美「期限切れのクリームパン。昨日までに食べてって言ってたじゃん」
慶悟「意識してくれるのはありがたいけどさ、2,3日なら大丈夫でしょ。ちょっともったいない」
朝美「・・・」
慶悟「仕事行ってくるよ?それ車で食べるからちょうだい」
朝美「・・・」
朝美「お腹壊すよ」
慶悟「2,3日は大丈夫なの」
朝美「・・・」
朝美「つまらない人」
  辛辣

〇教室
  ・・・
葉月「・・・」
理樹「すっごいつまんない」
葉月「ね、つまんない」
理樹「葉月ってそういうこと言うんだ」
葉月「・・・なんで?」
理樹「成績いいでしょ?勉強が好きなのかと思って」
葉月「偏見でしょ。それ」
葉月「まあ好きだよ。結構」
葉月「でもつまんないの、多分結果が欲しいんだと思う」
葉月「結果が出ればなんでもいいのかも」
葉月「好きじゃなくても」
理樹「・・・」
理樹「でもなんかそれって悲しくない?」
理樹「自分が納得するのは良い結果が出たときだけでしょ?」
理樹「思った結果になるとは限らないっていうか」
葉月「言い訳じゃん」
理樹「・・・」
葉月「それ、言い訳」

〇まっすぐの廊下
葉月「あの授業嫌いになった」
理樹「授業中に言ってほしいよな」
理樹「授業終わってから怒られても...」
葉月「そこが嫌い」
理樹「・・・」
理樹「雨強いね」
葉月「うん」

〇スーパーの店内
  割引商品ばかりカゴに入れる朝美
愛「あっ四宮さん」
朝美「あー」
  沈黙が流れる
愛「葉月の母です」
朝美「あー。お世話になってます」
  愛が朝美のカゴの中身を見る
朝美「・・・」
愛「今日理樹くん来てますよ」
朝美「えっ?」
愛「よくうちに来てくれますよ?勉強会みたいな」
朝美「うちの子が一方的に教えてもらってるんだと思います。すみませんいつも」
愛「でも葉月は理樹くんは頭良いって言ってました」
朝美「・・・」
朝美「夫に似たのかも」
愛「旦那さん今日仕事ですか?」
朝美「ええ」
愛「よかったらうち来てください。今から」
朝美「でも悪いですよ」
愛「いいんですよ。理樹くんもいるし、うち猫いるし、ママ友とかいないんですよ。仲良くしたいです」
朝美「・・・」
朝美「じゃあお言葉に甘えて...」
愛「よかった」

〇通学路
愛「朝美さん」
朝美「なんですか?」
愛「あの2人付き合ってると思います?」
朝美「・・・」
朝美「さあ。あの子が女の子の気持ち分かるとは思えないですけど」
愛「でも分からないですよ?」
愛「身近な存在には分からない魅力ってのがあるんですよきっと」
愛「近ければ近いほど見えなくなるんですよ」
朝美「・・・」

〇ラブホテルの部屋
帆音「最近よく会ってくれますね」
慶悟「まあわかりやすいマンネリ化なんだよね」
帆音「私はいいですけどいいんですか?四宮さんは」
慶悟「正直帰るのも辛い」
慶悟「買ってくる商品全部割引品なんだよ」
帆音「え?どういうこと?」
慶悟「大抵割引って消費期限とか賞味期限とか期限が近い食糧でしょ?」
慶悟「なんか責められてる気分になるんだ」
慶悟「僕の行動を決められてるみたいで」
帆音「ただ家庭的なだけじゃなくて?家計のこと考えてとか」
慶悟「期限が過ぎたら捨てるんだよ。僕に隠れて」
慶悟「結果を求められてる気分なんだ。ずっと」
帆音「・・・」
帆音「離婚とか?そういうこと?」
慶悟「・・・」
帆音「でも隠れて捨てるんでしょ?」
帆音「それって純粋な愛だと思いますよ。私だったらそうだと思う」
慶悟「・・・」
慶悟「そうも思えるから嫌いになれないんだ」
帆音「・・・」
  ゴミ箱には期限切れのクリームパンが入っている

〇女性の部屋
理樹「この間貸した映画もう観た?」
葉月「いや、まだ」
理樹「じゃあ今観ようよ」
葉月「これ?」
葉月「なんか大人っぽそう」
理樹「別に」
葉月「でも映画ってすごい数の人で作られてるでしょ?」
葉月「そんなの子どもだけじゃ作れないから羨ましい」
理樹「でも大人数いれば良いわけでもないし」
葉月「・・・」
理樹「案外そんなもんだよ」
「ただいまー」

〇おしゃれなリビングダイニング
朝美「綺麗なお家ですね」
愛「いえいえ、今お茶出しますね」
愛「コーヒーがいい?」
朝美「・・・」
朝美「おすすめで」
愛「じゃあコーヒーね」
  愛がコーヒーを出す
朝美「美味しい」
愛「夫がコーヒーオタクなの。普段は豆から挽いたりしてるんだけどこれは元々粉末のコーヒー。十分美味しいでしょ?」
愛「でも夫は許さない。粉末だとすぐに気づくの。そもそも自分で作らずにコーヒー好きって言えるのかしら」
朝美「そうね」
愛「なんか旦那さんの話とかないの?聞いてみたい」
朝美「・・・」
  猫がテーブルに飛び乗り朝美のコーヒーを溢す
愛「ごめんね。大丈夫?」
朝美「私は全然。猫ちゃんは?大丈夫?」
愛「大丈夫そう。本当にごめんなさい」
朝美「大丈夫。大丈夫」
愛「布巾持ってくるね」
朝美「私ね」
愛「ん?」
朝美「こんな猫みたいな華やかさもないしハプニングもないんだけど」
朝美「夫のつまらないとこが好きなの 安心するの」
愛「・・・」
愛「それで良いの?」
朝美「それが私にとって1番身近なの」
愛「・・・」
  ビニール袋の中には割引商品

コメント

  • 結果ハッピーエンドなのでしょうか。
    とても文学的な作品ですね。大人っぽいイメージです。生きていくのは妥協の連続なんでしょうね。
    子供達もやがて大人になって、色々と諦めを知っていくのかなと思いました。ただ人の気持ちは表から解らないものですね、それだけは感じました。

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