事故物件サバイブ ~心霊現象総スルーな兄が最強すぎる、致死率150%呪いのロンダリング・バイト~

資源三世

5月6日 屍体 #シナリオ(脚本)

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〇中規模マンション

〇マンションのエントランス
「落とし物をしてしまって。はい、開けてもらうことは」
「場所ですか? ○○町のマンションで──」
  名前を聞いた瞬間、電話は切られた。よほど関わりたくないのか、それとも人間以外が電話をしてきたと思ったか
梓「まあ、事情を知ってれば当然か」
  そこは致死率150%の事故物件。えらい悪名がつけられたマンションだ
梓(だけど、事実として死者は出ている)
  五年前の火事の被害の合った部屋の入居者が、次々と不自然な死を迎えている。論理で説明のつかない、まさに不自然な死
  水のない場所で溺死、屋根裏で肉片、親族一同で貯水槽にダイブ。理屈の通じない死に方ばかり
梓(この事故物件には何かが棲みついている)
  それを探ろうと、恐らくは核心のエレベーターの中を見ようと試みたが、正攻法では無理だろう
梓「私なら何か視えると思ったけど」
「何もないわよ」
  いつの間にか、その人は後ろにいた。透き通るような澄んだ印象の、とても綺麗な女性
  火事の犠牲者は、一年後にエレベーターの中へ飛び降りた。その人は美人で評判の女優だった
  今、目の前にいる、その人がそうだった
女性「エレベーターの中には何もないわ。探しても何もない。存在しない落とし物を探してもみつからないのと同じよ」
梓「何もない?」
梓(嘘はついてなさそう。彼女の姿は、ずっと綺麗に澄んでる)
梓(・・・違う、何もないんだ)
  共感覚で人の感情が色となって見えた。良い感情は明るく、悪い感情は暗く。赤ん坊でも老人でも、寝ている人ですら色があった
  けれど、この人には何もない。一切の感情が視えなかった
  彼女の白く細い華奢な体も、薄っすら微笑む唇の赤さも、どんな芸術ですら表せない生命を感じさせる
梓「幽霊とは思えない。でも人間とも思えない。あなた、何なの?」
女性「震えているのね。それでもお友達の為に一生懸命になって、とても美しいわ」
梓「はぐらかさないで!」
女性「私達を探っても、何も見つからないわ。それでも探すというの? その好奇心は、ないものを見つけるの?」
  彼女は恍惚とした表情を見せると、踵を返して、エレベーターへと戻ってゆく。まるで蠱惑的な蝶のように、私を誘いながら
梓「待ちなさい!」
「ダメ!」
  後ろから手を引かれ、足が止まる。彼女は既にエレベーターに乗り、少しだけ振り返って艶やかな笑みを向けていた
  エレベーターの中は吐き気のするほどどす黒いモヤが渦巻いていた
梓「ありがと、助かったよ」
妹「どういたしまして」
妹「さて──」
  空はエレベーターの女性と、落ち着いて向かい合う。彼女もまた空へと向き直ると、空は静かに問いかけた
妹「ねぇ、あなたは誰? なんであの女優さんと同じ姿をしているの?」
梓(同じ姿?)

〇エレベーターの中
女性「私達は桜の樹の下に埋まる屍体よ」

〇マンションのエントランス
梓「それは・・・」
妹「つまりリビングデッド?」
梓「そういうのじゃなくて」

〇エレベーターの中
女性「桜の樹の下に埋まる屍体。どこから浮かんで来た空想かさっぱり見当のつかない屍体。それが私達」
女性「あなた達に、私達を見つけることはできるのかしら?」
女性「その日を今か今かと待ち続ける時間は、とても心地よいものね」

〇マンションのエントランス
  彼女はそう言い残して、エレベーターへと消えていった
  その言葉の意味を知るのは、もっとずっと後のことだった──

次のエピソード:5月7日 エアコン

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