いわく鑑定士

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〈パパと話せる〉糸電話(脚本)

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〇時計台の中
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた呪いの品が存在します」
鑑定士「私はそんな〈いわく〉付きの品専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、一体おいくらになるのでしょうか・・・」

〇黒

〇時計台の中
ヒマリ「お顔だいじょうぶ? 痛くない?」
鑑定士「平気ですよ。ご心配ありがとうございます」
ヒマリ「良かった」
ヒマリ「あのね、これ売りにきたの」
鑑定士「保護者の方は?」
ヒマリ「一緒に来てるけど、今は外でお仕事の電話してる」
鑑定士「では、少し待ちましょう」
ヒマリ「でも、時間かかると思うし コレの事は、私の方が詳しいよ!」
鑑定士「・・・」
鑑定士「それではお聞かせください」
鑑定士「この糸電話にまつわる〈いわく〉を」

〇黒

〇明るいリビング
ヒマリ「もしもーし」
ヒマリ「きこえますかー?」
パパ「聞こえてるよ」
ヒマリ「あのねあのね」
ヒマリ「パパはヒマリの事好きですかー?」
パパ「勿論! 大好きだよ!」
ヒマリ「んふふ」
ヒマリ「じゃあね! ヒマリがお嫁さんになってあげてもいいよー!」
パパ「あはは!」
パパ「じゃあ立派なお婿さんになれるように、パパも頑張らないとね」
ヒマリ「うん! 応援してる!」
ママ「ちょっとパパ!?」
パパ「どうかした?」
ママ「どうしたもこうしたも・・・!」
ヒマリ「ママ?」
ママ「っ!」
ママ「・・・話があるの パパはこっち来て」
パパ「・・・わかった」
ヒマリ「また怖い顔してた・・・」

〇中規模マンション

〇中規模マンション

〇部屋の前
「落ち着けって」
「はあ!? 私は冷静だけど!?」
ヒマリ「?」

〇明るいリビング
ママ「なんでもかんでもそうやって・・・!!」
ヒマリ「どうしたの?」
パパ「あ、ヒマリ起きちゃったか」
パパ「なんでもないよ」
ママ「ああ、もう・・・っ」
パパ「ママは疲れてるだけだから、気にしなくていいからね」
ママ「私が悪いの!?」
パパ「ヒマリ、ちゃんと眠れそう?」
ヒマリ「・・・ん」
パパ「・・・寝れるまでパパが一緒にいてあげようか?」
ヒマリ「! うん!」
パパ「よしよし、わかった」
パパ「じゃあ、ヒマリ寝かしつけてくるから」
ママ「あ! ちょっと・・・!」

〇並木道

〇銀杏並木道

〇明るいリビング
ヒマリ「パパ今日も帰って来ないの?」
ママ「・・・パパの事はもう忘れなさい」
ヒマリ「どうして?」
ママ「忘れろっていってるの!」
ヒマリ「う、うん・・・」
ママ「もうママ寝るから、それ食べて大人しくしてなさい」
ヒマリ「・・・わかった」
ヒマリ「・・・」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
ヒマリ「もしもーし・・・」
ヒマリ「聞こえますかー・・・?」
ヒマリ「ヒマリとお話しませんかー・・・」
ヒマリ「・・・」
ヒマリ「パパ・・・」
糸電話「じゃあ、お話しようか」
ヒマリ「あえ!?」
ヒマリ「パパ?」
糸電話「そうだよ」

〇中規模マンション

〇明るいリビング
ヒマリ「ママ!」
ヒマリ「これね、パパとお話できるんだよ!」
ママ「なに言ってるの?」
ヒマリ「パパの声が聞こえるの」
ママ「・・・そんなわけないでしょ」
ヒマリ「え、でも・・・」
ママ「そんなもの捨てなさい」
ヒマリ「や、やだ・・・」
ママ「捨てなさい!!」
ヒマリ「ぁ、ぅ ・・・わかった」
ママ「しょうもない事言ってないで、幼稚園の準備してなさい」
ヒマリ「はぁい・・・」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
ヒマリ「捨てるのやだなぁ」
糸電話「ならママにバレないように、こっそり隠しておくといい」
ヒマリ「パパ」
糸電話「パパとお話できるのは、ヒマリとパパだけの内緒にしよう」
ヒマリ「・・・うん! わかった!」

