3丁目のキング

ラム25

異世界転生するかと思いきや猫転生だった(脚本)

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〇公園のベンチ
シロ(吾輩は猫である)
シロ(名前は・・・)
姫子「あら、シロちゃん! ひなたぼっこでちゅか? えらいでちゅねえ!」
シロ「にゃーお(ひなたぼっこしてるだけで偉いか?)」
姫子「相変わらず可愛い鳴き声でちゅね! ここにご飯置くから食べるんでちゅよ!」
シロ「にゃん(感謝する)」
  そして俺は餌を貪る。
  俺は他の猫とは一つだけ違うことがあった。
  人間に寵愛を受けていること?
  白い毛皮が美しいこと?
  違う。
  元人間だということだ。
  話は遡る。

〇散らかった職員室
部下「すいませーん、ここ分かんないんですけど」
城田「君ねぇ、前に教えたよね?」
部下「あはは、すいません」
  猫になる前の俺はブラック企業に勤め、満員電車に乗り、部下に悩まされ、残業詰めという日々だった。

〇男の子の一人部屋
城田「はぁ、自由とは程遠いな・・・ 全く、病みそうだ・・・」

〇幻想空間
  眠りにつくと、俺は奇妙な夢を見た。
シロ「自由が欲しいか?」
  そう話しかける白猫。
  それに俺は疑問を抱かず答える。
城田「あぁ、欲しい」
シロ「ならばくれてやる」

〇公園のベンチ
  そして、夢から覚めるとなんと猫になっていたのだ。
シロ(この姿ならチヤホヤされる。 餌にも困らない。 何より自由だ。最高じゃないか)
  そう思っていた。
姫子「シロちゃん、ごめんね、餌やり禁止だって・・・ 強く生きてね」
  区は増えすぎた野良猫の対策として、餌やりを禁止した。
シロ(馬鹿な、どうやって生きろと言うんだ・・・)
  それから俺はゴミを漁る生活をするようになった。
おばさん「こら、ゴミを漁るな! まったく、猫って迷惑なんだから・・・」
シロ「にゃー・・・」
おばさん「そんな物欲しそうな顔して・・・ ほら、出てった出てった!」

〇入り組んだ路地裏
  俺は行く当てもなく彷徨っていた。
  そんな時だった。
姫子「シロちゃん! そんなに毛が汚くなって・・・! はい、ちゅーろ!」
シロ「にゃーん?(餌やりは禁止じゃなかったのか?)」
姫子「餌やりは禁止でもおやつなら禁止されてないからね。 屁理屈だけど・・・食べて!」
シロ「にゃ・・・(ありがとう)」
  ちゅーろの濃厚な旨みが口内に広がる。
おばさん「そこの人! 餌やりは禁止でしょ!」
姫子「あっ、ごめんね、シロちゃん、また!」
  そして女性は去っていく。
  俺が余っているちゅーるを舐めようとしている時だった。
キング「おい、ここは俺の縄張りだぜ。 そいつを寄越せ」
シロ「縄張り? このちゅーろはあの子が俺にくれたんだ」
キング「はあ? 俺の縄張りなら俺の物に決まってるだろ」
シロ「じゃ、じゃあ分け・・・」
  しかしそのとき、黒猫の強烈な猫パンチが俺の顔面に刺さった。
  人間からすれば大したことの無いダメージでも、この身体ではまるでボクサーに殴られたかのよう。
シロ「ぐぅ・・・」
キング「分かったら俺の縄張りから出て行け」
シロ「くそっ、猫の分際で・・・!」
キング「猫の分際? 何言ってんだ」
  黒猫は俺を押し倒し、爪を立てて蹴りを連打する。
  その激痛に俺はみゃおん、と悲鳴をあげる。
シロ「や、やめ、やめてくれ! 降参だ!」
キング「ふん、やっと大人しくなったか、負け猫が」
  俺は慌てて逃げる。

