確率投影 世界で一番幸運で不幸な男

ラム25

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〇公園のベンチ
七瀬「くそっ、また外れた!」
二宮「お前まだそのソシャゲハマってるのか」
七瀬「1%! 1%の確率でウルトラレアが出るんだよ!」
二宮「低いな・・・そもそもお前運悪いだろ」
七瀬「な、そんなことないって・・・ ってあー! カラスが俺のパン持ってった!」
二宮「ほらな」
  俺が夢中になっている馬ガールというソシャゲはなかなかウルトラレアが出ないことで有名だ。
  特に俺は子供の時から運が悪く、出かければ雨が降り、服を買っては転んで汚し、修学旅行の日には熱が出るなど枚挙に暇がない。
七瀬「はあ、超幸運の持ち主になれたらなあ・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
七瀬「さて、今日もガチャ回すか・・・どうせ当たらないけど」
  その時奇跡が起きた。
  なんとウルトラレアが出たのだ。
  それも10回分回して10枚全部。
  画面を煌びやかなカードが埋め尽くしている。
七瀬「なっ、なんだこれ! 夢、なのか・・・」
  ネットに公開するが、それはコラージュだとして見向きもされなかった。
  しかし紛れもない事実であった。

〇公園のベンチ
七瀬「そんなことがあったんだよ! ほら、スクショ!」
二宮「嘘くせえ・・・じゃあもう10回回してみろよ」
七瀬「あ、あぁ・・・」
  しかし運は使い果たしてしまっただろう。
  当たりなどもう2度と出ることは・・・
  そう思ったがまたしても10枚全てがウルトラレアだった。
二宮「な、なんだこれ!? バグってんのか?」
七瀬「俺にも分からん」
二宮「じゃんけんだ!」
  友人とジャンケンをする。言うまでもなく俺は勝ったことがない。
  しかし10回中10回が俺の勝ちだった。
二宮「マジかよ・・・」
七瀬「な、凄いだろ!」
二宮「お前の運、検証したい。 麻雀やるぞ」

〇雀荘
  早速麻雀牌をシャッフルし、並べる。
二宮「天和は流石にないか・・・」
  天和とは始めた時点で上がることが出来る役のことで、その確率は0.002%。
  役満も出ることは無かったが、それでも俺の圧勝だった。
  友人は出た役を細かにメモにしている。
二宮「お前の役で一番多いのはチャンタか。 チャンタは1%の確率と言われている」
二宮「一方次に出にくい三暗刻は0.7%だが1度も出ていない」
七瀬「つまり・・・」
二宮「あぁ、1%までなら確実に当てられるらしい」
七瀬(俺にそんな能力が・・・! これはもしかしてギャンブルには最強の能力なのでは? つまり俺は億万長者になれる・・・!)
  友人と分かれた後、俺はパチスロ店へ向かう。

〇パチンコ店
七瀬「うおお! 凄え!」
  当たりが出るわ出るわ。
客「兄ちゃん、めっちゃ当たり引いてるな・・・」
七瀬「あはは、一掴み分けますよ!」
客「悪いねえ。 俺も不慮の事故で職を失ってやることなくてね」
七瀬(不幸な人だな・・・ でも俺はこの能力があれば・・・!)
  しかし途端に当たりが出なくなってしまった。
  そう言えばパチスロ店は確率を操作できる店があると聞いたことがある。
  パチスロでは俺の能力を発揮できないかもしれない。
  それでも30万円の勝ちになった。

〇公園のベンチ
七瀬「ということがあったんだ! 次は何がいいかな?」
二宮「能力悪用してるな・・・」
七瀬「悪用じゃないって!」
二宮「まあ手っ取り早いのは競馬じゃないかな」
七瀬「競馬か・・・よし、分かった!」