〇幼稚園の教室
幼稚園の先生「ヒマリちゃん、今日もお迎えが遅くなっちゃうんだって」
ヒマリ「そっかぁ」
幼稚園の先生「一人になっちゃうけど、寂しくない?」
ヒマリ「もう大丈夫だよ」
幼稚園の先生「そう?」
幼稚園の先生「なにかあったら呼んでね?」
ヒマリ「うん!」
糸電話「最近ママは忙しそうだね」
ヒマリ「お仕事大変なんだって」
ヒマリ「・・・パパ」
ヒマリ「いつ帰ってくるの?」
糸電話「・・・まだ帰れないんだ」
糸電話「でもヒマリがいい子にしていたら、きっと会えるからね」
ヒマリ「うん!」

〇明るいリビング
ヒマリ「ママ!」
ヒマリ「ヒマリね、オムライス食べたい!」
ヒマリ「作って!」
ママ「・・・はぁ」
ママ「あのね、ママ疲れてるの」
ママ「見て分からない?」
ヒマリ「あ・・・」
ママ「ヒマリの為に毎日毎日働いて・・・!」
ママ「ご飯作ってる余裕なんか無いの!」
ママ「分かるでしょ!?」
ヒマリ「・・・ごめんなさい」
ママ「はぁ・・・」
ママ「さっさとソレ食べて寝なさい」
ヒマリ「うん・・・」
ヒマリ「いただきます・・・」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
ヒマリ「小学校でも友達できるかなぁ」
糸電話「きっと大丈夫」
糸電話「ヒマリはいい子だからね」
ヒマリ「うん! ヒマリいい子だよ!」
糸電話「なら友達も沢山できるさ」

〇桜並木

〇学校の校舎

〇教室
ユイナ「ヒマリちゃん!」
ユイナ「一緒にかえろ!」
ヒマリ「うん!」

〇学校脇の道
ヒマリ「ユイナちゃん、今日もかけっこ一番だったね」
ユイナ「ふふん!」
ユイナ「運動とくいだもん」
ヒマリ「ヒマリ足遅いからうらやましい」
ユイナ「あ! じゃあさ」
ユイナ「かけっこの練習しよ!」
ヒマリ「え゛」
ユイナ「練習したらヒマリちゃんも早くなるよ!」
ヒマリ「う、うーん・・・」
ヒマリ「でも、早く帰らなきゃ」
ユイナ「何かあるの?」
ヒマリ「パパと約束があるの」
ユイナ「・・・また?」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
ヒマリ「それでね、ユイナちゃんニンジン食べられないから、ヒマリが食べてあげたの」
糸電話「ヒマリは好き嫌いが無くて偉いね」
ヒマリ「んふふ」
糸電話「学校が楽しそうで良かった」
ヒマリ「うん! ヒマリ学校大好き!」
ヒマリ「でも、糸電話持って行けない・・・」
糸電話「こっそり持って行くかい?」
ヒマリ「学校に関係ない物持って来たらダメって先生が・・・」
糸電話「残念だね」
ヒマリ「うん、我慢する」
「ただいま」
ヒマリ「あ!」

〇明るいリビング
ヒマリ「ママ、お帰りなさい!」
ママ「・・・これ、晩御飯だから」
ヒマリ「・・・うん」
ヒマリ「あれ? ママのは?」
ママ「・・・」
ママ「ママはもう寝るから、要らない」
ヒマリ「え、でも」
ヒマリ「・・・おやすみなさい」

〇学校の校舎

〇教室
ヒマリ「ごめんね、パパと約束あるから──」
ユイナ「うそつき」
ヒマリ「え」
ユイナ「うそつき!」
ユイナ「ヒマリちゃんのとこ、お父さんいないって先生が言ってたの、聞いたもん!」
ヒマリ「い、いないけどいるもん!」
ユイナ「訳わかんない!」
ユイナ「ヒマリちゃんのバカ!」
ヒマリ「あ・・・」

〇学校の校舎

〇学校の校舎

〇学校の廊下
ヒマリ「あ、ユイナちゃん、あのね」
ユイナ「ふんっ」
ヒマリ「ユイナちゃん・・・」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
ヒマリ「はぁ・・・」
ヒマリ「学校行きたくない」
糸電話「喧嘩しちゃったんだね」
ヒマリ「うん」
糸電話「糸電話を学校に持って行ければ、ずっと一緒にいてあげられるのに」
ヒマリ「パパと一緒・・・」
糸電話「でも、学校は勉強をする場所だしね」
ヒマリ「授業はちゃんと受けるよ! だから、休憩時間はパパとお話したい!」
糸電話「見つからないようにできる?」

〇学校の校舎

〇個室のトイレ
ヒマリ「んふふ」
ヒマリ「ほら、誰にもバレなかった!」
糸電話「凄いじゃないか」
ヒマリ「もっと早く学校に持ってきたら良かったなぁ」
糸電話「これからは毎日持ってきたらいいさ」
ヒマリ「うん!」