〇ビルの裏
シロ(そうだ、身体は猫でも猫としての生き方を知らないんだ・・・)
ミケ「兄ちゃん、ずいぶんボロボロだな。 喧嘩に負けたか?」
シロ「あぁ、俺はこの辺のルールに詳しくないんだ」
ミケ「俺たちはこの3丁目の縄張りを共有しているんだ。 兄ちゃんも仲間にならないか?」
シロ「いいのか?」
ミケ「俺たちは弱いから組んでるんだ。 特に今はキングが縄張りを狙ってるからな」
シロ「キング?」
ミケ「黒猫だ。1丁目、2丁目を縄張りにしている」
  どうやら俺と喧嘩をしたネコがキングらしい。
シロ「なるほどな・・・ キングさえなんとかすればいいんだな」
ミケ「ああ、そうだ。 だが俺たちが束になっても敵わないだろうな・・・」
  キングの強さは俺もよく分かっている。
  しかし倒さなければ安寧は訪れない。

〇公園のベンチ
  俺は途方に暮れて町をパトロールしていた。
花子「あー、にゃんこだー!」
小太郎「かわいいー!」
花子「イワシ食べるかな?」
  そう言い少女はイワシを置く。
  俺はそれをありがたく頂こうと思ったときだった。
  ある物が目に入った。
シロ(こ、これは・・・! これさえあればキングも・・・!)
  俺はイワシを食べずに持ち帰った。

〇ビルの裏
ミケ「兄ちゃん、ご馳走じゃねえか! 俺たちにも分けてくれるのか?」
シロ「いや、こいつはある策に使う。 なあ、この辺に──ないかな」
ミケ「あぁ、それなら2丁目で見たぜ。 怖くて誰も近寄ってないが」
シロ「よし、分かった。キングをなんとかできる」
ミケ「はぁ?」

〇公園のベンチ
  キングは2丁目を悠々と歩いている。
キング「ったく、今日もろくな餌がねえ。 どうも人間どもが寄越しながらねえ。 やはりあいつらの縄張りを攻めるしかねえか」
  その時、イワシがキングの嗅覚を刺激した。
キング「変な箱に入ってやがるな・・・ だが久々のご馳走だ」
  キングは舌舐めずりをしつつ、箱に入り、イワシを食べようとする。
  その時だった。
  ガシャン、と音が響いた。
  出入り口が塞がれたのだ。
キング「なっ、なんだこれ! 出られねえ!」
シロ「捕獲器ってやつさ。 キング、あんたは飼い猫だったが脱走したらしいな」
キング「お前は負け猫! どういうことだ!」
シロ「あんたの捜索願いのポスターを見た。 それでどこかに捕獲器が設置されてると思ったらドンピシャだった」
「やめろ・・・俺はやっと自由を・・・!」
シロ「元の飼い主の元で楽しくやるんだな」
  こうして俺はキングを撃退した。

〇ビルの裏
ミケ「いやー、兄ちゃんはヒーローだ! ほれ、またたび!」
シロ「大したことはしてないさ」
ミケ「だってあのキングを知略で倒したんだ。 悪魔的・・・まるで人間みたいだ」
シロ「はは・・・」
  3丁目に平和が訪れたと言っても、キングがいないだけで餌不足は深刻だ。
  俺たちはゴミ箱で漁ったエサを頼りに生きている。
  猫の社会は厳しい。人間より遥かに楽かと思っていたが世知辛いのだ。
  人間だった頃とどっちが幸せだったか分からないくらいだ。
  ただ、一つだけ変わったことがある。
ハチ「そこの三毛猫、キングに無礼じゃ!」
ミケ「あ、あぁ。 兄ちゃんじゃ締まらないもんな、キング」
シロ「だから俺はキングじゃないって」
  俺はキングの後を継ぎ、第二のキングとなることになった。
  1丁目から3丁目を支配する猫として周囲からは畏怖されている。
タマ「キング! 4丁目のぶちネコが生意気でさぁ!」
ハチ「とっちめます?」
シロ「だからお前達はけんかっ早すぎだって!」
  我が輩は猫である。名前は・・・キング。
  不本意極まりないがそれが俺に与えられた名だ。
  人間だった頃と同様、部下に悩まされている。
  人間も猫もそう変わらないな、と思った。

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