〇競馬場の座席
客「いけ、トウエイ、お前に全財産賭けたんだ! 頼む!」
七瀬(俺が賭けたのは別の馬だけどな)
  そして俺が賭けた馬が一着だった。
  30万円は60万円になった。
客「くそっ、俺の全財産が・・・」
七瀬(ご愁傷様・・・)
  再度賭けると、60万円は120万円になる。
七瀬(これ以上は目をつけられそうだな、やめとこう)
  120万円もの大金を目にし、身震いがした。
  あるいは俺の能力の恐ろしさに、かもしれない。

〇公園のベンチ
七瀬「ほれ、ご祝儀」
二宮「サンキュー、実は親父が入院して大変だったんだ。 それよりその能力、ヤバくないのか?」
七瀬「今のところなんてことない」
二宮「そうか‥ならいいんだが」

〇街中の道路
七瀬(また別の競馬場で賭けるか・・・ 今度は500万円になるまで・・・!)
  そう思った時だった。
犯人「動くな! 金を持ってくるんだ!」
人質「ひっ、ひぃ・・・!」
  女性が男に拘束され、銃で脅されている様を見たのは。
犯人「動いたら撃つぞ!」
人質「たっ、助け・・・」
  女性は恐怖のあまり失禁する。
七瀬(ま、まさか俺の能力が暴走して犯罪が起きる確率を100%にしてしまったのか?)
七瀬(いや、人質を取った犯罪が起きる確率なんて1%に満たないだろう)
警察「やめなさい! 人質を放しなさい!」
犯人「俺は妻と娘が事故で一斉に亡くなり、訴えられて1000万円もの借金を負った。 お前らにその苦しみが分かるか!」
七瀬(確かに不幸だ。俺の真逆と言っていい)
七瀬(いや、真逆?)
  『俺も不慮の事故で職を失ってやることなくてねぇ』
  『サンキュー、実は親父が入院して大変だったんだ』
  『くそっ、俺の全財産が・・・』
  突如これらの言葉がフラッシュバックした。
  もしかして、この能力は・・・
  俺は犯人に向けて駆ける。
警察「あっこら、君、待ちなさい!」
犯人「よ、寄るなあああ! 撃つぞ!」
  俺は構わず犯人に近寄る。
  そして犯人は発砲する。
犯人「ぐわああああ!」
  苦痛の悲鳴をあげるのは・・・犯人。
  銃が暴発したのだ。
七瀬(やはり、この能力は周りの人の運を吸い取っているんだ! だから暴発も犯人が不幸になり、1%の確率を超えて起きた)
  女性は救助され、犯人は連行される。
犯人「畜生・・・なんて人生なんだ・・・なにもかもめちゃくちゃだ・・・」
  号泣する犯人を見て罪悪感に苛まれる。
  そんな時に友人からメッセージが届く。
  『親父が死んだ』
  それを見て俺は悟った。
七瀬「この能力は途轍もなく残酷な代物だった・・・ 俺は周りの人を不幸にする・・・ ただ生きているだけで・・・」
  ふらふらと赤信号の中歩道に向けて歩き・・・
  俺は車に跳ねられた。

〇田舎の病院の病室
七瀬「あれ、ここは・・・」
ナース「信じられない、奇跡が起きたわ! 生存する確率は1%と言われていたのに・・・」
七瀬「な、なんで俺を助けた・・・!」
ナース「そりゃ助けるに決まってるでしょ! あなたを跳ねた人は敗訴になったから多額の賠償金が貰えるわよ!」
七瀬「あ、あぁ、ああああああああ!!!」
  俺は絶望の雄叫びを上げるも、ナースは不審に思うだけであった。

コメント

  • 傑作です!! これは面白い。どこかの短編の賞に出しても良いかもですね😋
    皮肉が効いて面白いのですが、もっと彼が自分の能力を使うか否かを迷うシーンがあれば、人間を描けるんじゃないかなと思いました。創作は孤独な作業なので、励まし合えれば良いし、自分もいつか評価される物を書きたいと思いました!!

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