〇教室
ユイナ「あ、ヒマリちゃん」
ヒマリ「・・・なに?」
ユイナ「あの、その」
ユイナ「ヒマリちゃんと喧嘩してから、学校つまんなくて」
ヒマリ「そ」
ユイナ「だから、えと 仲直り、したい・・・」
ヒマリ「別にいらない」
ヒマリ「パパとお話する方が楽しいもん」
ユイナ「え」
ヒマリ「ヒマリはパパがいれば他はもう要らない」
ユイナ「お、おかしいよ!」
ユイナ「だってヒマリちゃん、お父さんいないんでしょ!?」
ヒマリ「お話はできるもん!」
ユイナ「休憩時間もずっとトイレにこもってるし」
ユイナ「ヒマリちゃん変だよ!」
ヒマリ「うるさい!」
糸電話「ユイナちゃんはつまらない事ばかりいうね」
ユイナ「ほ、ほら!お外で遊ぼ!ね?」
ヒマリ「やだ! つまんない!」
ユイナ「かけっこしたり、ボール遊びしたり、楽しいから!」
糸電話「つまらない事を言う子は、叩いて黙らせなさい」
ユイナ「いたっ」
ヒマリ「つまんない」
ユイナ「いっ」
ヒマリ「つまんない! つまんない!」
ユイナ「やめっ」
先生「ちょっと! あなた達なにしてるの!?」

〇中規模マンション

〇明るいリビング
ママ「どうしてそんな事したの!?」
ヒマリ「・・・ごめんなさい」
ママ「はぁ・・・っ」
ママ「育て方間違えたかしら」
ヒマリ「・・・っ!!」
ヒマリ「うるさい」
ママ「なんですって?」
ヒマリ「うるさい! うるさい!」
ヒマリ「ずっとかまってくれなかったのに!」
ヒマリ「なんでこんな時ばっかり言ってくるの!?」
ヒマリ「ヒマリずっと寂しかったのに!」
ヒマリ「ママずっと寝てるし!」
ヒマリ「お話聞いてくれないし!」
ヒマリ「ごはん作ってくれないし・・・」
ヒマリ「ヒマリ、ヒマリもっと!」
ヒマリ「ママと・・・!」
ママ「ヒマリ・・・」
ママ「・・・っ」
ママ「あぁ・・・」
ママ「そうね、ごめんなさい、私・・・」
ヒマリ「ママ?」
ママ「もっと、ヒマリと一緒の時間を作るべきだったのに」
ママ「・・・」
ママ「ごめんなさいヒマリ」
ヒマリ「・・・」
ママ「これからは、いっぱいお話しましょう」
ヒマリ「ほんと?」
ママ「ええ、嘘じゃないわ」
ママ「ぅ・・・っ」
ヒマリ「どうしたの?」
ママ「ごめんなさい、ちょっと眩暈が」
ヒマリ「大丈夫?」
ママ「平気・・・」
ママ「そうだ、ヒマリの好物作ってあげる」
ママ「オムライスだったわよね?」
ヒマリ「やったぁ!」
ママ「ちょっと待っててね」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
ヒマリ「んふふ」
ヒマリ「これからママと沢山お話しできる!」
ヒマリ「うれしい・・・」
糸電話「信じるの?」
ヒマリ「え?」
糸電話「ママは今まで全然かまってくれなかったのに?」
ヒマリ「・・・っ」
糸電話「それに、糸電話の事がママにバレたら捨てられるかも」
ヒマリ「ママはそんな事しないもん!」
糸電話「前に糸電話の事をママに話した時、なんて言ってた?」
ヒマリ「・・・」
ヒマリ「捨てろって、言ってた」
糸電話「糸電話を捨てられて、それからまたママに飽きられたら」
ヒマリ「ぅ」
糸電話「ヒマリは独りぼっちになっちゃうね?」
ヒマリ「やだあ!」
糸電話「じゃあ糸電話を守らないと」

〇部屋の前
ママ「ヒマリ?」

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コメント

  • プロジェクトお疲れ様でした!
    善悪が入れ替わり、和解と決別が訪れるラスト…見事に計算された展開で、内容を知っているにも関わらず、ハラハラしました^^
    悪がしっかり裁かれるところもスカっとしました。このにぎやかな糸電話、その後どうなったかも気になります。笑

  • テンポの良い台詞で、最初から最後まで色々な感情を湧き起こされてしまう展開で、とても面白かったです。ラストはスカッとしますし、読後感も最高でした‼️

  • ひまりちゃんがどんどん孤立していく展開にハラハラしました。
    鑑定士の顔のキズを気にするセリフ、何度見てもやっぱりお上手ですね。
    最後はあっさり父親を売るヒマリちゃん、とても爽快でした😊

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